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第209話 これなるは、守るがための物語 9

「おい、どういうことだ! なんだあの植物の竜みたいなやつは! あんなものが出るなんて聞いてないぞ!?」


 古の大森林の谷間出口のあたりで指揮をしていたヴァレンチーノが考えもしなかった異常な事態に憤りをあげていた。

 ヴァレンチーノと共に陣地で待機していたソトが驚きを隠せない表情でそれに答える。


「私もあんなもんはじめてみたぞ。知らないんだから教えようがないだろ」


「……予想外の事態だ。敵が散り散りになってしまい、どこへ行ったかわからない」


 ヴァレンチーノの本来の作戦では、ここで漏れ出た敵にクリーチャー傭兵団をぶつけ殲滅する予定であった。

 念の為に魔王城にも防衛力を残してあるが、敵もかなりの手練れであり魔術師の集団だ。

 予期せぬ事態となれば、思わぬ被害が出るかもしれない。


「敵が向かうとしたら魔王城か、その目の前の開拓村、あるいは後方の軍と合流といったところか。合流をはかるならそれでもいい、問題は……」


「……魔王城の警備は万全なんだろうな? カデュウは遠聴の間にいるんだぞ」


 不安そうにソトがヴァレンチーノにそう言った。

 カデュウは遠聴の間にいてレティシノと連絡を取り合っている。

 ヴァレンチーノの作戦をカデュウがレティシノに都度伝えて、エルフやダークエルフの各部隊に指示を出しているのであった。

 レティシノがいるのは前線である谷の上。谷を抜けたあとの状況はカデュウにも伝わらないのだ。


「万全に出来るほどの戦力などこの村にないだろ……。あの毒竜の姿をみれば撤退を考えるかもしれないが、そうでないのならば別の侵入口を探すだろう。要所には配置させてあるからどこかで発見できるはずなのだが……」


 どこか煮え切らない様子で、ヴァレンチーノが言葉尻を濁す。


「くそ。魔術師ってのは厄介だな。戦場の常識が通じないから根底がくつがえされる。空を飛ぶというのも想定外だった。ひとりならともかく20人近くだからな…・…。リーブルの奴がいたから対処出来たものの……」


 ヴァレンチーノの知っている戦場では空を飛ぶ敵などいなかったし、魔術師の部隊と出会うこともなかった。

 魔術師が多い冒険者であっても飛行魔術を扱える魔術師などほとんどいないのだから、戦場に生きた軍略家であれば無理もない話だ。


 魔術を扱う指揮官や、ソトのような例外的な存在もまれにはいるが、それはあくまで個人の異能である。

 しいていうのならばフド傭兵団がそれに近いが、さすがに空を飛ぶことはない。


「うーぬ。私も城の守りに――」

「それはダメだ。お前には敵本軍への切り札になってもらわなければならない」


「でも、カデュウが危ないじゃないか!」

「落ち着け、この位置からでは間に合わん。僕がアレをもってきていれば万全だったが……、まてよ?」


「――ソト。速度特化のゴーレムならば出せるか?」

「ああ、出来るぞ。何をすればいい」


「あのイスマとかいう竜の主がいただろう。あいつにゴーレムを飛ばして、あの竜から眼鏡の奴に力を切り替えるように伝えればいい」

「それだ! イスマなら生命の力で敵も探知できるはず。――よし、すぐに連絡するぞ!」




 遠聴の間でレティシノにヴァレンチーノの指示が書かれた内容を伝えていたカデュウだが、近づく足音を耳にしてその会話を中断する。


「(レティシノちゃん気を付けてね。……ん、それじゃ)」


「カデュウ、様子が変ですよ。ルゼがちっちゃくなってるし、……なんかこう、変です!」


 扉の前でカデュウの警護をしていたアイスが中に入って、違和感を伝えてきた。

 抽象的ではあったが、アイスの言いたいことはカデュウにも理解できる。

 何かがおきた、ということだ。少なくとも敵避けに姿を見せていたルゼが、その役目を放棄しなくてはならない事態が。


「よし、ここを出て安全な場所に移動しよう」

「ええ。それが良さそうね」


 同じくカデュウの警護をしていたクロスが短く言う。


 手早く遠聴の間を出て、より安全な場所へと移動をはじめたカデュウらであったが、それが難しい問題であることはすぐに理解できた。


「情報取得対象のひとりだ。殺さず捕らえろ」


 危険はすぐそばまで駆け寄っていたのだから。

 魔術文様が光る鎧を着こんだ騎士のような者達がカデュウ達の前に立ち塞がった。

 ただならぬ風貌と雰囲気の御仁なのだが、話に聞く魔道将軍アダルテなのだろうか。

 何故ここに? という疑問も浮かぶが、考えている余裕はない。


「7人……。ちょっと多すぎる」

「これは、……何も聞かずに斬っていいですよね。私でもわかるです」

「アイス。後退しながらよ」


 ひとりひとりが並の相手でないというのは、アイスやクロスも感じていた。

 冷や汗が頬を伝う。


「――【氷柱の雨インベル・スティーリア】!」


 魔道騎士マギア・クリバノフォロスのひとりが氷の矢を浴びせかける。

 アイスとクロスがそれを剣で斬り落とし、カデュウと共に後退をはじめた。

 しかし――。


「――【長き大盾(スクトゥム)】!」


 アダルテの魔術が発動し、カデュウの移動を邪魔するように背後に現れた魔力の盾が進路を塞ぐ。

 驚きで一瞬動きが止まったカデュウであったが――。


「こんなもの、マルコギツネなら!」


 アイスの放った名刀がその魔力の盾をいともたやすく切り裂いた。

 それに合わせるように、カデュウはすぐに障害のなくなった通路の奥へと走り出す。


「ちっ、逃がさん!」


 一気に間合いを詰めたアダルテが魔力光を放つ剣を振りかぶり――。

 クロスの剣がそれを受けきった。


 そこにアイスが中段から上段へと斬りつける、がそれは魔道騎士マギア・クリバノフォロスの剣によって防がれる。


 それらの攻防のすぐあとに、クロスとアイスは即座にカデュウのあとを追う。


「他の敵も来ているかもしれないし……。ぐずぐずしないのは良い所だけど。こういうとき、一緒に行かないと心配して戻ってきちゃうのよね、あの子」

「それはとてもカデュウらしいです」

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