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第107話 おおっとテレポーター

 その後、どこへ行くにもアイスが付いてくるのだが、仕方がないので好きにさせておいた。

 そんな状態で倉庫を眺めながら、薬草の類をはじめとした期限のあるものが貯まっている状況をどうしようかと考えている。

 しばらく開拓に勤しんでいたので、色々と収穫物が積み重なってきたのだ。


「うーん。資金も必要だし、物資も買わないといけないし、新たな人材も欲しいし、そろそろ交易に行くべきかな」

「外出ですか。外出ですね!」


 嬉しそうに飛び跳ねるアイスを見て、その決意は固まった。

 同じ場所に留まっていたので、新鮮な場所に行くのも刺激になって良いだろう。


「うん、そうしようか。他の人達に伝えて来てくれる?」

「それはダメですよー、姫の護衛が最優先です!」


 なんとも使えない従者であった。


「僕は姫ではないからね……」

「あはは、そんなわけないじゃないですか。みんなも公認の姫ですよ」


 ずしっとその言葉がのしかかった。

 本当に公認状態だから困る、本人は一切許可してないのに……。


「はぁ……。それじゃ、一緒に行こっか」

「はいっ!」





 他の仲間達はテーブルでくつろぎハーブティーを飲んでいた。

 丁度、全員揃っていて手間が省ける。


「あ、いたいた。そろそろ街に貯まってきた物を売りに行こうと思うよ」

「いいねいいね。久々の外出だね。ユディちゃんもついてくよ」

「そうだなー、そろそろ石買いに行かないとなー」


 ユディとソトがテーブルにぐてーっと突っ伏している

 いつも石買えって言ってるのにそろそろも何も無いと思うのです、師匠。



「……むぎゅー」

「ぷにぷに~。なでなで~。イスマは心地良いです」

「……じゃま」


 イスマを捕まえたアイスが思う存分可愛がっていた。

 そんな事してるから嫌がられるんですよ君は。


「それで、どこに行くの?」

「うん、それなんだけど。他の転移陣の行先を確認したいな、とも思ったんだ」


 いくつあるのか、どれだけ稼働しているのかもわからない転移陣。

 他所へ売買に行く事を考えれば、選択肢は多い方が良い。

 それに新しい場所の方が新鮮で旅をしてる感じだし。


「そうね、いつかは試してみないといけない事だし。じゃあ、やっちゃいましょう」

「やっちゃいましょー!」


 ぐいっと残っていたハーブティーを飲み干し、クロスが立ち上がる。

 このティーカップが芸術家のターレスが作っただけあってとても美しいのだが、ぼろっちい城にはいまいち合わない見事な白磁であった。

 エルフの弟子が出来たので火の精霊を使って高温で焼く事が出来るそうな。




 全員で転移陣が並ぶ魔王城の入り口付近までやってきた。

 万が一、戻れなくなる事態に備えて、武具と軽食を用意してある。


「あそこと、その隣は行った事があるから、今回は逆側をチェックしよう」

「了解ですよー」

「遭難した時を考えると、手分けはしない方が良いでしょうね」

「うむ。私だけどっかに飛ばされて帰れないと非常に困るからな」


 師匠だけ何か心配事が別な気がするのだが、とりあえず皆一緒に飛ぶ事になった。


「どの辺でしょうねー?」

「普通なら対極の位置だと思うのだが……」

「もうちょっとわかりやすい表示にした方がいいでしょうね」


 転移の前に何か手がかりがないのか調査を始めたのだが、これは転移先の位置ぐらいは書かれていても不思議はないと考えての事だ。

 何か情報があれば、ランダムな実験よりはほんの少しだけマシになるだろう。


「ん? 何か書いてある……。古代語? イ……デ……」

「ええい、この天才が読んでやる。こんなものは……おや?」


 カデュウが見つけた、朽ちた石板の下に一直線に向かったソトが力強く踏みしめた床が輝きだした。

 いや、そこを中心に魔術陣の光が展開され――。


「ちょっと、ソト師匠!?」

「あ、発動しちゃった――、ちなみにその文字はイルミディムだ! さすがわた」


 ――-いつものように、不意打ちで転移されるのであった。

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