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りそまお~理想の開拓スローライフは魔王城から~  作者: 絵羽おもち
第1章 まったり冒険な開拓準備
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第46話 馬車いろいろ、パスタもいろいろ

 ルクセンシュタッツへの道を進んで2日目の昼過ぎに地形の変化があった。

 ここから向かう先は山だらけ。

 目的地であるルクセンシュタッツは山の上の高地にある国なのだ。

 街道なのでそれなりに整えられてはいるが、それでも山道では歩みも遅くなり負担もかかる。


「ん? バッグからなんかはみ出てるぞ」


 登り道を先頭で歩いていたカデュウは、背後からソトの声によって足が止まった。

 バッグからはみ出た何かをソトが掴む。


「……これは」


 紋章を描いた布の切れ端。

 転移陣のあるアインガング村で最初に戦った襲撃者がつけてきたものだ。


「ああ、そのうち聞こうと思って忘れていました。それアインガング村を襲った連中の紋章なんですけど、ソト師匠何か知ってますか?」

「……クースピークスだな」

「うん、間違いないね」


 そのボロ布の紋章を見て、ソトとユディが頷き合った。


「クースピークスっていう傭兵団だ。といっても傭兵とは名ばかりの盗賊団みたいなものだが」


「強さは大したことないけど、とにかく数が多くて、略奪でも何でもやりたい放題って傭兵団。大陸最多の、最弱で最悪な傭兵団」


「総数は私らも知らんけど1万ぐらいいるかもな。大陸各地に散らばって活動して、暇だと村を襲ったりする連中だ」


 つまり元々盗賊みたいな連中、とソトとユディが説明してくれた。


「気にしても仕方ないって事だね、ユディ」

「そう。付近で仕事があったのかもしれないしたまたま通りがかったのかもしれないけど、どちらにしろ襲えそうな村があったら襲うんじゃないかな、あいつらは」


 報酬が貰えず暴れたり、食う為に略奪する、という傭兵団の話は聞くが、話を聞く限りでは、略奪が主軸で副業として傭兵をやっているような団体らしい。


「ソト師匠、そんな盗賊団みたいな人達、雇う領主がいるんですか?」

「評判最悪だが、それでも雇う奴はいるのさ。安く数が揃えられるというのもあるが、雇ってる間は契約者の領地には手を出さない上に、敵の領地は荒らせるからな」


 革袋の水筒をくわえてソトは、ごくごくと喉を鳴らした。

 綺麗なプラチナブロンドの髪が輝いている、曇りのない良い日差しだ。




 2日目の夕方頃、なんとか夜になる前に街の中に入る事が出来た。

 ルクセンシュタッツの王都、ルクセンシュタッツの西区だ。

 この街は範囲が広く、西区と東区、そして政府施設や公共機関が集中する中央区と分かれており、それぞれの地区は城壁によって区切られている。


「目的の車大工の職人も西区に住んでいるらしい。僕はそっちに行ってくるから、誰か宿の確保をお願い」

「となると私が行くしかないな。では、あそこのカフェで待ち合わせとしよう」

「わかりました、ソト師匠なら安心です。食事的に」


 やたら食にこだわるカデュウと同じく、ソトもまた味にうるさい人であった。


「じゃ、私は念の為にソトについていきますねー」

「……馬車見る」

「俺達は一緒に行こうかね。馬のプロとしてアドバイスをな」


 アイスがソトと共に行き、イスマとシュバイニーが馬車組だ。

 馬の知識があると言っていたので適材適所だろう。


「私は、貴方の護衛」


 特に他の用事もないユディも馬車組になった。




 目的の車大工の工房はすぐに見つかった。丁度カデュウ達が入ってきた西区城門近くの場所だったからだ。

 バーリ工房と書かれた看板を含め、建物自体がかなり新しいものだ。

 ノックをして、工房の入り口を開く。


