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第65話 再会の感動は生存の確保の後で

 皮をなめした経験がある人物をユディが連れてきた。

 傭兵団の参謀、ノヴァドだ。


「専門の職人みたいにはいかんが、真似事なら昔やった事があるわい」

「良かった。使えそうな皮があったらお願いします」


 すでに解体は終えていて、皮だけになっている。

 それを見てノヴァドは残念そうに呟いた。


「皮よりも魔物から取れる毒の方が気になるがの」

「あ、僕も毒欲しいです! 効率的だし、楽しいですよね」

「カデュウの嬢ちゃんはその見た目の割にえげつないのう。時間がある時にでも儂が仕込んでやろうかの」


 などと楽しく毒トークを交えながらも、皮にまだついている不要な部分を丁寧に削ぎ落していく。


「なめし方もいくつかあるんじゃが、ここでやるなら植物を使ったなめし方じゃな。なんせ植物は腐る程あるからのう」


 皮のなめしも、大体数カ月はかかるらしい。

 ひとまず、ノヴァド老になめしの事は一任して次の場所へと向かった。




「あ、クロス。狩りに行ってくれてありがとう」


 各所のチェックを終えて、魔王城の一室で休憩をしていたカデュウは、部屋にやってきたクロスに笑みを向けた。


「……ねぇ。聞きそびれちゃってたけど、なんで女装してるの?」


 女性扱いされるのも悲しいが、女装の事を言われるのも悲しいものだ。

 心に負担しかかからない。


「あー。……この服、魔王さんから貰ったんだけど呪いがかかってて、ね」

「なんだ、ついに目覚めたのかと思った」

「ついにって何!?」


 以前からその気があるかのような言い方はやめていただきたい。


「昔から女の子っぽい感じだったし、再会した時も驚いたけど違和感はなかったね」

「ええ……」

「お父様の友人だというルイおじさまに連れられたカデュウを最初に見た時、女の子だと思ったしね。懐かしい」

「初対面でいきなり部屋に連れてかれて、無理矢理脱がされたよね……」

「私の服を着せてあげようと思っただけよ。過ぎた事は言わずしまっておきましょう」


 涼しい顔をして過去の犯行を闇に葬るクロス。

 昔からいつも突然な子なのだ。


「それで、服は脱げないの? そのままだとお風呂も入れないんじゃない?」

「それがどういうわけかお風呂とか脱ぐ必要がある時は脱げるんだよね」

「……じゃあ、脱いだらもう着なければいいんじゃない?」


 理屈の上ではクロスの言う通りなのだが……。


「それが、この服、付与魔術の加護が強くて性能的には物凄いから、つい……」

「ああ、大義名分が出来たから遠慮なく女装してるわけね」

「違うから! 格好に気を使って不利になるのは先生の教えに反するからね。使えるものは何でも使えって」


「そうね。冒険者は危険と隣り合わせだから、その姿勢は正しいよ」

「うん。死んじゃったらクロスに会えないなって、思ってたしさ」


 クロスの腕がカデュウを引き寄せ、優しくも力強く抱きしめる。


「助けに来てくれて、本当にありがとう。凄く、凄く、嬉しかった」

「……うん。無事で、良かった」


 本当に、危ない所であったのだ。

 何かが違っていれば、この場にいなかったぐらいに。


「これからは、クロスと一緒に楽しく暮らせるね」

「ええ、2人で気ままに暮らしましょう。冒険でも、交易でも、自由にね」

「自由な旅、か。先生が別れ際にそう言ってくれたっけ」


 厳しい修行が終わり、別れ際に告げられた最後の教え。


 『自由に遊び、自由に楽しみ、自由に旅をしろ』

 『常識に捕らわれるな。世界とは遊び場だ、やりたい事をやれ』


 それが先生との最後の思い出だ。


「なんだかんだで、先生優しかったよね。『お前達ならばそれが出来る』なんて、私達が一緒に冒険をしたがってた事を知って、背中を押してくれたんだろうね」

「……まぁ、定住しちゃってるけどね。クロスと一緒に」

「帰る家があるのだから良い事じゃない」


「ところで、あの」

「なあに?」

「いつまで、こうしてるのかなって」


 抱きついたまま離れないクロスによって、カデュウの動きは制限されていた。


「いいじゃない、他の子とは散々くっついてきたんでしょ」

「くっつい……ええっ?」

「ようやく一緒になれた喜びもあるのだし、ね?」

「あ……うん。そう、だね。ちょっと、困るけど。クロスとやっと一緒になれたんだしね」


 ちょっと恥ずかしいけれど、クロスが喜ぶならしょうがない。

 でも散々くっついてなんて……、と思ったが。

 少し、ほんの少しだけ、心当たりはある。スキンシップのようなものだけど。


「そうそう。久々なんだからゆっくりくつろがないと」

「……んー、でもそろそろ次の仕事に取り掛からないと。まだ生活厳しいからね」

「……そうだね。もうちょっと頑張らないと、ゆっくりも出来ないか」


 名残惜しそうに、クロスはゆっくりと離れる。


「じゃ、食事の支度をしないと。クロスも手伝ってくれる?」

「切るだけならね」

「今日は何のパスタにしようかな~。肉と山菜を使ったメニューがいいよね」


 肉はたっぷりあるし、長持ちはしないので早めに使い切る必要がある。

 カデュウは様々な肉料理を作る為に、他の女性傭兵の力も借りる事にした。

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