第44話 パスタに寄りそう乙女の作法
ユディを冒険者登録の手続きに出して、待つ間が難関だ。
「カデュウちゃ~ん!」
「はい、どうも。……みなさん、応援ありがとうございます」
困りながらも笑顔を見せて手を振るカデュウ。
どうしようか悩みながらそんな事をしていると、今度は別種の困り事がやってきた。
怒りの表情の女性冒険者達がカデュウを睨みつけている。
「あんた、ちょっとチヤホヤされてるからって調子に乗ってんじゃないよ」
なんで女性的ないざこざに巻き込まれてるんですかね……。
その手の対立は望んでいないので、誠心誠意、心を込めて対話を試みる。
「あの、ごめんなさい。僕達も目立ちたくは無かったんです……ぐす」
涙目で相手を見つめ、カデュウは訴えた。
相手女性の方が背が高かったのでやや上目遣いの形となっている。
「ただの旅の冒険者なので……、そっとしておいて貰えると……」
女性冒険者は面食らったような表情で、カデュウの手を握った。
「あ、ああ。それは悪かったね……。うん、あたしも言いすぎたよ、ごめんね?」
先程とは態度を豹変させ、微笑みかけてくる。
カデュウも返礼のように笑みを返すと、女性は頬を染めて周囲に注意を促した。
「ほら、男共、この子が困ってるじゃないか!」
よかった話せばわかってくれる人だ。嬉しいなぁ。
「もっと迷惑にならないように応援するよ! 私達もファンになったしね!」
……何か、思っていた方向性とは別の形に、運んでいる。
「あの、私達、ただの新人冒険者なので……そんなありがたいものでは……」
「何!? 指導者はいないのか! じゃ、じゃあ俺達が一緒に……」
「おいまて、何抜け駆けしようとしてんだよ。カデュウちゃんは俺達が」
「男共が一緒じゃ危ないだろ! あたし達が女性として組んで……」
なにやらパーティ合併みたいな話の流れになっていた。
突然そんな事になっても困るので、まずは誤解を解いておくべきだろう。
「いや、あの。すでに指導者はいるので、大丈夫です。……ごめんなさい」
「うむ。良く言ったぞカデュウ。この天才魔術師ソト・エルケノがいるのだ」
ご機嫌な表情で、ソトが席から立ちあがる。
先程まで誰にも相手にされず不機嫌そうだったが。
「え? あの金髪の幼女が指導者……?」
「おい、ソトってあの……」
「ほう、私の名を知っているとは感心感心」
ソトはとてもご満悦に、ドヤ顔で頷いている。
「あの噂の“欠陥魔術師”だ!」
「ん!?」
ソトの表情が一変する。
「前にどこかの冒険者ギルドを半壊させたっていう、あの……!」
「初心者パーティ狙いで寄生して何もしないのに金を奪っていくらしいぜ」
「中級冒険者で指導者の癖に全部新人冒険者に丸投げするって聞いたわ」
「まじかよ、ド外道じゃねえか……」
割とかなり事実ばかりであった。
……過去に冒険者ギルドで暴れたんですか、師匠。
「まさかカデュウちゃん達のパーティに寄生して……」
「なんだと、そいつは許せねえ!」
ソトが震えながら魔霊石を持ち出した。
……やめて、それ高かったんです。
「師匠、落ち着いて下さい。お願いだから」
「だって、だって、あいつらが……!」
「カデュウもさっき困ってたし、ソトが泣きそうですよ。敵ですね、斬っていいです?」
「斬っちゃダメです。敵じゃないです」
「……へい、おっちゃん。ブドウジュース1杯」
狂犬みたいな子とか、マイペースにジュース飲んでる子とか、カオスな空間だ。
「あの、ソト師匠はとても良い人で頼りに……はならないけど、楽しい人ですから」
「カ、カデュウ……。途中の部分が凄く気になるけど、嬉しいぞ!」
「ああ、なるほど……。カデュウちゃん優しいから、面倒見てやってるんだな」
「そっか、さすがカデュウちゃんだぜ。新人なのにベテランを養ってるとか」
「てか、あっちの黒髪の子、怖くね? 笑顔で斬るとか言ってたぞ」
「だがそれが良い」
変なファン層が出来上がりつつある。
みんな怪しい薬とか魔術とかで狂ったのかとすら疑いたくなる程だ。
「戻ったよー、……うわ」
冒険者登録の適性試験から戻ったユディが軽く引いていた。
……気持ちはとてもわかる。
少し周囲も落ち着いたので依頼も探してみたところ、目的地ルクセンシュタッツ行きの配達依頼があった。
「では、この配達依頼を引き受けますね」
「よろしくお願いします」
とても精神的に疲れたが、これで出発準備が整った。




