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第111話 仮面はロマン

 こうして、イルミディム地方へと転移したカデュウ達は、仕事を探しに別の街へと向かうクリーチャー傭兵団と別れ、馬車ですぐの距離だった、ニキの街へとやってきたのであった。


「やあ、ありがとう。おかげで私達も繁盛したよ」


 テーブルや椅子を貸してくれた店主が、店じまいをするカデュウ達の下に挨拶に来た。

 見た目が物凄く怪しい木の仮面を被っていて、初見では関わってはいけない人にしか見えなかったが、協力を申し出てくれたのだ。


「こちらこそありがとうございます。テーブルや椅子を貸していただけて助かりました。積荷が無ければ馬車にも載せられたのですが」

「この程度で良ければいくらでも協力するよ、君が望むなら何でもね」


「何日かはこの街に滞在すると思いますので、また使わせて頂いても宜しいでしょうか?」

「好きなだけ使うと良いよ。私の店も大助かり、持ちつ持たれつもっちもちだ」

「ところで、あの。……質問してもいいでしょうか?」

「何でも聞いてくれ」

「何故、そんな仮面を……?」


 ずっと気になっていた事をカデュウは問い質した。

 明らかにおかしい人みたいな不気味な仮面を被っている。

 夜中に子供が見たら泣き叫んでトラウマになるようなステキさだ。


「これはカヌスア大陸の儀式か何かの仮面だね。何故被るか、良い質問だ。何故なのか……。動機の言語化がどうたらというヤツか」

「はあ」

「格好いいからだ! 明らかにタダモノではない感じがするだろう?」


 頭のおかしい人らしい言い分が返ってきた。


「それはもう、ぷんぷんと。触れてはいけない人のオーラが全開ですが」

「外見で判断するなど愚かな奴のする事さ、そして外見で判断しないのはもっと愚かな奴の愚行だね。何事も一面だけで判断は出来ないが、その一面も判断材料としなくては。いやあるいは判断しなくてもいいのかもしれない」

「何を言ってるんですか?」


 まともな事を言い出したかと思ったら、やっぱりわけのわからない話である。


「つまり、この仮面を被る事で、逆に私が他者を見極めているわけさ。どういう反応をしてくれるか、それが楽しみでね。変わった反応が返ってくると嬉しくなっちゃうのさ。だってそれは変わり者って事だからね!」


「僕は変わり者じゃないですね。期待に沿えず申し訳ありません」

「大丈夫、安心してよ。君は誰が見ても個性的だから! こんな仮面が必要ないくらいに一発だ、すぐにわかる。おめでとう、おめでとう!」


 褒めているのだろうけど、失礼な事を言われている気がしてくる。

 要するにこの格好の事ですよね。

 全部服のせいなんです。中身は普通の子なんです。


「自分は普通ですー、みたいな顔してるけど、私達よりよっぽどアレだから」

「ユディ、酷い!」


 片付け中のユディが、通りすがりにカデュウをからかっていく。


「私の目に狂いは無かった。素晴らしい、素晴らしい!」


 この仮面の店主は狂ったように天を仰いでいるし。

 少なくともこの人よりは普通だと思う、絶対。


「それでは僕は宿を探しに行きますので、この辺で失礼を……」

「ああ、行くといいさ。この時間だと、選択肢は少ないかもしれないが」

「そう、ですね。先に予約を入れておくべきでした」


 といってもずっと販売と茶淹れで、休む暇など無かったのだが。

 

「そうだ、おすすめの料理が美味しくて安い宿を教えていただけませんか」

「良いねえ、実に良い。求めているものは主張していくべきだよ、うん」


 ちょっと贅沢過ぎただろうか。

 とはいえ予算に余裕が無いと世知辛い世の中になるのだ。

 色々と村の必要経費として建材、物資、食料などを買ったので、懐は大分寂しくなっていた。


「というわけで、地元ニキの料理を提供する宿を紹介しよう。古代グローディアから受け継がれ、この土地に合わせた適応を続けていった老舗だよ」

「グローディア料理ですか。まだ食べた事がないので楽しみです!」


 古代グローディア、とはこの地方を遥か昔に統治していた伝説上の王国。

 古代ミルディアス帝国よりも古く、そしてより神話に近い時代の国家だ。


「さあ、早くしないと埋まってしまうよ。場所はここから大通りを少し西に行った所にある古風過ぎる大きな建物、宿の名は海と森のホスピタリスだ」

「ありがとうございます、早速行ってみますね」

「ああ、行ってらっしゃい。美しい人よ、また明日!」


 仮面の店主の見送りを受けつつ、紹介された宿の方へ歩き出す。

 少し気分的に急いでいるからか、歩行速度が速まっている。


「……アイス?」

「お供しますよ! 命を大事に!」

「ああ……。うん、じゃあ一緒に」

「守護らねばです」


 どうせ言っても聞かないので一緒に行った方が早いのだ。

 アイスと共に、宿へと向かい、そして当然何事も無かったのだが。

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