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第84話 地下への潜入

 奴隷保管庫の入口を警備していた男は、後方からの靴音に振り返った。

 扉の格子から確認すると、見慣れぬ男がまっすぐ歩いて近づいている。

 その服装が見た事のない変わってはいるが気品のある格好であった事から、客人の予定はあったか、組織の上層部か、あるいは王侯貴族の訪問か、などと考える。

 だが、行き止まりの保管庫の方から歩いてくるのはおかしいと、ドアの目の前まで来たところで気付いた。


「なんだ貴様は?」

「侵入者だよ」


 その手に携えた曲刀が振るわれ、警備の男はいともたやすく扉ごと真っ二つに切り裂かれた。


「力も戻ってるな。イスマからの供給量を考えるとあまり無理も出来ねえが……、ま、ちょいと暴れるには十分だろうよ」


 神秘的な波紋が浮き上がる不可思議な曲刀を片手に、シュバイニーがゆっくりと前に進む。


 るつぼ鋼、王鋼、あるいはディマシュティルと呼ばれる至高の金属。

 それを素材とし、極限まで熱したものを人の肉体に突き刺して冷やすという呪術儀式をも取り入れ作られたパルシス大陸独自の製法をもって作られた曲刀は、恐るべき切れ味をもっていた。


 斬り倒されたドアの残骸が音を鳴らしたからだろう、何事が起きたのかといくつもの足音が鳴り響く。


「さーて、手っ取り早く親玉の所へ案内してもらおうかね」


 いくつか通路がある中の1つを考えずに選び、シュバイニーはそのまま直進した。


「侵入者だ! こっちだぞ!」

「あいよ」


 遭遇後、すぐに声をあげた警備兵に近づき顔を殴りつける。

 シュバイニーの一撃によって声をあげた警備兵が吹き飛んだ。

 防御動作も満足に取れなかった警備兵はそのまま片手で持ち上げられ、恐怖で引きつった。


「お前らの親玉のとこに案内するか、前の奴みてえに死にたいか選べ。別に、答えるのはお前じゃなくたっていいんだ。どっちでも、いいんだぜ?」

「は、はいいい。ご案内致します、命ばかりはお助けを……いただけないでしょうか」

「おう。さっさと案内しろ」


 怯える警備兵を連れて先に進もうとした矢先に、声を聴きつけてやってきた他の警備兵達が押し寄せる。


「おい、お前。よーく見とけよ。俺がその気になったら、こうなるからよ」


 シュバイニーが手に力をこめると、その漏れ出た闘気によって、前後より現れた警備兵達は皆怯んだ。

 本能的な恐怖に捕らわれ、動く事すら出来ない。


「シャラ!」


 力をこめた右腕の曲刀が振るわれた。

 シミターと呼ばれる三日月状の剣がその切れ味と、その呪いの力を発揮する。

 前方からやってきた警備兵達は、ただの一振りで全てが両断された。

 そして、その肉体が齧られるように空間に消えていく。


「ひっ……!」


 後方の警備兵達が、先程脅しつけた警備兵が、悲鳴をあげた。


「素直に言う事聞いてりゃ、こうはならねえ。後はわかるな?」


 軽い口調と共に、再び曲刀の一撃が放たれる。

 後方の者達も同じように斬られ身体ごと消滅した。


「……おい、何腰抜かしてんだよ。早く案内しろって言ってんだろ」




「いたー、イスマだー! 無事でよかったです!」

「大丈夫だった? 酷い事されてない?」


 アイスが駆け寄ってイスマに抱きつく。

 クロスも頭を撫でて、心配そうに見つめている。


「……だいじょぶ。ソトししょーが助けてくれた」

「ソト師匠! ありがとうございました!」

「いやいや。本当に何もしてないぞ。そんな事より、私達を早く解放してくれ」

「あ、これはすみません」


 深々と感謝するカデュウに、珍しく謙虚な対応をするソト。

 ロープで結ばれていた箇所を斬り、2人を解放した。


「シュバイニーが召喚されてな。血に飢えた顔をして、そのままどっか行ったが」

「そういえば、シュバイニーさんがいなくなったんですよね、そういう事ですか」

「……今、暴れさせてる」

「あれ、戦えるようになったの?」

「……戦えちゃう」


「荷物持ち卒業なんです?」

「……荷物持ちは継続する、重いのやだ」


 なんとも酷い理由であった。

 馬車使えない時は、確かに荷物持ちがいないと困るのだが。


「とりあえず他の奴隷にされちゃう人達を助けようか」

「そだね。援軍が来ると厄介」

「鉄格子の鍵はどこにあるかな……」

「不要です。私が開けましょう」


 エルバスが振り下ろした斧が鉄格子の錠前を切り裂いた。


「さあ、共に脱出しますよ。ついてきなさい」

「あ、……ありがとうございます。助けて下さって、ありがとうございます!」


 牢に入っていたエルフの女性が驚きつつも中団に加わる。

 その調子で、次々に捕まっていた者達を解放していった。


「さーすが、脳筋エルフ。パワフルだねぇ」

「金食いチビックは黙っていて下さい」

「金食いチビックではない!」

「金食いロリックですよね」

「毒舌アサシンはお黙り」


 みんな心の傷を抉られただけであった。

 不毛な言い争いダメ絶対。


「僕達が守るから、一緒について来てね」

「……は、はい! わかりました、お姉様! あの、私、レティシノって言います!」


 元気良くあいさつをしてきた、そのエルフの奴隷少女はカデュウを見つめている。

 お姉様っぽいエルフは斧振り回してる人の方では……?


「ありがとう、レティシノ。僕はカデュウ。他の人も助けるから手伝ってくれる?」


「はい! ありがとうございます、お姉様。」

「さっさと壊して脱出しますよ」


 次々と牢から奴隷達を解放し、気が付けば結構な人数になっていた。

 どれぐらいの頻度でオークションが行われているのかはわからないが、人数から考えてこの地下施設での取引分だけではなさそうだ。

 この辺りの裏社会共用の奴隷保管庫となっているかもしれない。

 エルフだけではなく人間も混ざっているが、皆、高級奴隷として売れそうな容貌だ。


「こんなに沢山連れて逃げられるかな? 隠れるのも難しいよ?」


 60人以上はいる想定外の人数に、タックが不安を投げかける。


「時間をかけてもいられません。やるしかないでしょう」




「いやー、そういうわけにもいかんのよ」


 カデュウ達の入ってきた、地下への入口側。

 いつの間にか、いかつい顔の髭の男性が立っていた。

 ――危険な空気を漂わせて。


「誰です」


 ゆっくりと、エルバスがその男の方に歩き出す。


「名前かぁ? ビクトルって者じゃあ」

「何者かと聞いているのです」


「“血白者”ってわかるかぁ? 盟約の遂行人よ」

「“血白者”……! “血の盟約会”か!」


 焦るタックの声、その男の登場で、一気に緊張が高まった。

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