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りそまお~理想の開拓スローライフは魔王城から~  作者: 絵羽おもち
第1章 まったり冒険な開拓準備
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第28話 白き水棚

「美しい……」

「……白い」

「綺麗ですね……」

「言葉すら……蛇足に思えるな……」


 皆一様に、感動していた。

 カデュウは言葉にする事すら出来なかった。

 廃墟と化した城の後ろ側にあった光景。

 水が流れる幾重にも連なる白き棚の姿。

 清らかであり。芸術的でもあり。――何よりも幻想的でもあった。

 まるで、天上の楽園のような――。


「こんなものは……生まれてはじめてだ。おお、湧き上がる。創造者がこれを見て感動に打ち震えないわけがない! あそこに連れて行ってくれ! 今すぐだ!」


 涙を垂れ流しながら、ターレスは首が折れそうな勢いでカデュウの方を向き、その肩を掴んで揺さぶりだす。


「わ、わ、わかりました。から。やめてくだ。さい。連れて行きますから」


 水の流れる白き棚の方角、そちらには大きな木々がいくつも立ち並んでいる。

 しかし、この濃密な原生林と比べれば行きやすい部類に見える。

 魔王城の周囲は、おとぎ話のような原生林に覆われていた。

 巨大な木々がウロをつくり複雑に折り重なる姿は、とても幻想的で神秘的な光景と言えよう。


「これが伝説の魔王城と、その周辺か。名に反して、まるで聖地のようだな」

「この森も、なんだか神秘的っていうか、綺麗ですよね。ソト師匠」

「――何? ここは、かの魔王城跡だというのかね?」


 ソトと会話していたカデュウに、ターレスが割り込んでくる。

 そういえばどこに行くだとかは伝えていなかった。

 行く前からネタばらしするのもなんだし。


「はい、そうですけど」

「――素晴らしい! という事はこの森はエルフの森の裏側か。凄いじゃないか、創作意欲が湧いてくるぞ。エルフはいるか、エルフは!」


 聞きようによっては物凄く俗物みたいな発言だが、芸術家としての純粋な言葉だと思いたい。


「ハーフエルフで良ければここにいるな」


 生贄を差し出すように、ソトがカデュウを指さして紹介する。

 そして残念ながら、ターレスはそれで妥協した。


「この際それで良い! 君、後で森の前に立ってくれたまえ!」

「この際って。ええ……」


 色んな意味で純粋な言葉だと思いたい。


 森の中でも不審な気配はなく、落ち着いたものであった。

 息を荒げて落ち着いていない芸術家ならいたが。

 何事も起きず、無事に白い水棚の付近まで来ることが出来た。


「……清らか。この水、神秘を感じる」

「美味しそうな水、だね。飲めるかな……」


 目でチェックしてから試しに一口飲んだカデュウは、その水を口に入れ身体に入るまでの間、感じていた。

 今まで飲んできた水で一番美味しいと思える、清らかで柔らかいその味わい。


「美味しい……。身体に染みわたっていく……」

「……とても美味しい」


 無表情ながらイスマも喜んでいた。

 飲料水としてまったく問題なく使えるようである。

 この白い水棚は何で出来ているのだろうか、人工物ではなく自然に生まれたものに見える。

 少なくとも塩ではないようだが。


「見たことない材質だな。石灰ではないし……」


 ターレスにも何だかわからないらしい。

 だが仮に貴重な物質でも破壊して取り出すなどありえないので、今すぐわかる必要はないのだ。


「階段状になっているから上にも登っていけそうではあるが……、せっかくの水が汚れるしな、やめておこう」


 そういうとターレスも水を飲んで、辺りをきょろきょろと探索しだした。

 護衛としてカデュウ達もそれについていく。


「他に変わった所は……。あれは洞窟かな? 白くない所に横穴があるね」

「ちょこちょこと、昔あった建築物が崩れて埋まってるとこもありますねー」


 カデュウとアイスがめぼしいものを発見するが、基本的には周囲は木々に埋もれている。

 この周囲の地形自体も山や崖になっているので、時間をかけて調査しないとはっきりとはわからなそうだ。

 あちこちに貴重な素材もありそうだ。

 冒険者としても開拓者としても商人としても調査意欲が湧いてくる。


「こんなところですかね。城の方に戻りましょう。ターレスさん」

「ああ、そうだな。いや、素晴らしいものだった。自然と芸術の神ガウディよ、感謝致します」


 確かにこれは、神が作った自然の芸術と言える光景であろう。

 神に祈るポーズで白い水棚を拝んでから、ターレスを連れて魔王城の前まで戻ってきた。



「先程は白い水棚に目を奪われてしまったが、ここも凄い。これがかの伝説の魔王城か! これを目にした者は今この世にどれだけいるか……、私の他おらんのかもしれんな……」


 感動している所申し訳ないのだが、どう考えてもここに案内したカデュウらは見ているのである。


「私らも目にしてるんだが……」


 ソトのつっこみも無視してターレスは感慨に耽っていた。

 そこに魔王城の中から、人がこちらに近づいてくる。


「まったく。戻ってきているなら顔ぐらい見せに来んか」


 この城に住む唯一の存在、――魔王であった。

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