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りそまお~理想の開拓スローライフは魔王城から~  作者: 絵羽おもち
第1章 まったり冒険な開拓準備
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第26話 伝説の英雄の伝説

「今から約1000年程前、かつて魔王によって人類が追い詰められていた時代」


「大陸全土を支配していた古代ミルディアス帝国最後の皇帝、ア・ゲイン・エル・ユーザは、ある日魔王へと変わりました」


「その原因は様々な憶測こそありますが、はっきりとした事はわかっておりません」


「肝心なのは、その日を境にして大陸全土は魔王軍との戦いに突入し危機に瀕することになった、という事でしょう」


「どこに潜んでいたのか、大陸各地から魔王軍の最高幹部“魔元帥”や“魔将”、それらに率いられた魔族や魔物達が出現し猛威を振るいました」


「本来こういう事態に対処すべきであった帝国の軍隊は、突如として大陸各地より出現した魔王軍相手に混乱したまま最前線で戦わざるを得ず、実質的に機能不全に陥っていました」


「このままでは人類は敗北する、という状況に追い込まれた結果、民が自ら立ち上がり、当時もっとも魔王軍から遠く、地図の上でも中心部であったファナキアの地に冒険者ギルドが組織され、冒険者達が、混乱する各地の救助に赴いたのです」


「組織的に冒険者たちが動くようになると、徐々に事態は改善されていきました。人間に限らずエルフやドワーフなどという人類全体が一丸となって対処した事で、ようやく反撃の態勢が整いました」


「この時期に数々の英雄達が生まれ、そして消えていきました」


「それでも拮抗状態であった戦局を覆すべく、魔王を倒す為の決死部隊が編制され、かつての王都である魔王城へと向かったのです」


「決死部隊は周囲で魔物達の相手をする者達と、魔王討伐に赴く最精鋭部隊に分かれ、魔王城へと侵入した当時最も優れていた面々を集めた最精鋭の冒険者集団は、そのほとんどが死亡しました」


「歴史上に残る生存者は4名。それが魔王を倒した伝説に名高き英雄達です」


「――極技の魔剣士、“無刃”のランチノイド」

「――ドワーフの狂戦士、“戦槌”のガバチョ」

「――三術の槍使い、“天槍”のスロート」

「――至高の魔術師、“不在”のレイナード」


「とてつもない激戦だったと伝えられています。彼ら伝説の英雄の仲間であった異国の剣士、“人徳”のヤマトゥーをはじめとして時代を彩った偉大なる冒険者達は皆、帰らぬ人になりました」


「彼らの決死の戦いによって、魔王は打ち倒され、各地の魔王軍も統制を失い、撃退する事が出来ました。人類の勝利ですね、めでたしめでたし!」



「――と、なるはずでした」



「でも、おかしいですよね? 平和を取り戻したのに、どうしてミルディアス帝国は滅び去ってしまったのでしょうか?」


「先程までは皆が知っているような伝説の英雄譚。ここからお話するのは、その後の顛末となります。人気が無く語られない、真実の歴史です」


「魔王を倒した後、ミルディアス帝国は魔王との戦いにおいて象徴の役割を果たしていた皇族、リルガディム・ディ・ミルディアスが皇帝となりました」


「復興帝リルガディムと呼ばれ、各所の混乱を立て直し、民の為に尽くす名君だったと言われております。後期ミルディアス帝国と呼ばれる時代はここからですね」


「しかし、即位後1年程度、リルガディムは謎の失踪を遂げました」

「暗殺説が主流ですが、いまだ詳細は不明です」


「そして次の皇帝ウストランドが即位し、ミルディアス帝国は悪政をはじめました」


「その結果、各所で反乱が発生しました。やがて領主達の間でも争いが起き、帝国は次々に分裂していったのです」


「この一連の騒動を魔王の名にちなんで『ア・ゲインの置き土産』と称するそうですが、これにはさすがの魔王も風評被害だと言いたくなるかもしれませんね?」


「人は魔王に勝てども、人の悪意には勝てず、というわけです。こうして今も、戦乱の世が続いているんですね。めでたしめでたし!」



「あまりめでたくはないですね。でも、後半の部分は確かにはじめて聞きましたよ」


 物語を聞き終えたカデュウは、楽しそうに笑いかけた。

 再び、トーラの表情もまた少女らしいものに戻る。


「魔王と英雄達の伝説は子供も教わるぐらいに有名なんですけどね、子供向けじゃない部分はカットしちゃったんでしょうか。……頑張ったのにどうして報われないの? なんて言われて教育によろしくないのでしょうか?」


 トーラの言葉を聞き、カデュウは少し考え、やがて頷いた。


「なるほど……。僕らの常識は、誰かにとって都合の良い部分を切り取ったもの、という可能性もあるわけですか。深いですね」

「え、そうなんですか? 考えてみればそうですね! 賢いですねカデュウさん!」

「あれ、そういう教訓のお話ではなかったんですか……?」

「……はっ! いえいえ、もちろんその通りですとも、全てわかっていましたよ!」


 不自然な笑みを浮かべうろたえるトーラ。


「では、今日はこの辺りで。良い品物とお話に感謝です。後日支払いに参ります」

「はい、お待ちしております。お買い上げありがとうございました」




 意外な所で目的の買い物も終了したので、カデュウ達は宿へと帰るのであった。


「お菓子を買いましょうよ、お菓子」

「……おやつー」

「私が美味しい店紹介してやるぞ! こんな事もあろうかとチェック済みだ!」


 ……お菓子を買ってからになりそうだけど。

 ……さっき食べたのに。

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