第23話 吟遊聖騎士との再会
お菓子を買い、ひとまず宿に戻りくつろいでいたところ、ふと気づくことがあった。
アイスの奇妙な服が大分傷んできている。ゴブリンと前線で戦ったからだろう。
怪我はないはずだが、何度か服にかすったのだと思われた。
「アイスの傷んできてるね。新しいの見に行く?」
カデュウの指摘に、きょろきょろと自分の服の綻びを確認したアイスは、にこやかに答えた。
「そういえばそうですね。私も女の子ですから、新しい服を買うのもいいかもです」
「イスマの服はまだ大丈夫だけど、ついでだから買いに行く?」
「……ごろごろしたい」
「こいつの服も変えがないからな。連れていってくれや」
「……ごろごろ」
乗り気ではないようだが、シュバイニーの頼みでイスマも連行する。
「ソト師匠も行きます?」
「私の服も買ってくれのか? 魔霊石でもいいぞ?」
「ええ、もちろん良いですよ、仲間外れは良くないです。魔霊石も見ますか?」
5000枚の金貨が入る予定なのだ。
スムーズに街を作る為にも多少は必要経費というものだろう。
活動するの為の費用は認めない、とか言い出すような金にうるさい魔王ではないはずだ。あんなとこで金の必要性ないし。
「マジで!? 君は出来る子だと思っていたよ、カデュウ! この私が愛してやってもいいぞ!」
「その愛、明らかに金の方に向いてますよね? 冗談言ってないで行きましょうか」
「おう、行ってこい。留守番は任せろ」
ひらひらとシュバイニーが寝ながら手を振っている。
カデュウ達は再び街中に繰り出した。
「魔霊石を扱っている店ならチェック済みだぞ。先にそっち行こうか?」
「そうですね、仕立て屋さんも探しながら行きましょう」
「……ごろごろの為に早く行こ」
ソトの案内の下、歩き出し、大通りの中央の交差点に差し掛かる。
その交差点の大きな中央部分にその露店はあった。
露店というには規模の大きいもので、広く作られている中央交差点の全域に広がっている。
それも木製の商品台が組み上げられ立体的な店舗だ。
はじめて見る形式の露店にカデュウの興味が引かれた。
袋や水筒など旅に必要なものから、武器防具の類、書籍や楽器類など多岐に渡る品揃えである
さすがに専門店と比べると種類や数は少ないが、商品自体の範囲はかなり広い。
その露店の中に入ったカデュウは、意外な人物と遭遇した。
「貴方はもしかして、ヌルディさん、ですよね?」
特徴的な銀の鎧の冒険者、ヌルディはカデュウ達の方に視線を動かす。
「……あの、先程は仲裁して頂きありがとうございました」
ヌルディはカデュウ達の方を向き、その謝罪に対し優し気な表情を浮かべた。
「おお、先程の。私は気にしておりません。美しいお嬢さん方、そう畏まらずに」
「私はカデュウです。こちらが……」
「ソトと申します。かの名高き“吟遊聖騎士”ヌルディ殿」
珍しくソト丁寧な挨拶をする。
「私はアイスですー」
「……ごろごろ」
約1名、おかしいのもいるが、面倒なのでスルーしておく。
「はは、ご丁寧にどうも。どなたも良き目をなさっている。貴方達に会えて嬉しいですな。いずれ、良き物語を期待しております。この若人達に神のご加護あれ」
ヌルディは両手を握り合わせ、少しうつむき目を瞑る。
すると心なしか身体が軽くなったようにカデュウは思った。
さすが聖騎士と言われるだけあって、導聖術も使いこなすようだ。
何の術かまではわからないが、疲労の回復を行ってくれたのだろう。
聖騎士とは、聖職者の術である導聖術を用い、戦士としての戦いの技量をも兼ね備えた者達だ。
本来はジオール教に所属する神の騎士なのだが、人々の為、神の為、自らの修行の為、などの理由で冒険者になる者もいる。
ヌルディもそのうちの1人なのだろう。
そこに小さな女の子が、とことことやってきた。
カデュウより小さい背丈のとても整った顔立ちの少女だ。
「おやおや? お客さんですか?」
「そのようですよ、トーラ殿。では商売の邪魔してもいけません。私はこれで」
店長の女の子にも祈るようなポーズで挨拶をし、そのままヌルディは去っていった。
「私はトーラ。この店、イストリア吟遊店の店長さんなのです」




