初めての街
馬車に揺られ、ようやく街へ到着した一郎…。
「一郎!起きて起きて!」
ミーアに揺すられ起きる一郎。
「ん?あ! ごめん、寝ちゃってた」
慌てて馬車を降りる一郎。薄暗くなった空の目の前には街の入り口があった。
「いつもありがとう。少なくてすまないが、お礼じゃ」
じーさんが男に数枚のコインを手渡す。
「いえいえ、こちらこそ大変お世話になって申し訳ないです」
男がペコリとお辞儀をし馬車で戻っていった。
「あれ?帰りはどうするんだい?」
「ああ、帰りは街の馬車で送って貰うよ。彼も馬の世話で忙しいからね」
「ふ〜ん」
3人が街の入り口に着くと、甲冑を着た兵士3人が人の出入りを見張っていた。
「何か見張りいるけど普通に入って大丈夫なのかい?」
緊張した面持ちで一郎が尋ねた。
「ああ、怪しい者が出入りしない様に見張っているんだよ。この街は平和だから形だけになっているがな」
「そ、そうなんだ。けど緊張するなぁ…」
じーさんのリュックに登った一郎。じーさんは何気ない顔でテクテクと歩く。じーさんと手を繋ぎ軽快なスキップを繰り出すミーア。
「待たれよ!!」
槍を面前に出され止まるじーさん。心臓バクバクな一郎。
「…なにか?」
「その猫はなんだ?」
緊張しすぎて今にも吐きそうな一郎…。
「(やばいやばい!捕まったらどうしよう!!!!!!!)」
しかし、じーさんは毛ほど表情を崩さず冷静に答える。
「わしは家族で遊びに来ただけじゃ。この猫も当然家族じゃ。何か問題がおありかい?」
甲冑の兵士は表情が読めないが淡々と答える。
「いや、問題は無いが逃がさない様にな」
「ああ、ではこれで…」
じーさんはそそくさと歩を進めた。
「じーさん助かったよ〜」
一郎が安堵の表情を見せる。
「まぁ、普通に猫を連れている方が珍しいから仕方ないじゃろ。はっはっは!」
「一郎は何も悪い事してないんだから大丈夫よ!!」
二人の笑い声が嬉しかった。
「(…家族か……)」
照れ隠しにじーさんのリュックに顔を埋める一郎であった。
商業区は大きい道の両端にお店がいくつも立ち並び、屋台や床に品物を並べ売る人や客引き等、盛んに商売が行われていた。
「もうすぐ夜なのにすげー……」
「この街は様々な場所から品物が集まる。大抵の物はこの街で買える。まずは荷物をお金に換えよう」
じーさんは大通りの路地に入り少し歩いた所にある小さなお店に入った。
「いらっしゃい。 おお!2人とも遠い所よく来たな」
中に居た毛糸の帽子をかぶった白髪の老人が出迎えてくれた。
「アッポさん、こんばんは!」
ミーアが元気よくあいさつする。
「また色々集まったから持ってきたよ」
一郎がリュックから降り、じーさんが机に荷物を広げる。
「ん?この猫も売り物かい?」
その言葉にビクッとする一郎。咄嗟にじーさんを見つめる。
「はは、この猫は家族じゃよ。家に残しておけないから連れてきたんじゃ」
リュックの中身は、木の実の詰め合わせ、木彫りの作品数点、押し花、毛皮等、山や森で採れる物が多かった。
「どれどれ…」
アッポさんと呼ばれる老人が荷物を手に取り1つずつ確かめる。
「ふむ、それじゃあ前回の売り上げ分だ」
と、じーさんに小さな布袋を差し出した。じーさんはそれを受け取り中身を確認する。
「ありがとう。いつもすまない」
そう言うとじーさんは小さく頭を下げた。
「今日も泊まっていくのかい?」
「ああ、いつもすまない」
「じゃあ準備してくるから少し待っててくれ」
アッポさんは2階へ上がっていった。
「じーさん、このお店は?」
「ああ、いつも持って来た物を代わりに売って貰っているんだよ。次来た時に売上金を貰って、その一部をアッポさんに渡しているんだ。ついでに宿と食事も世話になっている」
「アッポさんの作るご飯は美味しいんだよ!」
ミーアが鼻息を鳴らしている。
「よし、出来たぞい。そちらの猫ちゃんには鶏肉をあげよう」
食卓につく2人と床で食べる1匹。
「(しばらくは普通の猫っぽくしておこう)」
一郎は鶏肉を1口齧る。
!!!!!!!!!!
一郎の表情が強張る。
「(こいつはやべぇ!旨過ぎる!!)」
ガツガツと食べる一郎。
「ん?はは口に合ったか、そうかそうか」
「ニャー」
と猫の鳴き声を出しアッポさんに答える一郎。
2人と1匹は明日に備え早めに寝るのであった。




