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第63話 木材は開拓の基本です

「というわけで、この開拓村に新しい仲間が加わりました。ハッチさん、ウミルさん、マンダムさんの3名です」


 皆が帰ってきた夕食の頃に、カデュウによって海賊らしき3人が紹介された。

 暴れないか、と心配していた事は杞憂に終わった。

 食事を与えたら2つ返事で仲間になってくれたのだ。

 話が早くて助かった。


 ハッチにはあり余る力を生かし、がれき撤去などの力仕事を任せる。

 ウミルはとても器用な技巧派だったので、ターレスの下で加工作業を。

 マンダムは釣りが得意だと言うので、そちらをお願いする。


 海で行ったアイスの調査によって、食べられそうな魚が多めに生息している事がわかっていた。

 海賊だった割に、海に関係しているのはマンダム船長だけだが、今のところ船すらないので船乗りの役目は特にないのだ。


「魔村長~、て~へんだ~」

「はい。なんでしょう、ハッチさん」

「ジジイが飯をくれと……」

「魔村長さんや、飯はまだかのう……」

「ウミルさん、さっき食べたでしょ」

「メスか……。儂も欲しい……」

「マンダムさん、雌牛の肉ですか? そんな指定をされても、困ります……」


 ……わけのわからない会話がたまにあるが、しっかり働いてくれている。

 多少独特な会話のセンスをお持ちだが、コミュニケーションはとれるようだ。

 人手が足りない開拓地では貴重な人材であった。

 そのうち船を手にいれたら、経験者として乗組員になってもらってもいいだろう。




 次は伐採の指示だ。

 好き勝手に切っていては自然を破壊する事になり、景観も壊れてしまう。

 基本的にデザインを担当するターレスの指定によるが、立派な木々はなるべく残しながら、将来倒木しそうな木々を選んで伐採していく方針である。

 カデュウの仕事は現場との橋渡しと、用途に合わせて木材を用意する事だ。

 木材によって性質は異なり、奨励される用途も変わるので、商人知識を生かしてその辺りの選定を行っていく。


「エルバスさん、そこのブナをお願いします」

「これですね。……せぁ!」


 斧を得意とするエルフ、傭兵団のエルバスが伐採してくれている。

 一撃で綺麗に切り倒すのだから凄い力と技術だ。


「次はその横にある、若いサイプレスを」

「カデュウは木々にも詳しいですね。私はエルフなのにわかりません、料理も出来ません。同じ女性として恥ずかしい」

「いや女性では……」

「せぁ!」


 また一撃で切り倒す。

 男の子としてはこの威力に憧れますよ。


「あそこの木も日が当たらなくて、いずれ倒木しそうですね。やっちゃいましょう」


 こうして伐採した木は乾燥させなくてはならない。

 伐採したばかりの生材は、そのままでは水分を含み過ぎており強度も低く、水分が徐々に蒸発して変形していってしまう。

 建材として使用すると問題が生じる事が多いので、乾燥が必要となる。


「後は、持ち帰って木材に加工した後に、精霊術で乾燥をお願いします」

「変わった精霊の使い方ですね。その発想には驚きます」


 自然乾燥ならば数カ月から2年程度はかかるが、サバイバル状態なのにそんな時間はかけていられないので、そこを魔術や精霊術でなんとかする。

 木材一つとっても色々と大変なのである。






「狩りの収穫、結構あったね。少し狩りに行かせる人数減らさないと獲物が無くなっちゃうかも」


 今度はユディから、狩りと探索の報告を受ける。

 村長も結構忙しいものだ。


「これは鹿っぽい魔物、かな?」

「食べれるかどうかわからないけど、クロスと数匹狩ってきた。私が3匹、あの子が2匹。私の勝ち、いえーい」


 ユディはわずかに唇を動かして微笑み、ピースサインでご満悦だ。

 指示した通りの処理は行われている。

 手早く処理をしないと肉に臭みが残るので、そこは徹底して貰っていた。

 流石のナイフ捌きは見事なものだ。


「クロスに勝ったんだ、凄いね。……未開の地だから動物も多いのかな。魚も手に入るようになっているから、狩り過ぎても良くないね」


 あまり肉ばかりで偏っても不満が出るだろう。

 可能ならバリエーションの豊かさを求めていくべきだ。

 野菜や木の実の採集に人員を回してもいいだろう。


「食用可能かどうかは調べないといけないけど、革には良さそうだね」

「カデュウ、なめし出来るの?」

「なめしはやった事ないね、誰か出来る人いないかな」

「ふーむ、ゴブリエルは食べちゃうだろうし……」


 皮ごと食べちゃうんですか。凄いね、ゴブリン。


「もうすぐ訓練でみんな集まるから、聞いてみるよ」

「うん、お願い」


「あと、複数の人から、エルフに遭遇したって報告がある。エルフも狩る?」


 とんでもない事を言い出した。

 ユディもなかなかの危険人物だ。


「いやいやいやいや。君、何言ってんのユディ。狩っちゃだめです、ハンティングだめ。ステイ。……で、エルフからは何か言われたり攻撃されたりした?」

「ううん、離れた位置から見られていた、って程度みたい」

「突然いないはずの場所に現れたから警戒してるのかな、接触もしてこないという事は、多分報告を持ち帰って長老か何かの決定を待つ、とかかな」

「そんなとこだろね」


 すぐさま現場の判断で、相手が何者なのかもわからず接触するのは、危険を呼び込む事になるかもしれないのだ。


「遭遇した場所を聞いてまとめておこう。なるべく事を荒立てないように配慮しないと、開拓開始早々に戦争になっちゃう……」

「わかった、聞いておく。あと、リーブルがこの辺のエルフの出身らしい」


 リーブル・レーラ。クリーチャー傭兵団の部隊長の1人。

 クロスを助ける時には、驚異的な射撃能力で助けてもらったが、普段は笑顔を絶やさない優しいお兄さんだ。

 エルフと一口に言っても、出身の地は様々だ。

 各地方にエルフの暮らす森があるし、街で他種族と混ざって暮らすエルフもそこそこぐらいはいる。


「それは助かるね、リーブルさんに相談してみよう」

「了解。……みんな集まってきたみたい、訓練行こ」

「僕、かよわい子だから、ボコボコにされそう……」


 机上で考えていても話は進まない。

 この件は、リーブルが戻ってからでいいだろう。

 そろそろ訓練に参加するべく、ユディと共にボロい魔王城の外に出た。

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