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ニートが猫に転生する話あるんですけど、聞きたいっすかwww?  作者: しいたけ
          猫一郎
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 旅立ち

イケメンが去った後一人考えにふける一郎。とりあえず行く当ても無くフラフラするが…

 一郎は地面に寝転がり、空を見上げて流れゆく雲を眺めていた。


 「そうか、やっぱり俺死んでたんだ……。ん?母さんはどうなったんだ!? しまったぁ…。あいつに母さんが無事だったか聞けば良かったぁ…」


 己の頭の回転の悪さに落胆する一郎。今後の事についても考えてみるが、どうしたら良いか分からない。しばらく悩んでいるうちに日が落ちて辺りが夕焼けに染まり出した。


 「流石にこのままはまずい。腹も減ってきたし、とりあえず森を抜けてどこかでメシを探そう。」


 幸い人間の時と違い、身体は軽い。軽快に駆け出す一郎。しかし、すぐに疲れて止まってしまう。


 「ハァ…ハァ…。おかしい、走りながら呼吸がし辛い。くそっ!暗くなる前に森を抜けられるのか?」


 仕方なくトボトボと歩き始める一郎。

森の中は短い草と高い木々で満ちており、視界はあまり良くないが歩く分にはそれほど不自由はしなかった。


 「たまに顔に草が当たるけど、毛のおかげであまり気にはならないな。それに猫の視界ってこんなにも低くて見る物全てが大きく見えるぜ」


 徐々に猫が馴染んできた一郎。走ったり木に登ったり、狭い隙間を潜ったり、童心に帰ったかのようなはしゃぎっぷりで気が付けば森を抜け、長くゆるやかな丘へ出ていた。


 丘には灯りに付いた木造の小さな家らしき建物がぽつりと建っていた。家を見つけた一郎は安著の表情を見せ、目を輝かせた。


 「やった!家がある!」

一郎は嬉しさのあまり疲れも忘れ、速足で家へと向かった。


 家は古く、窓からはランタンの灯りが漏れていた。一郎は窓下に置いてある樽に静かに登り、中の様子を伺う。家の中には木の机と椅子、大きなベッドに鳥の剥製。奥では白ひげを蓄えた初老の体格の良い男が慣れた手つきで食事を作っていた。


 腹減ったなぁ…などと考えながら樽を降りようとした瞬間、一郎は後ろから捕まれ軽々と持ち上げられてしまう。


 「ちくしょう!離せ!!」

一郎は手足をバタつかせ、身体を捻り懸命に脱出を図る。


 「猫ちゃんだ!それも喋る猫だー!」

抵抗虚しく一郎は声の主に首根っこを掴まれ、暴れることすら出来なくなってしまった。


 声の主は小さな女の子で、姿形は人間そのものであったが、一郎はこの世界の人間の事など何一つ知らない。きっと酷い目に合わされるに違いないと恐くなってしまった。


 「猫ちゃんはどこから来たの?」

一郎は恐怖のあまり目を強く閉じ、身体も震えていた。女の子は首根っこを離し一郎を優しく抱えると、静かに家の中へと入った。


 「可哀想に。こんなに震えてしまって…。大丈夫。怖くないよ?」

女の子の部屋は可愛いぬいぐるみや小物で溢れ、一郎はベッドの上で毛布にくるまれ、頭をなでなでされていた。


 女の子が自分に危害を加える気が無い事を感じた一郎は、静かに小さく口を開いた。

「俺が喋れる事は内緒にしてくれないか?」


 幸運にも言葉が通じる事、前世と同じように人間が住んでいる事、喋る猫は珍しい事。首根っこを捕まれると無力化してしまう事。色々と考えた末、一郎は自分が喋れる事は伏せておいた方が良いと思った。


 「うん、いいよ!猫ちゃんと私のヒ・ミ・ツ!」

ひとまずほっとした一郎であった。


 「ねーねー。猫ちゃんのお名前は?どこから来たの?どうして喋れるの?」

次々質問してくる女の子の眼は喋る猫に興味津々と言った感じであった。


 「俺の名は一郎。どこから来たのかと言われると返事に困るんだが、森さまよってたら偶然ここを見つけた次第だ。」


 一郎が話す様子を眼をキラキラさせて見つめる女の子。

「君の名前は?それにこの家には他に誰か居るみたいだが、家族の人かい?」


 「私はミーア。もうすぐ8歳よ。ここにはお爺ちゃんと二人暮らししてるの。私の両親は都会に出稼ぎに行ってて、暫くお爺ちゃんの所にお世話になってるの。それより、一郎はお腹空かない?これから夜ご飯なんだけど、一郎の分も持ってきてあげるね?」


