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りそまお~理想の開拓スローライフは魔王城から~  作者: 絵羽おもち
第1章 まったり冒険な開拓準備
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第54話 これなるは少女を救うための物語 1

 街道を直線的に移動し、ルクセンシュタッツ方面への道を馬車で飛ばして走っている。

 ゼップガルドの街からならば徒歩で4~5日かかる距離だが、カデュウ達が居た位置から馬車を急がせれば2~3日ぐらいに短縮できる。

 


「軍が見えたら馬車は戻れ。この街道の東にある森の入り口に遺跡がある。そこで待ち合わせだ」


 隣を並走する馬車に立つゾンダから指示が飛ぶ。


「ただ、先に街で物資を買わせとけ。手配されるかどうかはわからんが、しばらくは街に戻れないと想定して動け」

「はい! 了解です、ゾンダ団長!」


 カデュウ達の中で馬車で待機するのはイスマとシュバイニーだ。


「こっちは任せとけ。イスマの奴は頼りにならんだろうが、俺がきっちり準備してやる」

「……まかせとけ。えへん」


 確かに若干不安だが、そこは仲間を信じるしかない。


「クロスなら……、多分逃げ出しているはず……。こっち側に来ていればいいけど」


 他の方向に動かれては、人手が少ないのに捜索は難しい。

 しかし、もしフェイタル帝国軍の準備が万全なら、国軍の拠点がある南側は遮断するはずだと考えていた。

 西側も南部同盟を同時陥落させたなら、距離が近いそちらの方面も埋めているだろう。

 東は山が険しく、通行が難しい。

 北か南側に出る事しか出来ない地形になっている。

 昔、修行でルクセンシュタッツの野山を駆け回ったカデュウの経験が生きていた。


「団長、軍が見えました!」


 遭遇地点だ。よく地味だと言われているフルトが、予定通り馬車を止めた。


「よし。ここからは森を走り抜けるぞ! 手筈通りの配置につけ! 行くぞ!」

「了解!」


 傭兵団の馬車から号令が響く。

 しばらくは走り続けなくてはならない。カデュウ達にとって過酷な行程であるが、予定された配置にはその辺りも考慮に含まれている。


 救出目標かどうかの判断の為にカデュウは最前線で走り続け、疲れたらゾンダが背負う事で、持久力の乏しさをカバーする。

 他のメンバーは可能な範囲で走り、適度に休む事になっていた。

 進む速度に差は出るが、こうしてまばらに配置する事により、救出成功時の援軍にもなる。

 参謀の老人、ノヴァド・ユンディンゲンの作戦であった。


「ほう、あの旗は……。この軍の指揮官はヴァレンチーノの小童か」

「あの陰険な野郎か、爺さんの同類だな」

「一緒にするな。儂よりよっぽど真っ当じゃよ、カカカ!」


 走りながらも軽快な調子で会話しているゾンダとノヴァド。

 他の団員達も軽々と同じ速度で移動しているが、カデュウがこの速度を維持して走り続ける事は難しい。

 しかし、まだまだ先は長い。このような所で根を上げられないのだ。

 薬を飲む。先生に教わった一時的な体力増強の秘薬。

 あまり飲むなと言われているが、この場合は仕方がない。




 もう、どれだけ走っただろうか。

 何度か抱えられ、進み続けていた。

 天候が悪く、時間帯がわからない。

 食事も移動しながら、軽く口に含むだけ。休憩などとっていない。

 それでも誰も脱落しないし余裕すらあるのだから、この傭兵団はさすがである。


「ん? 軍の隊列が乱れてるな。何かを追っているように逆走してやがる」


 その言葉通り、確かに、今まで整然としていた帝国軍の隊列が乱れだしていた。

 何かが起きている、と考えるべきだろう。


「となると、救出目標かの」

「どうだ? あいつでいいのか?」


 ゾンダの肩に乗ったカデュウの目に、前方の異変の中心を動くものが目に映る。

 懐かしさが込み上げてくる、遠目からでもはっきりとわかった。


「――はい。間違いなく、クロスです」


 片手でカデュウを降ろしたゾンダは、後ろに控える団員達に合図を出した。

 即座に所定の配置に移動する団員達を、一瞥もせずに前をみつめている。


「了解、それじゃ仕事を始めるかね」

「はい、お願いします!」


 強い疲労感も無視して、カデュウは走り出した。

 約束の少女を救うために。




「……はぁ、はぁ。……この包囲網、とっさの割に随分素早い対応ね」


 捕まらないように敵から逃げるクロセクリスだが、敵の動きが想定以上に厳しいものであった。

 前を塞がれても突破は可能だが、どうしても速度は落とさざるを得ない。

 その間に包囲は狭まりより厳しくなっていく。


「前方の敵がちょっと多い……、斬ってたら囲まれる。ならば、上ね」


 跳躍し、近くの木の枝を使って次々に飛び移っていく。

 正面にいた敵を越えたところで、再び地を走り出す。

 位置が上になり味方への誤射が避けられるため、矢が飛ばされるようになっていたからだ。


「あぶな。次に同じ事したら、狙いをつけて射貫かれそう……」


 再び、前方を塞ぎにかかる敵の姿がクロセクリスの目に映る。

 ならば、と加速して瞬時に2人斬り倒し、一瞬怯んだ隙をついて突破した。


 しかし、進むべき前方が燃やされている事に気付く。

 選択出来る事は敵軍の近くを横切る事のみ。

 

「――ならば、斬り進んでみせましょう」


 斜め左に斬り込んだところで、兵達とは違う気配を感じた。

 ちらり、と振り向いた先には、冷たい目をした指揮官らしき若い男が、騎乗した状態でクロセクリスをみつめていた。

 つまらなそうに、どうでもよさそうに。


 そんな事よりも、と進むべき方向を向く。

 囲まれている、敵に近づいたのだから当然だ。


 しかし。予想もしていなかった事が起きた。


 ――吹き飛ばされる。帝国軍の兵士達が。

 今まさに包囲を完成させようとしていた兵士達が吹き飛ばされ、敵の中央にいたものが背後から切り倒された。

 その場に立つのは、クロセクリスが長く再会を願っていた約束の少年。

 カデュウ。血は繋がらなくとも、唯一残った最後の家族である。

 格好こそ女性のものだが、その姿、その動き、その声を忘れるはずがない。


「クロス! 迎えに来たよ!」


 約束の少女に向けたカデュウの言葉は、美しい笑顔の涙をもって受け入れられた


明日、9月26日は物理的に不在の為、更新をお休みさせていただきます。

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