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第76話 北へ向かう野営珈琲

「とりあえずこんな所かな。不足してる物資なんかも出てきたみたいだし、交渉が終わったら、買い出しに行ってこないといけませんね」


 溜まっていた仕事を片付け、カデュウがにこりと笑顔を向ける。

 ソトもタックも楽しそうな手ぶりでそれを歓迎した。


「再び森の中の旅だな。じゃ、さっさとキルシュアート族のとこに行こうか」

「ぉぅぃぇ! 僕も一緒にいっちゃうじぇ!」

「タック先輩も、これから一緒に暮らしましょうよ」


 折角、再会したタックと別れたくなかったカデュウは、仲間へと勧誘した。

 とはいえ、どこか予感もあったのだろうか。

 明るい返事を期待してはいたが、タックの答えは薄々とわかっていたのかもしれない。


「北のエルフの集落、エルブンシュタットで情報を集めた後に、僕は行くよ。そのまま北に進んでレヒア地方に出る事になるかもしれない。ハクアのバカを探さないとね」

「……また一緒に、旅がしたかったです。でも、仕方ないですね」


 ハクアを探すと言われては、カデュウには返す言葉もなかった。

 意気消沈するカデュウの腰をタックは叩き、元気づける。


「なーに。カデュウくんの住処はわかったからね。またそのうち遊びにくるじぇぃ!」

「いつでも、お待ちしておりますよ。……出かけてたらいませんけどね!」




「キルシュアート族との交渉ならば、私は同行しない方が良いでしょう」


 またリーブルに案内と交渉の手伝いをお願いしようと思っていたカデュウだが、当人から反対が挙がった。


「やはり、フェアノールとキルシュアートは仲が悪いのですか?」

「ええ。残念ながら嫌われております。代わりにエルバスを連れて行くと良い」


 手回しの良いリーブルは、すでにエルバスに話を通していたのだろう。

 何故か横に立っていると思ってはいたが。


「話は聞いております。私が護衛を務めましょう」


 クリーチャー傭兵団のエルフ、エルバスが案内をしてくれる事になった。

 出身こそ古の大森林ではないが、エルフならば森の専門家だ。

 安心出来るというものである。


「私も一緒に行こうかな? カデュウとお出かけ、楽しそう。ふふ」

「うん、クロスと旅に出るなんて、先生の時以来だね」


 懐かしいな、と無邪気に顔をほころばせるカデュウに、微笑を見せるクロス。


「……暇だからついてく」

「となると、俺もいかにゃあならんな」


 暇なイスマとシュバイニーも手を挙げる。

 そしてユディもタイミング良く後方からやってきた。


「今回は冒険パーティフル参加、だね」

「ユディ。そうだね、みんなで行こうか。買い物が出来るエルフの街があるって聞くしね。面白いかも」


 思いがけぬ大所帯となったが、タックも含め、久々の仲間達との行動だ。

 次なる目的地は、キルシュアート族の作った、エルフの街。


「それじゃ、出発しようー!」




 今回のメンバーは全部で9名。

 カデュウ、エルバス、ソト、アイス、イスマ、シュバイニー、ユディ、クロス。

 そしてゲストであるタック。


 キルシュアート族の集落は人間達との交易も行っているらしい。

 物資も足りなくなってきたので、貨幣も持っていく。


 他のエルフ族と違ってキルシュアート族の集落の場所は森の外側だという。

 となると、ある程度の移動日数をかける事になるわけで、当然食料その他の必要な物の量も増えるというわけだ。

 馬車を使いたいところだが森の中で使うのは無理があるので、結局これまでどおり徒歩で行くしかない。


「いつもありがとうございます、シュバイニーさん。荷物一杯押し付けちゃって」

「これはこれで楽しいぞ。気にせず任せとけ」


 順調に歩き続け休憩を挟みながら進んでいく。

 そして日が暮れて、夜になった。夜の森はとても暗い。

 森の中で焚火をしたりするわけで、より細心な注意が必要になる。

 動物や魔物への警戒も怠ってはならないだろう。


「はい。これが最後のコーヒーですよ」


 日々飲んでいたので、ついにトーラの店で購入した豆の備蓄が尽きてしまった。

 どの道、美味しく飲める期間というものがあって、古いコーヒー豆ではマズいのだ。

 焙煎して挽いてから2週間以内が望ましいと言われているが、それを考えれば長く持たせてしまった方だろう。

 適度に消費して新鮮なコーヒー豆を仕入れるのが正しいのだ。

 もっとも、エルフの集落で売っているとは思えないが。


「ふむ。さすがに最初の頃と比べれば味は落ちるな。だが、十分美味い」

「鮮度が落ちた影響を減らす為に温度を下げて淹れました」


 優雅にコーヒーを飲むソトが、満足げにその味を堪能している。


「……カデュウのコーヒーはあんまりにがくないから飲める」

「イスマはお店のコーヒーは苦手だったね」

「……むかしは、こういうのをたまに飲んでた」


 ちびちびと可愛らしく飲みながらイスマがコーヒーの液体を見つめる。


「イスマのとこにもコーヒーあったんだ?」

「……わりと産地とかぴんちとかそんなやつ」


 コーヒーの産地、という事だろうか。

 コーヒーはカヌスア大陸の特産品だが、イスマもその辺りの出身なのだろうか。


「コーヒーも少しはあったけど、俺らんとこは紅茶の方が主流だったな」

「前はカデュウの過去の話だったが、イスマも謎が多いよな」

「確かにそうですね。よかったら聞かせてよ?」


 珍しくイスマが昔の事を口にしたので、ソトとカデュウは興味深々に催促した。


「……昔の話。めんどくさい、シュバイニーに任す」

「お前、口下手だしな。しゃあねえ、俺が語ってやるか」


 眼鏡をくいっと直しながら、シュバイニーは一呼吸おいて雰囲気を作り出す。


「1年前まで。俺とイスマは、和解しようもない宿敵同士だった」


 衝撃的な切り出しから、イスマとシュバイニーの過去の話がはじまった。

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