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第74話 アルスールの長老

「詳しく説明致しますと……」


 カデュウによる一連の流れの説明を聞き終えたレム・ヴェルは、それでもやはり混乱したままであった。


「魔王がいて、暇だから街を作れと言われて、今建てられつつある、と」

「何を言ってるのかわからんじぇ」

「詳しく聞いてもまったくわからんわい」


 当然の反応であった。


「まぁそういうわけで、エルフさん達とも仲良く共存していこうと、いま各部族との交渉をしに来ているのです」

「ええよ」

「話早いなオイ」


 異様なまでに早い答えに、カデュウだけでなくソトも驚く。

 わけがわからないはずなのに即承諾とは……。


「他の部族が仲良くやれるのならば、儂らがそれに反対する理由はない。森の外の国からの交渉ならば断わるが、森の中の勢力ならば話は別」

「そうなんですか?」

「我らは中立中庸、故に森の邪魔になる事があってはならん」


 森の中の意見が一致するのなら、その意見に合わせるのだろうか。

 という事は、フェアノールとキルシュアートは対立していた?


「古の大森林、かのミルディアスの世にはラティーナの帝都森と呼ばれた時代もあるこの地には、古代帝国の時代より外界に対しての護りが存在する」


「古代から今に至るまで、人間がこの森を領土としておらんのは、何もエルフだけが理由ではない。過去に何度か人間達の侵略があった、それもエルフだけでは対処しようもない大軍。しかし。それらは全て撃退されたのじゃ。ドラゴンによっての」


 長くを生きたエルフの長老が、語りながら目を細める。


「樹葉竜リーフドラゴン。豊穣竜マウマウ。この森の守護を命じられたという、これら古代帝国の幻獣が、今もこの地を守り続けているのじゃよ」


 以前、見かけたあの竜の事であろうか。

 2つ挙げられた名のうちどちらの竜かはわからないが……。


「もしかして、ダークエルフの人達が大国を撃退出来たというのも、その竜が?」

「左様。これらの幻獣がおらねば、いくらフェアノール族といえども死傷者が大勢出ていたじゃろうな。人間達に比べ我らは数で劣るからのう」


「その竜に出会ったら、僕らは襲われちゃうんでしょうか?」

「これらの竜は森の内部の人類は同胞と見なす性質があり、儂らもお主らも襲われる事はない。よほどの悪さをしなければ、な」


 どうやって判断しているのかはわからないが、エルフの長老が断言しているのだから何かその根拠があるのだろう。

 それなりの範囲には探索に出向いて襲われていない事からも信憑性は高い。


「そういうわけで、他所と話を纏めて来い。森の内部で争うわけにはいかんのじゃよ。儂らの条件はそれだけじゃ」

「随分わかりやすいね、レム・ヴェル? それだけでいいのかい?」

「タックの後輩とならば、信じる他なかろう? 何かあっても責任はぜーんぶお前に押し付けてやるわい」

「僕の目利きを信頼してるのかと思ったら、何このジジイ!」


 なんだか微笑ましい掛け合いだ。

 信頼し合っている仲間同士の温かさを感じる。



「ほほう。これがカデュウの以前の先輩か」


 ソト師匠がタックをじろじろと見つめていた。


「むむ? このちみっ子はどちら様?」

「ちみっ子とか……、似たようなチビに言われたくないぞ」


 何やら不毛な争いに発展しそうなので、カデュウが仲間の紹介を始める。


「このロリはソトさんです、僕の師匠を名乗っています」

「またロリ扱いしよる……。名乗ってるじゃなくて師匠なの! もっと敬って!」


 ぷんすか、とソト師匠が噛みついてきた。

 そのまま、ジロリと同じホビックに向き直る。


「このチビが、カデュウの仲間だった奴か」

「チビじゃないし!? ホビック的には普通ですし! ……大体カデュウくんだって、人にしては小さい癖に何すまし顔してんだ、オラー!」

「そうだぞ! 種族平均的には小さいんだからな! 私と大差ないんだぞ!」


「何故、矛先がこっちに……。2人とも、そんな僕より小さいのに……」

「むきー!」

「あんだとー!」


 醜い争いが始まった。

 小さき者たちによる悲しい争いが。


「とってもにぎやかで仲良しさんです」

「平和ですね、良い事です」


 その様子を、アイスとリーブルがまったり眺めていた。


「用が終わったなら帰ってくれんかのう……」


 その住処の持ち主がぼやくのも、当然の事である。

 なだめられるようにして手で押され、体良く追い出されるのであった。

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