第14話 背教者め出ていけ!とか言われそう
修道院の方へと戻ろうと木々を抜けると、そこには1人の助祭服の男が待っており、カデュウ達の姿をみるやお辞儀をする。
「お待ちしておりました。枢機卿猊下より宿泊するお部屋にご案内するように仰せつかっております。わたくし、アルマンドと申します」
導聖術で連絡でもしたのであろうか、異様に手回しが早い。手間が省けて助かるので構わないが。
「よろしくお願いします、一晩ほどお世話になります」
案内に従って先程の入り口付近にあった修道院の中へと入っていく。
通された部屋はシンプルにベッドと聖書が置かれてる部屋だった。
ベッドの数は2つ。
「こちらは男性の方がお使いください。女性の方は隣にお部屋を2つ用意してあります、ご使用ください」
なるほど、さすがは宗教施設。予算の都合で1部屋だったり、そもそも野外だったりで男女ごった煮で寝ている貧乏冒険者スタイルとは違い、しっかりしている。
「何か御用があれば、わたくしアルマンドをお呼びください。それではごゆっくりと」
そんな事を言われていたが、そのまま寝るだけなのでカデュウ達が呼び出す事はなかった。
「さて、女性の方はこちらですよ。カデュウ」
「……男性なんですけど」
「その見た目で男性の方は無理でしょ」
アイスからの精神攻撃でカデュウの心に傷がついた。
おのれ、呪いの服め……。
「ま、後々問題になるのも面倒だし、男部屋は俺だけの方がいいだろう」
確かに、好意で泊めて貰っているのに、施設の宗教的な掟を破るのも良くない。
……本当の性別的には男部屋で寝るのが正しいんだけども。
「……じゃ、いっしょにねよ」
無表情に見上げながら、イスマがカデュウの手をとった。
「……ソトししょーはうるさそう。アイスはつんつんするからやだ」
「ええー、つんつんそんなにしてないですよ?」
「うるさそうなの私!?」
「まぁ……イスマがそういうなら。うん、一緒に寝よう」
ん、とイスマが手を引かれ、そのまま部屋に入った。
しばらくの間、無言の時間が続く。
無表情で無口な子だから、2人きりになると余計に静かなのだ。
無言のまま、頭を撫でると、気持ちよさそうなとろんとした表情を見せる。
とても和む。イスマは可愛いなあ。
「……もふぅ」
ベッドに座るイスマの背後にいるカデュウを、そのままに首を傾け見つめる。
「……なぜ、カデュウ達は撫でる?」
「それは、イスマが可愛いからだよ」
「……かわいいと言われたのははじめて」
「そうなんだ。以前は、どうだったの?」
「……崇められていた。人として接したのは、2人だけ」
イスマの目、深く深く吸い込むような昏い眼。
人ではない何か、それを思わせる虚ろな瞳。
それを見ても、カデュウは優しく微笑んで頭を撫でる。
「そっか。……僕は可愛い子として接するよ」
「……くどかれた」
「そういうんじゃないから」
そこで話は途切れ、少しの静寂が訪れる。
心地の良い静けさだ。
「……ねむねむ」
「そろそろ寝ようか」
明かりを消し、カデュウは隣のベッドに入る。
すると、カデュウと同じベッドにイスマもやってきた。
「……ぬくい」
「ちょっとちょっと、イスマのベッドはあっちだよ」
「……だいじょーぶ、カデュウはおんなのこ」
「意味が分からないよ、あと男の子だから」
「……ベッドでおとこのこになっちゃう?」
「なりません。……あれ?」
「……信頼と実績のおんなのこ、ぬくい」
「え、ええ……?」
そのまま、イスマは眠りについた。
「まぁ、いいか」
カデュウもまた、目を閉じる。
翌朝、イスマが抱きついて寝ていた光景で驚き、一気に目覚めた。
いつの間にこんな事に……。
起こすのも悪いので、身動きが取れない。
「さあ、起きろー! 食事の時間だぞー!」
「ソト師匠!?」
扉を蹴り開け、元気にソトがやってきた。
「なんかくっついていちゃいちゃしてる!」
「違いますから! 起きたらこうなってただけですから!」
「ずるいぞー。私も可愛がれよー、師匠だぞー」
「師匠ってそういうものでしたっけ……?」
師匠とは一体。
「とにかく、イスマを起こして食事に行きましょう」
「かわいい寝顔だなー。ほらー、おきろー食事だぞー」
ソト師匠がイスマを起こし、ようやくカデュウも解放された。
そして食堂へと向かい朝食を頂く。
無償の食事の提供とはありがたい。
さすが宗教施設、業が深い。いや、徳が高い。
味の方は期待していなかったのだが、カデュウの想像以上に美味しいものであった。
内容自体はパンとサラダとシチューとチーズという、メニュー自体は特筆するほどでもなかったが、修道院は自前で作っているので新鮮なのだろう。
そういえば宗教上で使う為にワイン醸造の文化もあると聞く。
最後に朝食の感謝をしてから、聖堂へと向かった。




