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りそまお~理想の開拓スローライフは魔王城から~  作者: 絵羽おもち
第1章 まったり冒険な開拓準備
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第47話 馬も人も毛色が大事

「気持ちよく買ってくれて嬉しいねえ。職人はそういう交渉事が苦手だからよ、助かるぜ。それじゃ馬商人も紹介しようか」

「よろしくお願いします」


 馬車を購入した後、ルドルフに連れられて近くの厩舎へと入った。


「おい、客を連れてきたぞ」

「ルドルフじゃないか。お前のとこの馬車が売れたとは珍しいな」


 中にいたのはルドルフと同じぐらいに若い男性だ。


「珍しいだろう、それも俺の新型を買ってくれたぞ。相応しい馬を用意してやってくれ」

「嘘だろ? あんなもん買う奴がいたのか? ……それじゃうちの選りすぐりのおすすめホースを紹介しよう」


 ついてこい、と手招きで合図する馬商人は厩舎の奥へと入っていった。

 その中には4頭の馬が入る、広めの馬房が用意されていた。


「価値がわからん馬鹿にやるにはもったいないうちの牧場自慢の愛馬達だ。あの奇特な馬車を買った価値が分かる奴ならばここの馬から選んでいいぞ」


 馬の事はシュバイニーとイスマに委ねよう。

 言葉にするまでもなくすでに馬のチェックに行っていた。


「馬車用ならパワーがあるこっちの2頭が良い、サイズも丁度良い」

「……健康に問題なし、馬齢も同じ。どっちを買っても文句はなし」


 馬齢まで見てわかるのか。カデュウでは毛色の違いしかわからなかった。


「後は色の好みだが、やっぱり格好いい黒毛だよな?」

「……黒とかないわー。らぶりーな栗毛一択」

「栗とかお前の髪の色じゃねえんだから、男なら黒に決まってんだろ?」

「……ないわー。センス悪いわー、大体男はシュバイニーだけだわー」


 ……色の好みで口喧嘩が始まっていた。

 物凄くどうでもいい点で争っている。

 あと、カデュウっていう男の子の事も思い出してあげて下さい。ぐすん。


「ところでお値段はいくらでしょう」

「栗毛が金貨80枚、黒毛は金貨124枚」

「栗毛の方でお願いします」


 色以外の違いがないのなら、安い方で良いのだ。

 争っている仲間を無視して即決した。


「なんだとぉ!?」

「……ふ、勝った。カデュウは理解者」


 無駄な争いを早期に止めるという意味もあるのだ、多分。

 値段しか気にしてなかった等という事はないのだ、決して。


「まいどあり! 出発は明日だろ? 今日のところはうちで世話しとくよ」

「はい、よろしくお願いします」


 金貨を渡し、合流場所のカフェへと向かう。


「少し、うちの団に似てる」


 カデュウと並んで歩いていたユディが少しだけ笑っているような表情をみせた。


「そうなの?」

「そだよ。ソトが気に入ってるのも、そんな気楽さなのかもね」


 確かに気が合う人ではあるが、それ以前の問題として、ソト師匠は他所のパーティの方からお断りされてるだけではなかろうか……。


「うちの団もみんな自由だね。戦闘参加すら自由な、何の縛りもない傭兵団だよ」

「それは変わってるね。でも自由なのは良い事かな。楽しいのが一番だよね」


「そ。だから私がこうしてカデュウ達といるのも、私が好きだからやってる事」

「あれ、そうなの? てっきり、ゾンダ団長に言われたからだと」


 ユディの顔が、すっとカデュウの顔のすぐ正面に入り込む。

 目の前には美しいユディの褐色の顔。

 カデュウは思わず、ドキッっとして、硬直してしまった。


「はじめてキスしちゃった、女の子みたいな男の子だからね。楽しそうだなって?」

「あれは、その……。ごめん。あと、女の子みたいではないからね、男の子だからね」


 思わず顔を引くカデュウを追うように、ユディの顔も同じだけ追尾する。


「カデュウの動き、私は好きだよ。私と相性が良さそう」

「う、うん。ユディの動きは僕も意表を突かれたよ。連携が取りやすそうだね」


 そして今も意表を突かれています。

 意図が読めず、カデュウは戸惑ってしまった。


「ずっと傭兵してたから、違う事するのはじめて。うまく楽しませてね」

「――うん、みんなで楽しめるように頑張るよ」


 結構無口だけど、喋る時は喋る。ユディもまた個性的な子であった。

 後ろではまだ黒だとか栗だとか言い争っている。

 イスマがあんなに喋ってるのも珍しい。


 元々さほど離れていなかった待ち合わせ場所、ワードカフェにはすぐに到着した。


「あちこちにあるのかなー、この店」


 以前、自由都市ファナキアでも見かけた店なのだが、こんな所にも出店していたとは。

 中に入って宿確保組を探すつもりだったカデュウだが、その必要はなかった。

 丁度同じタイミングで逆方向からやってきたからだ。

 合流を果たしたので、カフェには寄らず、冒険者ギルドへと向かう。


「配達のお仕事を終わらせて、宿でのんびりしましょう」


 前の冒険者ギルドのように、無駄に騒がれる事はないはずだ、と信じながら。

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