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りそまお~理想の開拓スローライフは魔王城から~  作者: 絵羽おもち
第1章 まったり冒険な開拓準備
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第7話 秘密は打ち明けるもの パスタは食べるもの

「現在位置がマーニャ地方南部ゼップガルドという国の王都ゼップガルド。南西にベルマイヤー王国、南南西にミロステルン王国があるんだけど。今回の目的地は、このミロステルンとゼップガルドの間あたりの村なんだ」

「私は説明されてないぞ」

「……ソト師匠は説明しなくても、これぐらいわかってますよね」

「つまり他の奴らは、説明されないとわからなかった、という事か。揃って常識も知らんのか?」


 カデュウは考える。この特殊なパーティの事情、そして開拓や魔王の話などもソトに話しておくべきなのだろうか、と。

 普通ならば隠しておくのが無難かもしれない。特に魔王の話は。

 ――少し悩んだが、カデュウは決断した。


「実はこの2人は、別の国から転移事故で飛んできたので、この辺りの事は知らないんですよ」

「転移事故? なるほど、変わった格好をしていると思っていたが」

「そして転移した場所が魔王城でしたので、僕らはみんなで魔王さんの為に、0から街を作ろう計画をやっているんですよ」


「まてまてまて。意味が分からん、なんだそれ」

「1000年ぐらい魔王さんが暇してたから街を作ってくれって言ってまして。あ、魔王さんは封印されているから大丈夫だと言ってましたよ」

「よし、おっけー。まともに説明する気ないな?」


 仲間として冒険者の先輩として隠し事は良くないな、とカデュウは秘密をそのままに打ち明けたのだが、ソトには信じられていなかった。

 おかしいなあ、とカデュウは首をかしげる。

 その仕草から、からかっているわけではないと判断したのだろう。

 ソトはかみ砕くように分析しだした。


「よし、少しずつ行こう。まず転移事故で、どういうわけか偶然にも魔王城に飛んだ。そこで、そいつらや魔王と出会った。ここまでは正しいか?」

「はい、その通りです」

「魔王は長い事封印されていて暇だった。で街を作ってくれと頼まれた、と」

「ええ、その通りです」

「……で、何故それを私に漏らす?」


 もっともな疑問だ。

 しかし、ずっと隠しているというのも心苦しいし、開拓の件で相談する時も仲間外れみたいになってしまう。

 別にやましい事をしているわけではないのだ。


「これから一緒に旅をしていく仲間でしょう? しかも気に入ってる間は寄生するのでしょう? それなら僕らの事情も全部話しておいた方が面倒がないかなと」

「寄生とか人聞きの悪い。天才魔術師に選ばれし光栄だか栄光だかにひれ伏し崇め金を稼いで来たまえ。それはそれとして正直なのは良い事だ。気に入った。貴様らの変な状況も気に入った。ゼロからはじめる開拓街というのも大いに気に入った。私を師匠と呼ぶ権利をくれてやろう」


 何言ってるのこの人は。

 さっきから師匠と呼んでますけど。


「魔王さんの件は気にならないんですか?」

「私の得になればそれで良い。何でも良い。996年前にくたばったはずの王なんぞ知った事か。重要なのはただ一点。利があるのか、無いのか。それだけだ」

「割り切った素敵な考えですね、気が合います」

「大体封印されていて無害なんだろう? 要するに、ただの村人1号だ」

「ええ、その通りです。僕が封印の詳しい話を把握してるわけではないですけど」


 ただあの時、魔王が嘘を言っているようにはカデュウには思えなかった。

 実際の所、その手の術の専門家でもないので知りようもない。


「僕がでたらめを言っている、とは考えないんですか?」

「これから一緒に旅していく仲間なんだろう? 信頼しないでどうするんだ、新人。パーティの基本だぞ。覚えとけよ」

「これは一本取られました、さすが先輩ですね」

「ふっはっは。褒めたまえ褒めちぎりたまえ」


 癖のある人物だが、なんだか親しみが湧いてきた。味があるというか。

 悪い人では無さそうだし、考え方も柔軟性がありそうだった。


「さて。納得したところで依頼をこなしに行こうか。食料とか必需品の準備するぞー」

「了解ですよー。参りましょう、ソト」

「荷物持ちなら任せろ。俺はそれぐらいしか出来ん」


 元々、今のメンバー自体が数日前に突然結成されたもの、という土壌もあるだろうが、ソトに対してもまた受け入れる空気になっていた。

 今の会話で仲間として信頼できると判断したのだろう。

 アイスも、シュバイニーも、無言のイスマも。


「それじゃソト師匠、良い宿教えてくださいね。食事が美味しく安い所が希望です。特にパスタ」


 少しばかり贅沢な希望を告げるカデュウだが、そこは譲れないところであった。

 豪華な部屋で安く、となると難しいが、美味しい食事が提供される安めの宿ならば、街によってはあるのだ。

 パスタは南ミルディアス地方の文化だが、近場のこの辺りならば、作っている所もあるかもしれない。


「この街にはあまり期待するな。ここの王は戦馬鹿だから内政がおろそかでな。景気は良くないし、大して文化も育っていない。飯もろくなものはないぞ」


 がっくりとうなだれるカデュウ。

 美味しい食事が基本の場所で生まれ育った影響で、舌が贅沢になっているのであった。


「だがまあ、比較的マシな安い宿なら私が知っている。そこで我慢しとけ」


 難しい表情を少しして考えたカデュウだが、無いものはどうにもならない。妥協も時には必要だ。

 ソトの案内に従って、おすすめの宿へと向かう事にした。ベルスの宿という名だ。

 問題なく空いていたので部屋を借りた後に買い物に赴く。


 必要な食糧やとても不足していた野営道具などを買い込み準備を整えた。

 本来ならゴブリン退治なので早めに向かうべきなのだが、もうじき夜になる。

 街を出てすぐ野営となるよりも、早めに宿で寝て早朝出発した方が無難であろう。

 こうしてそこそこな食事の宿で一晩を過ごし、カデュウ達は目的の村へと出発した。


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