魔王の我が人外を救ってやるのじゃ!
暇潰しに書いてみました。
暇潰し程度にでも読んでみてください。
のう、人間ら。
『人外』って分かるかの?
いいや違うのじゃ、室伏◯治やら、吉田沙◯里とは違うのじゃ。
あれは『超人』であって人外じゃないのじゃ。
我が言っておるのは、人であって人じゃないものの事。
超能力やら、透視能力を持つ人間がこれに該当するのう。
で、何故我が人外の話をするかと言うとな。
……我のいる世界では、こう言う人外が実際に居るのじゃ。数は少ないが、本当にな。
そして、我。
我は魔王であり、人外を研究しようとする者共から人外を守ると言う仕事をしておる。
自称魔王ではない!正真正銘の最強魔王じゃ!!
……コホン。話を戻すぞ。
人外は科学者にとって宝物じゃ。じゃから極悪な研究に利用されたりして、人外は結果的に廃人となってしまう。
我はそんな人外がかわいそうでの……じゃから我は自ら人外を救い、科学者の魔の手から隠し通すのじゃ。
人外達の有難うと言う眼差し……それだけで我は生きている価値があったと再認識できるのじゃ。
ーーさて、仕事に移るとするかの。
♦︎
我が居るところは東京じゃ。
今は2019年。丁度元号が令和になった所じゃ。
まあそんな風に時代風景を紹介し終えた所で、人外が何故存在するのかを説明するとしようかの。
……主に、人外は過剰なストレスから出てくるのじゃ。
そのストレスがある一定の境界線を超えると、人外の力に目覚めてしまう。『無意識』にな。
じゃが、ただ普通のストレスを重ねただけじゃ、人外の力になぞ目覚めはせん。
元々、人外の力と言うものは選ばれた者だけが目覚めるものじゃ。
それは、人類の比率で言うと……一千万に一人の確率。
じゃが、選ばれただけじゃダメなのじゃ。それじゃあ不完全。
そこで更に、悶え苦しむほどのストレスが入り、人にも相談できずにいると……目覚めてしまう。
ではそれを踏まえて、何故我が東京にいるかと言うと。
……それはまあ、ストレスが溜まりやすい国じゃからな。
ストレスが溜まりやすいブラック企業の数が多すぎるのもあるし、学生のいじめも多い。
実に許せん。人外じゃ無くてもな。
……じゃから、ストレス大国の日本の首都、東京だからこそ人外は多い。
人外が多いとなれば、それを付け狙う悪い奴もいる。
人外は生まれては研究に利用され、捨てられる……。悪い循環じゃ。
我は、もうそんなの見たくない。
ーーー出来るなら、人外も幸せに暮らして欲しい。
♦︎
現在東京。
我はブラリブラリと街を歩んでおる。
普段、我は外に外出しないのじゃ。
それは、以前人外を助ける為に研究機関に潜入した結果、我の顔が割れてしまったからな。
いつ殺されるか分からん。
……じゃが、それでも我は出かけるのじゃ。
それは、我の勘が『人外が居る』と言ってきたからなのじゃ。
そして、我の勘は絶対に当たる。じゃから我は勘の赴くまま、外を出掛けているのじゃ。
……と、そんな時じゃった。
「たまちゃ〜ん!降りてくるのよ……」
と言った悲痛な叫びが聞こえて来た。声的におばあちゃんじゃの。
我はその声が聞こえた方向に歩んだ。公園じゃ。
……そして、その主に会った。
声の主のお婆ちゃんは高い木を見上げ、ヒヤヒヤと手を合わせていた。
我は話しかけてみた。
「何かあったのか?」
「うちのたまちゃんが木から降りてこないの……どうしたら良いのか……」
と言いながらお婆ちゃんは木を指差した。
その方向には、かなり高い位置に引っかかっている猫が居たのじゃ。
見上げる程に高い位置におるな。
……じゃが、あれなら行けるかの。
「任せておけ」
我は足を踏み込んだ。
目指すは猫が居る木の枝。
他に木の枝が邪魔じゃったが、我の運動神経を舐めるでない。
我は木を軽く駆け上がり、そのまま猫を優しく攫った。
そして、不動の態勢で着地。
「ほれ、とって来てやったぞ」
我はお婆ちゃんに猫を手渡した。
するとお婆ちゃんは驚いた様に、
「……凄い運動神経ね!うちの孫より凄いわ!」
我を褒め称えて来たのじゃ。
当然、我は良い気になる。
「魔王じゃからな!」
「……魔王?」
お婆ちゃんのキョトンとした顔が気にはなったが、我は気分が良い。
我はそのままその場を後にし、再び勘に従って歩いて行った。
♦︎
我は街散歩中に、ビルにある広告を目にする。
「本田◯祐とじゃんけんして勝ったらコーラ一本プレゼント?……そんなの我の全勝に決まっておるだろうが。百本プレゼントさせてやるわ」
我は負けない。じゃんけんであろうと。魔王じゃからな。
……本田◯祐とやらは強いのか?人外じゃ無ければ我と戦おうなぞ無謀じゃぞ?
そんな風に我が歩いている時に、勘が働いた。
我は足を止め、ふと横を見た。
「マンションの様じゃな。ここに居るのか、人外は」
我の勘が「うん」と言っているのが分かる。こっちじゃな。
……そして我は勘に従い続け、遂にその階層まで来た。
「十二階。しかも角部屋ときたか……どんな人外なのかの」
我はインターホンを押した。
……じゃが、いくら経っても出てこない。
我は勘に聞いた……じゃが、来たのは「ちゃんと居る」と言うものだけ。
「……うーむ。……不法侵入じゃな」
我はそう言いながらピッキング用具を手に取る。
我の前には、鍵など無用だ。
ーーーがちゃん。
直ぐに扉は開き、我はそのまま扉に手を掛けた。
「お邪魔するぞー」
開けた先は……ゴミだらけじゃった。
足の踏み場もないくらいのゴミの山。
我はそれを掻き分けながら、奥へ進んだ。
そして、ある扉の前で止まる。
勘じゃ。この先に居る。
「居るかー。人外ー?」
我は扉を開けて登場する……が、居ない。
いや、居ないのでは無く……。
「何をそこで縮こまっておる。出てこい」
其奴はテーブルの下に隠れておるのじゃ。
じゃが、呼んでも一向に出てこない。
「……うん」
我は痺れを切らしてその人物を引きずり出した。
「……うわぁっ!!?やめて下さい!!ちょっと!」
其奴は我の手を振り解こうとした……じゃが、直ぐに我の腕力の前に屈した。
それでも多少暴れておる。
我は隙を見てその人物の顔を確認した。
「……少年か」
「離してください!このままじゃ貴方も……!」
少年がそんな戯言をほざいたが、我にはどうでもいい。
「駄目じゃ。お前は我に救われるのじゃ」
「……え?」
ーーーそして、我は少年の救済に移る。