 「いいのかい?腹減ってたから助かるよ!でも、お爺ちゃんには俺のことは内緒にしてて欲しいな…」


 「もちろんよ!二人だけのヒ・ミ・ツ!一郎はここに居てね?」

ミーアはそう言い残し、すーっと部屋を出て行くと隣からは食事の音と会話が聞こえ始めた。

一郎は毛布に隠れる様に潜り込み、気配を消してミーアの帰りを待つ間これからの事について考えていた。


 「まずは、ミーアのお爺ちゃんが俺にとって安全か調べなくては…。ミーアの様に協力的なら、この世界の事について色々と聞いてみよう」


 暫くして、一郎が毛布の中でウトウトと居眠りをしているとミーアがベッドに戻ってきた。


 「おまたせ一郎。こっそり食べ物持って来たよ。一郎のお口に合えば良いけど……」

と、ミーアは右ポケットからパンの欠片とブドウ3粒。左ポケットから干し肉を取り出した。


 「ああ、十分だ。ありがとうミーア」

パンの欠片を前足で押さえ、少しずつ食べる一郎。ふと考えが頭をよぎる。


 「ありがとう。何て言ったのいつ以来だろう……。母さんにもありがとうなのて殆ど言ったこと無いのにな……」

一郎はパンを食べながら複雑な気分になっていた。


 「美味しい?」

ベッドに頬杖をついて、一郎の食事を眺めていたミーア。その表情は子どもを見つめる母親の様であった。


 「あぁ、美味しいよ」

一郎はそう答えるので精一杯だった。


 「そう、良かった!」

気が付くと一郎はミーアがくれた食事を全て平らげていた。


 ミーアが「もう少し持ってくるね」と部屋を出ようとした時、誰かとぶつかってしまう。


 「あ、お爺ちゃん…………」


 一郎はお爺ちゃんと呼ばれる短髪に長い白ひげを蓄えた中年男性と目が合った。素早く部屋にあった棚の上に逃げる一郎。


 「ミーア、その猫はどうしたんだい?」

お爺ちゃんは重く静かにミーアに問う。


 「これは、その、、さっき表で見つけたの」

「服に動物の毛が着いてたり、夜ご飯をこっそりポケットに入れているから何かと思えば…。それに二人が話しているのもここで聴かせてもらったよ。一郎…君でいいのかな?君は喋れるみたいだね?とても珍しいしゃないか」


 珍しい。その言葉に恐怖心が芽生える一郎。毛を逆立て逃げる場所が無いか懸命に探す。

「やめてお爺ちゃん!一郎に乱暴しないで!!」


 ミーアはお爺さんにしがみつき、必死で懇願する。

「乱暴?…するわけないじゃないか。だって一郎君はミーアのお友達なんだろう?」


 と、お爺さんは一郎を棚の上から降ろし、ミーアに抱えさせる。

「お友達…?そう!お友達!!。一郎!私とお友達になってよ!!」


 突然の事にポカンとする一郎。逆立った毛はすっかり元に戻っていた。とりあえず、この男性も一郎に危害を加える人物ではないようだ。


 「あ、ああ」

「やった!嬉しい!!」

そう言うと、ミーアは一郎を強く抱きしめその場でクルクルと回り始めた。喜びに満ちたその表情を見るお爺さんは、どこか懐かしげで哀愁を漂わせるような顔をしていた。


 「さて、続きは向こうで温かい物でも飲みながら話そうか」

お爺さんは皆をリビングへ誘導し、キッチンからポットと湯呑みを2つ持ってきた。


 「一郎君はこっちの方が飲みやすいかな?」

と1枚の小さな木の皿を取り出す。それは見た目が古く、子どもが掘って作ったかの様に単純で稚拙な作りだった。


 「ああ、すみません」

と一郎は会釈するが、その木皿の見た目ではあまり飲む気にはならなかった。お爺さんはそれぞれにお茶の様な物を注ぐ。


 「この辺りで採れた花のお茶だよ。これを飲むと身体が温まってよく眠れる」

一郎は嗅いだことの無い匂いのお茶に躊躇するが、一舐めしてこう言った。

「あ、意外と美味しい」

お爺さんは満面の笑みを見せる。


 「まだ自己紹介がまだだったね?私の名はダーモンド・クレイチナ。気軽にダーさんと呼んでくれ。この子の祖父だ。この子の両親がモヘナの街まで出稼ぎに行っている間、この子を預かっている」


 「俺は一郎。見ての通り喋る猫だ。気が付いたら近くの森に居て、行く当ても無くここに着いた」


 「そうか、一郎君も色々と事情があるそうだね。良かったらここに住んだらどうだい?この辺りは旅人しか通らないから、子どもも居なくてミーアもいつも1人で遊んでいるんだ。もし良かったら一緒に遊んでくれないかい?」


 「一郎お願い。一緒にここで暮らそうよ!」


 「まぁ、行く当ても無いから願ったり叶ったりなんだけど…。本当にいいのかい?」


 「ああ、勿論だとも」



 こうして一郎はこの家でお世話になるのであった。

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