新しい家
街へ着き、新居へ向かう3人。
――コン、コン
ミーアの控えめなノック。
ドドドドドド!!
豪快な足音がドアから伝わってきた。
ガチャ!
「ミーア!!」
中から出迎えてくれたのは、ミーアによく似た若い女性であった。
「お母さん!!」
ミーアが母親に抱き付く。
――そう言えば今までミーアの両親についてミーアの口から聞いた事が無かったな。
まあ俺自身、親の話にあまり触れたくないからあえてスルーしてたが……。
親子の久々の再会の脇で1人冷静な一郎。
「久しぶりだな、ノア」
おそらくじーさんも久々の対面だろう。
「お父さん……」
ノアと呼ばれた女性はじーさんの娘であった。
「ごめんなさいね、忙しくて全然会えなくて……。
でもやっとマイホームが買えたわ!
これからは毎日一緒よ!!」
母親が満面の笑みで笑う。
「あのねお母さん。この猫ちゃん、一郎っていうんだけど一緒に住んじゃだめ?」
ミーアが一郎を抱き上げ母親に見せた。
……母親がとても残念そうな顔をしたのを見て、一郎は嫌な予感がした。
「猫はダメよ! 私猫嫌いなの」
それを聞いたミーアは俯いてしまった。
「お願い、お母さん……」
ミーアの切ない声が聞こえた。
一郎はいたたまれなくなり、じーさんの肩に乗った。
「ノア、ダメなのかい?」
じーさんが優しく聞く。
「ごめん、私猫アレルギーなのよ……」
袖を捲った母親の細い腕には、既に小さな発疹がいくつか現れていた。
「私、帰る……」
そう言うとミーアは来た道をトボトボと歩き始めた。
その背中はとても小さく、ただただ悲しそうだった。
「一度帰るよ。落ち着いたらミーアと話しをしてやってくれ」
じーさんがミーアの後を追う。
――帰りの馬車。
ミーアは黙って外を眺めていた。
「ミ、ミーア……」
一郎が恐る恐る話しかけた。
「……お母さんもお父さんも仕事が忙しくて全然会えない。
前に会ったのは2年前よ。それもお昼だけ。
街の為に働いているらしいけど、難しい事は私にはわからないわ」
外を眺めながら話し始めたミーア。一郎は黙って聞いていた。
「やっと一緒に居られると思ったのに……。
お母さんが猫アレルギーなんて知らなかった……。
しばらく会わないうちに両親は変わってしまったのね……」
涙目になるミーア。
「……俺の事は気にせず、両親と暮らしたらどうだい?」
「……それだけは嫌!」
こちらを向くミーア。その眼には涙が溢れていた。
「ううん、変わったのは私の方ね。
やっと分かったわ……」
ミーアがおじいさんに抱き着つき顔を埋めた。




