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第77話 ある灼熱の大陸の物語

「昔、テュルク帝国っていう巨大な国があったんだが、建国王のテムル・ラングって奴が死んだ途端にその国は分裂した。一気に戦乱の世の中になったんだ」


 シュバイニーが語る、過去の話。

 カデュウらの知らない、どこか別の国々の物語。


「そんな中で、旗揚げをした中の一人がこの俺。俺の国は一族の姓を冠してシュバイニーと名乗った」

「あら、意外にも王様だったのですか?」


 クロスが失礼にも聞こえる率直な声をぶつけた。


「はは、意外にもそうなんだ。実体はただの成り上がりの暴れ者だが」


 ガラじゃない、とシュバイニー自身も思っていたのかもしれない。

 案外、王国の初代となった人達は、そんな風に感じているのだろうか。


「そんな暴れ者の俺が率いた軍は次々に支配を拡大していった。家族や民を安泰をもたらそうと、必死だったんだわ」


「一方、俺達と離れた位置で急速に勢力を伸ばした国があった」


「それがイスマの国、アルダヴィールだ。ここはユルディム教団っていう連中が治めている国でな、その教団の教主がイスマだった。教主と言っても、その立場は組織の長というよりは不可侵の存在。崇拝される神の如き存在だ」


「ユルディム教団の教主は世襲でな、イスマの父のあたりで結構な大きさになってはいたんだが、それがイスマの代になってわずか1年あまりでテュルク帝国の広大な領土をすっかり吸収しちまった」


「何故かというと、ユルディム教団は俺達の暮らしていたパルシスの地の伝統を継承する存在だったからだ」


「パルシスの地に神をもたらした、救世王クリシュという伝説の神王の流れを汲むのがユッディーン家、イスマの家系だ。元々、この地の民から崇められる存在なんだが、イスマは特にその神王の力を発現させた。そして乱世の時代、タイミングも完璧だ」


「世が荒れると、人々は平穏と救いを求める。そういうわけで巨大宗教国家が出来ちまったんだわ」


「そうなると、俺の国シュバイニーと、アルダヴィールが戦う事になるわけだ。イスマが望もうと望むまいと、宗教キチ共があの手この手でやらかしてくれたからな」


「初戦で戦った時に、俺はイスマと会った。敵の教主とやらを倒しにいったんだから出会ったのは当たり前だがな。だがよ、こいつは人形みたいな面してて、生気がまるでなかった。いや今も人形みてえだけどよ? あの頃はもっと酷かった」


「なんでこんな子供が担がれて虚無の表情で国を治めてるんだって思ったら、無性に腹が立ってな。それからも戦うたびに、何度も何度も話しかけてやったよ」


「……超うざかった」


 被害者のイスマさんから率直な感想が伝えられた。

 イスマなりの照れ隠しなのだろう。きっと。


「ま、元々国の地力が違うのもあったし、どうあがいても勝てない戦争だった。奮戦したおかげもあり、家族や民の安全を保障して貰って、俺は死ぬ事になったんだがね。どういうわけか、俺はこいつの意思で、こうして活動するハメになった」


「なんでかって聞いたら、友達だからだとさ。他にうざくお節介焼いてくる奴なんかいなかったんだろうなぁ。以来、しょうがねえから俺はイスマの守護者として話し相手になってやってた」


「それでも、こいつの支配する国は、寂しいもんでよ。恐れ敬うばかりで、誰もこいつを人間扱いしちゃいなかった。それを見かねたのが俺と、もう一人。こいつを子供の頃から世話してたナルディールって奴だけだった」


「そいつが俺達にある事を教えてきた。遥か古の時代の遺跡、はじまりの旅路がもうすぐ開かれ、そこに行けば自由が望める、とな」


「で、俺とイスマは国の事を丸投げして見事に逃げてきたってわけだ、運良くな」


「ま、俺らがいなくなったらナルディールの奴がしっかり治めるって言ってたからな。俺の国を滅ぼした名将様で統治も担当してたからな。混乱は起きるだろうが、なんとかやるだろ」


「……あいつはいいやつ。けんとーをいのろう」


「大体こんなとこだな、後はお前らと出会ってこうして毎日楽しく人間らしい生活を堪能してるってこった」


 長い話を語り終わったシュバイニーは、一息をついてコーヒーを飲みほした。


「……ぱちぱち。ごくろーであった」


 手すら叩かず、拍手の音を口だけで表すイスマ。

 実に雑である。


「パルシス、か。全然知らん場所だな……」

「僕は聞いた事あるよ。灼熱の大陸パルシス、って言葉で叙事詩に出てくるね」


 タックが得意げな顔を出すと、ソトはご機嫌斜めの表情を見せる。

 そんな反応を見たからか、シュバイニーはフォローを入れた。


「ま、気にする事はねえさ。お前らには縁のない場所だよ」

「……うむ。いまのおうちはカデュウのとこ」

「ねえ。僕、大変な事に気付いたんだけど……」


 イスマを抱きかかえて頭を優しく撫でながら、カデュウは真顔になる。


「なんで、王様や王女様がいるのに、ただの一般人の僕が村のまとめ役なの?」


「……てきざいてきしょ」

「俺、そんなのやりたくねえし」

「私、運営に興味ないし」


 地位が高かった人々は一般人に丸投げであった。

 まぁ、イスマやシュバイニーが興味ないのはわかるけど。

 運営に興味がないというクロスは他の事なら出来そうだ。


「うーん、外交的な事ならクロスは上手くこなせそうだよ?」

「無理。だってカデュウと別行動になるじゃない。また離れ離れで暮らせというの?」


 これもある種の依存症なのだろうか。家族依存というか。

 このパーティは問題児ばかりであった。

突然片耳が聞こえなくなり、医院にいったら突発性難聴と診断されてしまいました。

明日大きな病院に行きますが、即日入院となる可能性もあります。1~2週間ぐらいなのかな?

入院となるとPCで書いている為、更新が出来ません。

少々お待ち頂ければ嬉しいです。

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