ミーアと市場
「よっと……」
私は今までの成果を試すように、木彫りの作品を荷物入れへうんと押し込み市場へと出かけた。
早朝にも関わらず、市場は賑わっている。
いや、早朝だからだろう。
良い品をいち早く手に入れようと商人が多く行き来している。
私は端の方へ荷物を広げ座る。
お客さんの反応を見る為、値札は書かなかった。
隣ではオバサンが大きな声で野菜を売っていた。
私は静かに待ち続けた……。
少し小腹が空いた頃、一人の老人は私の木彫りの猫に触れてくれた。
老人は少し微笑み「いくらだい?」と聞いた。
私が「銅1枚です」と答えると、老人は銅3枚を渡し猫を買ってくれた。
なんだか施しを受けた様で釈然としない。
私は『商売』がしたいのだ。その為にココに来ている。
けど、老人の好意を無下にするのは良くないので、ありがたく貰う事にした。
昼になり、本格的にお腹が空いた。
いつの間にか隣には同じくらいの子が何かの種を売っていた。
私は気にせずアリサお姉ちゃんにもらったパンを齧る……。
「おやおや、小さな子が……。それで足りるのかい?」
隣のオバサンがこちらの様子を見てきた。
オバサンは私に果物を2つくれた。
私はお礼に木彫りの熊とウサギを渡した。
「おやおや、ありがとう!」
オバサンは満面の笑みで私に微笑んだ。
それからしばらく待ったが、あれから1つも売れなかった。
何人かは手に取ってくれたが、値段を聞いて皆帰ってしまう。
きっと私の作品には銅1枚の価値もないのだろう……。
オバサンはいつの間にか帰って居なくなっていた。
隣の子も1つも売れずに暇そうだ。
「ねぇ、良かったら一緒に売らない?」
私は隣の子に話しかけてみた。
特に返事も無かったので、私はその子の隣へ行き
木彫りの熊と猫、ウサギでお手玉を始めた。
すると、その子はポケットからハーモニカを取り出し演奏を始めた。
拙いながら綺麗な音色に市場の人たちの目があつまる。
私は少し、はずかしかった。
演奏が終わると、まばらながら拍手を貰えた。
何人かは品物を手に取って買ってくれた。
野菜や果物をくれる人もいたが、私とその子は種や木彫りと交換した。
暗くなる前に、隣の子と別れを告げ教会へ戻った。
今日は野菜がそこそこと銅5枚。
野菜はアリサお姉ちゃんに渡して、今日のご飯になる予定。
お金は……もう少し溜まったらアリサお姉ちゃんに何か買ってあげよう……。
一郎は今ごろ何をしているかなぁ……




