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第146話 トーラのパスタ釣り

 授業も終わり仲間たちと合流して、カデュウとイスマはハーブティーカフェの手伝いを始めた。

 さっそくクロスと情報を共有し、皇子の件について相談する。


「普通に客が密談してて笑うんだけど。野外のテーブル席で堂々としたものね」

「さっき説明したように皇子から依頼を受けて情報提供する事になったから、丁度良いのかもね。そんな生々しい用途で店をはじめたわけじゃないけれど……」


「ええ、了解よ。その手の情報は重点的に集めておきましょう。私が動ける日には前回と同じくお父様のツテの有力者達から聞き込みね」


 上流階級からの情報を自発的に集められるのは元王女のクロスしかいない。

 代わりにソト師匠には店番をして貰って、ここで情報を仕入れてもらうのが上策だろう。

 今日はユディと共に職人探しにプトコス地区へと出向いていて不在だが。


 珍しくシュバイニーが店員をしているのは、アイスが頭に水の入ったコップを載せて落とさず動く芸を披露しているからだろう。

 接客が切客になりかねないアイスに任せられないのである意味、適材適所なのだ。

 シュバイニーが入る事によって、眼鏡をかけた美青年がいると女性客を引き寄せているようだ。

 おかげで満席が続き女性客だらけだが、それだけに一部の男性客が密談しているのが目立っている。

 お一人様でハーブティーを優雅に口にしている凄い悪人面のおじさんもいるけど。


「ん? ……あの子、どこかで見かけたような」


 見覚えのあるホビックの少女が、エルフの雫と名付けたハーブティーを飲んでいる。

 付近の客に注文の品を届け、カデュウはそちらへと歩み寄った。


「もしかして、トーラさん?」

「おや、カデュウさんじゃないですか。お久しぶりです!」


 以前、ゼップガルドの街で出会ったホビックの少女、大規模露店の経営者トーラ。

 あちこちの街に移動し、食材から楽器や武器の類まで幅広く取り扱う、旅の冒険者や吟遊詩人向けの店だ。

 各地を旅するだけあって扱う品物が珍しい物揃い、マジックアイテムの類も普通に並べているので、掘り出し物を探すには最適な店ではなかろうか。


「ハーブティー美味しいですよ、ところで紅茶やコーヒーを仕入れませんか?」

「ところで、って。……強引過ぎです、繋がってないですよ!」

「あははー。やっぱりですか! それはそうと仕入れときましょうよ、売れますよ!」

「凄く押してきますね! まぁ、僕達が個人的に飲むぐらいの量なら……」


 そういえばコーヒーも紅茶も切れていたな、と思い考える姿勢を見せる。


「お買い上げありがとうございます。ツゼルグ、後で届けてあげてください」

「かしこまりました、トーラお嬢様」


 まったく気付かなかったが、近くに執事服のツゼルグが座っていた。

 そしてもう購入したことになっていた。

 買うのはいいとして、せめて銘柄を選ばせてほしい。

 どれを買おうかな~と悩むのは楽しい時間だと思うのだ。


「カデュウ様、ご安心下さい。試飲の茶葉や豆をお持ちしますので、お好みのものをお選び頂けます」


 ……心を読んでいたように、ツゼルグがに小さく笑みを見せる。

 かゆいところに手の届く出来る執事さんだ。


「ここで休んでいるという事は、イストリア吟遊店はまだ開いていないんですか?」

「今日到着したばかりで場所を探しているところですね、こんな一等地に置けたら嬉しいのですが! ……嬉しいのですが!」


 物凄く露骨に主張してきた。


「僕が場所を決められる立場ではないですよ」

「おお、それではこうしましょう。お店を合体するのです! カフェのお手伝いをしますから、場所を使わせて下さい!」

「……アリなのかもしれませんが、許可を出してくれてる人に聞かないとわからないです」


 特に反対する理由もないのだが、カデュウ達も借りている身分なので、軽々しく承諾は出来ない。

 ポエナに相談してみなければわからない事だ。


「さすが常連のカデュウさんですね! 契約成立です!」

「ちょっと、まだ良いとは言ってませんよ!?」

「渋チンさんですねー、仕方ないです。カフェのお手伝いに加えて、卸売り価格での食材や飲料品の提供、そして求めている情報があれば無償でお伝えしましょう」

「渋いとかそういう問題では……。しかし、なるほど……。それは確かに欲しいです」


 ユルギヌスの依頼によって各種情報の需要が高まっている、多ければ多いほどその精度は増すというもの。

 それに数日後には多数の職人を連れて村まで案内しなければならないのだ。

 格安の食料が手に入るのは嬉しい。


「今ならさらに、パスタの乾麺もつけますよ!」

「ぜひ一緒にやりましょう! 協力してくれて嬉しいです!」


 勢いよく返事をしたカデュウに、クロスが呆れ顔で口を挟んできた。


「パスタに釣られちゃって……。で、こちらの子は知り合いなのね?」

「ああ、クロスは会ったことなかったっけ。イストリア吟遊店っていう凄く色々な品物を扱っている露店の店主、トーラさんだよ。あとパスタに釣られたわけじゃなくて、情報の方がメインだから!」


 だって久々のパスタだよ。ここしばらくパスタを食べていなかったから仕方がない。

 こんな良い条件受けないわけにはいかないのだ。

 いや、情報や食料が大切だからですよ?


「どうもはじめまして、トーラと申しますよ。吟遊詩人さんからご愛顧いただいている店でして、様々な情報も商材として扱っております。お役に立てると思いますよ!」


「私はクロス、よろしくね。それはそうと、場所については国の管轄だから相談はするけど保証は出来ないと思って下さいね」

「ええ、それで構いませんよー」


「明日ポエナ先生に聞いてみます。多分大丈夫ですよ!」


 一切無根拠だが、なんとなくそんなイメージがある。


「ではサービスで、吟遊詩人さんが教えてくれた大陸の情勢をお話ししましょう。タイムラグがあるので少し前の情報ですけどね」


明日1月1日は家にいないので投稿できません。

次回は2日から投稿する予定です。たぶん。


それでは皆様、良いお年を。

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