「こんにちはー、ルドルフ・バーリさんはいらっしゃいますか」


 交易ギルドで聞いていた名前を告げるカデュウに、背を向けて作業をしていた若い職人が反応を示した。


「あん? どうしたガキんちょ共」

「ゼップガルド交易ギルドで紹介されて参りました、カデュウと申します。こちらで面白い馬車を作っているとすすめられまして、こうしてやってきました」


 その礼儀正しいカデュウの言葉に含まれたものに、若い職人は反応する。


「ああ、あの馬車マニアに聞いてきたのか。お前も中々変わり者だな。普通は安心と安全の鉄板ブランドを選ぶものだが」

「格式よりも機能性、実用性を最重視しております。しがない冒険者ですから」


「ふーん、わかってるじゃねえか。うちの馬車の特徴がまさに、それだ。馬車の欠点ってのはいくつかあるんだが、まず俺の作る馬車は快適性が段違いだ」


 まともに相手をする価値のある客、と判断したのだろう。

 職人はカデュウ達に細かく説明を始めた。


「他所の物と違って、独自のサスペンションを用いて衝撃を大幅にやわらげている。車輪にも魔物の皮を使いクッションをつけ、各部分の耐久性も俺が見出した黄金比で重量と衝撃の分散を行っているわけだ」

「天幕があるものが良いんですよね」


「一番お安いのは2輪のカートで、こいつを愛用する交易商人も多い。だが、お前らの人数を考えても2輪じゃ厳しいな。4輪以上をすすめるぜ」

「これはカールヴァーンか、俺らの国の商人も使ってたぜ」


 幌のついた大型馬車を見てシュバイニーが驚いた表情を見せた。


「この辺じゃキャラバンって名だ。積載量が豊富で天幕もついていて交易商人にはもってこいってタイプだ。こいつは2頭立てのサイズだから大型キャラバンと言える」


「完全に貨物用なのがワゴン、2頭立てが必須で快適性が犠牲にされている分安いが、積載量が多いっていう交易用だな」


「王侯貴族さんはこんな店じゃ注文しねえから、高級志向のコーチやキャリッジは置いてないぜ」


「貨物も大量に運べ、人も快適に乗れるのが、俺が開発した新型、キャラバン・アドベンチャー。交易にも旅にも冒険にも、様々な用途に対応している万能型だ。1頭立てサイズで座席もついているからキャラバンよりは積載量は落ちるが、冒険者ならこいつをすすめるぜ」


「まあ……俺が開発した機能がフル搭載してる高性能タイプだから、ちっと値段は張るがな……」



「いかほどのお値段なんでしょう」

「うちの相場じゃ、キャラバンが金貨1000枚。ワゴンが金貨600枚、アドベンチャーは金貨1800枚だ」

「ううむ……、悩ましい」

「……この馬車が凄く良い素材を使ってる、これがおすすめ」


 そういうイスマが指したのはキャラバン・アドベンチャー。……高いんですけど。

 しかし確かに、カデュウ達が求める性能が詰め込まれていた。


「俺もこいつが良いと思う、機能もそうだが耐久性が他のと段違いだ」

「ほう、よくわかったな。冒険者用に作った特別製だから頑丈さは保証するぜ」


 同じものをすすめるシュバイニーは耐久性の高さも推していた。

 何度も買う予算の余裕はないし、冒険者なのでどうしても運用は荒くなる。


「そいつを買ってくれると助かるぜ。作ったは良いが、冒険者はそんな金持ってねえっていう重大な問題があってな……」


 そこまでの馬車を求める冒険者はそうそういないだろう。

 冒険者はまず交易しないだろうし。


「よし、それじゃあこのキャラバン・アドベンチャーを買いましょう!」


 持ってきた金貨を、シュバイニーの荷物から取り出して支払う。

 カデュウとしても金貨1800枚ならば払う価値があると判断したのだ、ならば値引き交渉などはすべきではない。

 吹っ掛けてきているならばともかく、これは純粋に質を追求したが故の高価格だ。

 きちんと支払うのが敬意というものである。


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