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第141話 意外と人気なハーブティーカフェ

 収穫を得てハーブティーカフェに戻ったカデュウは、そのまま店員の仕事に入る。 

 昼を過ぎて少し休憩に来る人が多いのか、なかなかに盛況だ。


「秘蔵のハーブをブレンドしたエルフの雫は独特の癖になる味わい、美味しくて健康的、この店でしか飲めない特別な品をあなたに!」


 怪しい売り文句みたいな感じになってしまったが、エルフの森の奥地でしか取れないらしき魔術的作用もある特殊なハーブを少量ブレンドしているので特に嘘は言っていない。

 オリジナルブレンドの名称は勝手につけたものだが、詳しくない人にハーブの名称を複数並べても混乱するだけで購買意欲には結びつかないのだ。

 そもそも正式な名前が不明なハーブも少なくない、何しろ未開の森の奥地の代物だし。

 適当にエウロ婆さんが名前つけてたけど、そんなものは外の人にはわからない。

 鮮血花とか、エボニーフルーツとか、フェアノールフラワーとか、その時の気分でつけるので法則性もないのだ。


 これらの上物は魔導学院に売ったのだが、基準に満たないものは残ったのでブレンドティーにしてみた。

 効果の強い薬草なので少量だけブレンドして、健康的な効果を生み出している。


「奇跡の甘味、黄金樹の樹液で飲みやすく味付けをしたブレンドも絶賛販売中です!」


 エウロ婆さんの見つけたエルフの森の黄金樹はとても上品な甘みのある樹液を出すので開拓村では砂糖代わりに使っている。

 南ミルディアス南部やロメディア半島南部で作られている砂糖と比べて、甘味がまろやかな他に薬材としても有用なのでハーブティーにはピッタリだ。

 他にも自前で作ったポーション類をおいしくする役に立っている。


「しかし……。女性に受けそうかなって思ったけど、意外とおじさん達も飲みに来てるね」

「疲れた体の癒しなのかね? あのおっさんなんかすごい悪人面してて、まったく似合ってないな。なんかこっち睨んでるように見えるぞ」


 ソト師匠の言う方向を見ると、確かに物凄く悪人面の人が不気味な笑みを浮かべてこちらを凝視していた。

 ハーブティーがテーブルに置かれたら見なくなったので、待っていただけなのだろうけど。


「ああ、そっか。ハーブティーって魔術的な薬草も使ってるから、魔術の国だとありがたみが増すのかもしれませんね」

「あー。そういう事もあるかもなー。……意外な需要だな」


「はいはーい、喋ってないで次淹れてー。あとユディちゃんにお菓子をあげるといいかも」

「お土産買ってきてあるから、お仕事終わったらみんなで食べようね」

「やったー、がんばるよー。ささ、エルフの雫3セットよろ!」



 今日の営業を終えて、店仕舞いを終えた頃にクロスが帰ってきたのでそのまま一緒に宿に戻る。

 シュバイニーは愛馬ソエカスタナの面倒を見る為に預けている厩舎へと向かったので今は不在だ。


「今日、アイスと2人で歩いてた時、ガリーズ・ゴートっていう強烈なお婆さんが暴れてるのを見かけたんですが、ソト師匠知ってます?」

「んー聞いた事あるな。あちこちに現れては謎の理由で暴れまわるやべー婆さん、だったか。確か吟遊詩人のネタ話でそんなのがあった気がするな。まさか実在したのか」


 実在すら疑うレベルのトンデモ話を聞いていたらしい。

 確かにこの目で見ない限りとても信じられないような出来事だったけども。


「教会を周囲の建物ごと破壊してましたよ、あまりにも強烈な印象でした」

「ド派手だね。父さんみたいだからうちの団向きかも」


 お土産の小さいケーキを頬張り至福の顔をするユディ。


「うまし! 人間の癖にやるではないか! まぁ、美味い物を作る魔族なんか知らんがな! そう考えれば当然なのかも? まー、なんでもよかろうなのだ!」

「……うまけりゃおっけーなのだ」


 美少女の姿のルゼもイスマと並んで座っている。

 どっちも小さいのでとても微笑ましい。仲良さそうで何よりである。

 毒漏らさないか少々不安でちょくちょく見てしまうが、今のところ大丈夫なようだ。

 イスマの近くなら問題ないとは言われていたけども、不安になるのは仕方がない。


「私の方は情報ぐらいね。建築家への紹介状も書いてもらえたけど、会いに行くのはカデュウが動けるときにしましょ」

「うん、わかった。情報ってどんなの?」


「地方全体の国家情勢。まずは対外的な話として、イルミディム地方西部では新興勢力の台頭が目立ってきたらしくて、マズルっていう国が勢いよく伸びているらしいの」

「ルクマールと並んでクレメンス連合の隣の国だな」


 南ミルディアス地方クレメンス連合の北東側に位置するのがマズル王国。

 マズル王国の東側カスタール王国があり、南にはルクマール王国と、そのさらに南にザンツ王国、離れた南東にはグローディア王国。

 それらイルミディム地方の国々全てと隣接する東側にゴール・ドーンの大きな領土が広がっている。


「ええ。背後ではクレメンス連合の支援があるのではと勘繰っているようだったけど、肝心なのはイルミディムの情勢が動きそうって事ね。宗主国ゴール・ドーンは海の向こうのマルク帝国と睨み合っていて動けない、そして事もあろうにゴール・ドーンに従属する立場の2国グローディアとザンツは昔から仲が悪くてちょくちょく戦争してるみたい」


「イルミディム地方も複雑なんだね……、やっぱり早めにグローディアまで向かった方がいいか。イオニアスさんの情報もあるし」

「あの仮面の変態ね。やけに具体的な時期を指定していたけど……」

「他のあてもないし、言われる通りにやってみるのも一興だよね」


 伝えられている事はラケティの街へ行くこと。

 ヴァルバリアで10日ぐらいゆっくりしてから行けばいい、などと語っていた。

 職人探しに情報収集、学院の事などもあるので、確かにそれぐらいの期間は滞在してもいいだろう。


「遊び心は大切です! お爺ちゃんも斬っていい相手に出会ったとき、どこを斬るか誰を斬るかサイコロとかで決めてました!」


 唐突に口を挟んだアイスの、唐突なドン引きエピソードである。

 そんな遊び心は嫌です……。


「命をもてあそんでいる系の遊び……。アイスのお爺さんって絶対先生みたいなやばい人だよね……」

「間違いないわね……。少し方向性が違うけど、やばいのは確実よ」

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