ミーア、王国にて
「こっちが野菜売り場で――」
「魚はこっちが安いよ」
ミーアはアリサに連れられ、教会から近い市場へと来ていた。
「凄い……街より大きい」
街の商業区より規模の大きい市場の騒然たる光景に、
ミーアの胸は高まりが抑えられずにいた。
「大体の生活用品から食品は、ここで揃えてる。
特殊なやつは家に来る商人に依頼してるかな」
アリサは我が家の庭同然の市場を優雅に歩き、
ミーアがはぐれぬ様注意を払ってくれた。
教会へ戻ると、アリサが簡単な食事を作ってくれた。
小さなパンとお芋のスープ。それに蜜柑。
ミーアはお辞儀をし、感謝しながら頂いた。
昼過ぎから、ミーアあ自室の掃除を始めた。
今まで誰も使ってない為、住めるように丹念に
雑巾で拭いた。
途中で大きなクモの死骸に驚き頭を打ったが、
幸い小さなたんこぶ1つで済んだ。
掃除が終わるころに、アリサの呼び声が聞こえた。
窓からの景色は赤に染まり、とても綺麗だった。
夕食は薄いクリームシチューと少しのペンネ。
昼間のお芋のスープの残りだった。
「ごめんね、あまり量が無くて」
申し訳無さそうに謝るアリサに、ミーアは
「頂けるだけ感謝してます」
と、謙虚な姿勢を見せた……。
部屋に戻り、ミーアは1冊の本とペンを取り出した。
アリサが用意してくれた布団に寝転がり、
本のページを1枚めくり、ペンで何かを書き止め始めた。
――○月×日
今日は初めて王国へ来た。
人も建物も住んでた所とは全然違い少し怖かった。
けど、教会のアリサお姉ちゃんは優しくてとても
輝いていた。これから勉強頑張ろう!
日記を閉じ、荷物の中へしまう。
代わりに手のひらサイズの木片と、
彫刻刀を取り出した。
王国に行く前にじーさんから貰った彫刻刀。
見よう見まねで木片を掘り始めるミーア。
「う〜ん……」
辛うじて生き物と分かる位には掘れたが、
何かは見た目からは分からなかった。
コンコン
ミーアはアリサの部屋の前に居た。
「どうしたの?」
静かに開いた扉からは、蜜柑の香りがした。
ミーアは出てきたアリサに出来た木彫りの……ウサギ?
を手渡した。
「わ、ありがとう!
可愛い猫ちゃんだね」
アリサが微笑む。
「頑張って掘ってみたの。
アリサお姉ちゃんにあげる」
そう言い残し、ミーアは自室へ戻った。
「ふふ、可愛いわね」
貰った猫?をそっと机に置き、眺めるアリサ。
自室へ戻り、布団に入ったミーア。
「キツネさんに見えなかったかな?
次は頑張ろう!」
反省もそこそこに、
ミーアはいつの間にか眠りについてしまった……。




