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りそまお~理想の開拓スローライフは魔王城から~  作者: 絵羽おもち
第1章 まったり冒険な開拓準備
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第50話 ゆるくなさそうなキャンプ

「おし、テメーら。今日はこの辺でキャンプだ。雇い主様が気前良く酒を下さったから、感謝しとけ。ほーら、さっさと準備しろ」


 商用とは別に仕入れておいた酒を振舞ったらとても喜ばれて、傭兵団の皆さんがキャンプの準備までしてくれた。

 ゾンダの仕切りで合同の夕食会が開かれている。

 人間以外の別種族が多い団のようだが、エルフもドワーフもゴブリンも、みんな酒は好きらしい。

 一部の飲めない人と少年少女組は、カデュウの淹れるコーヒーを飲んでいた。


「傭兵団の馬車って大型で2台あるけど、30人も乗ってると窮屈そうだね」

「うん、ぎゅうぎゅうだよ。物資も詰めなきゃだしね」


 隣り合って座るユディと、傭兵団の馬車や隣の酒盛りを眺めている。


「一杯頂戴しよう」


 先程まで酒を飲んでいたはずのゴブリンの人がカデュウに声をかけてきた。


「私はゴブリエル・ガーブンという。驚かないで欲しいが、私はゴブリンだ」


 話を聞きながらコーヒーを蒸らし、ケトルを持ってドリッパーに湯を淹れる。

 ゴブリンだとか言われても、最初からゴブリンだと思っていたので今更である。


「ご挨拶が遅れました、カデュウです。協力して下さってありがとうございます」


 もこもこと膨らんでにコーヒーがサーバーへと注がれていく。

 何度か繰り返し湯が落ちきる前にドリッパーを外し、サーバーからカップに移してゴブリエルに渡した。


「美味い……。ここまで美味いコーヒーははじめて飲むな」

「ありがとうございます。良い道具と良い豆のおかげです」


 トーラの店で買った豆がかなりの品質だったのだ。

 単一銘柄の時点で上物なのだけれど、予想を上回る良い品物であった。


「青目、という事はゴブル島の出身ですか?」

「ほう。我らが島の者をご存じか」

「はい。ディノ・ゴブという方と以前、出会いました。」

「あいつか。……ディノの奴は元気にしてたか?」

「ええ。元気良く野良ゴブリンを蹴散らしていました」


 同じ島出身のゴブリンだからやはり知り合いだったらしい。


「美味かった。ではな」


 小さく微笑みを浮かべ、ゴブリエルは再び酒盛りの場へと戻っていった。

 それと入れ替わりでソトに地味とからかわれていたフルトが近づいてくる。


「よ、カデュウちゃん。すっごい美少女だね」


 開口一番でそれは、本物の美少女だったとしても好感度は下がると思う。


「酔っぱらっているんですか? 僕が美少女なんて、他の人に悪いですよ」

「いやいや、何言ってんの。他にいないでしょ。口の悪い金髪ロリとか、褐色の戦闘狂とか、ゴリラみたいなエルフは論外でしょ。アイスちゃんはキープで」


 あ、アイスもまともな部類の美少女判定なんだ。あの子も相当アレだけど。


「あの……すぐ隣にその褐色の方がいらっしゃるんです……が」

「フルトは何? 自殺志願者なの? すぐ後ろにエルバスがいるけど」


 フルトの後ろに立っていたエルバスと呼ばれたエルフが指を鳴らす。

 ゴリラみたいなエルフとは、この至って美人さんな人の事だろうか。

 汗をだらだらかきながら、逃げようとするフルトを捕まえて引きずっていった。


「酔ってしまいましたね。酔い覚ましに来なさい、地味フルト」

「お前酒飲んでねーじゃん! やめて殺さないで! 助けてぇ!」


 ……なんとも、賑やかで面白い傭兵団だ。




 後ろに気配がしたと思うと、するすると首に柔らかい腕が巻き付いた。

 金髪ロリの酔っ払いが絡んできたのだ。


「こーらー。私を置いていくなー。師匠だぞー」

「ちょっと、凄く邪魔だから離れて下さい……」

「やーだー。捨てていく気らろー。捨てちゃやらー……」


 どんだけ飲んだのよこの人。

 ソト師匠はすでにろれつが回っていなかった。


「……とーう」


 腰のあたりにイスマも巻き付いてきた。何なの君達。


「もー、コーヒー淹れてるのに危ないでしょ。」

「……ねむい」

「眠いなら巻き付かないで寝なさい」

「……Zzz」


 もう寝やがったよ、この子。


「ふふ。ちびっ子達に気に入られてるね」

「重い……。ユディ、引きはがして……」

「コーヒーなら代わりに淹れといてあげるよ。あとは注ぐだけだし」


 面白がって見捨てる気である。おのれユディめ。

 ならばせめて片方の子の保護者を……!


「シュバイニー、シュバイニー!」

「あっちで父さん達と酒飲むのに夢中だね」


 なんという事でしょう。

 ならば通りがかったそこの黒髪の子だ。


「アイス、助けてー、この子達を……」

「面白そうですね? カデュウにぶら下がればいいんです?」


 やめて、そろそろ潰れるから。……あっ。

 どーん、という声と共に、タックルのような衝撃がして、カデュウの身体が地面に叩きつけられ、そのまま意識は途絶えてしまった……。




 朝になりカデュウが気が付いた時には馬車に乗っていた。

 そして首と腰に腕が巻き付いている。

 どうやらこのちびっ子達が起きるまでは立ち上がれない状況らしい。

 馬車に運ぶなら引きはがしておいて欲しかった……。


「まあ、いいか」


 呪いのちびっ子達がはがれるまで、ゆっくり待つ方針に切り替えたカデュウは、そのまま横になる事にした。

 首を左右に回してみれば、ユディとアイスもその隣で寝ている。

 馬車の中で寝るのだからスペース上、当然といえば当然だが。


「昔もこうして、クロスと一緒に寝てたっけ……」


 何故だろう。

 妙に昔の事を思い出す。

 妙に胸騒ぎがしている。

 その日の夜は、静けさの割に中々寝付けなかった。

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