留守番 ①
「じゃあ、行ってくるよ。後は任せたよ」
「行ってらっしゃい~」
元気に手を振るミーアと一郎。
じーさんは、遠い街に住む旧友が病に伏せったとの知らせを受け、お見舞いに出かけた。早馬で1日、往復2日。じーさんが帰るまでミーアと一郎で留守番というわけだ。
「一郎。何して遊ぶ?」
ミーアが椅子の腰掛けこちらを伺う。
「じーさんが帰るまでは、外に出ちゃダメだからな~」
残されたのは幼女と猫だ。何かあっては危ない。
「ボトルシップの続きは?」
机に置かれた空き瓶には、作りかけの船が入っていた。
「飽きちゃった!」
満面に笑みで答えるミーア。実に子どもらしい。
「……じゃあ…おままごとは?」
一郎、苦肉の策。おままごとは食いつきが良いのだが、一郎は得意では無い。不倫夫の役とか変な役をやらされる事が多い。
一体どこでそんなことを覚えてくるのか、全く女子の情報収集力は恐ろしい……。
(後々知った話しでは、昔ミーアとじーさんがアッポさんの所に泊まった際に、アッポさんの浮気がばれて、喧嘩してたのをミーアが偶然見てしまったらしい……。)
「おままごとやるやるー!」
見事に食いつくミーア。
「じゃあ、一郎はお店屋さんね!私はお客さん!」
「お、おう…」
「すみませーん」
「…いらっしゃいませ。店内でお召し上がりでしょうか?」
前世で3日だけ勤めた飲食店のバイトを思い出す一郎。
「ちがうの、一郎は野菜屋さんなの!」
「ごめんごめん」
「こちらの上着はいくらですか?」
設定がコロコロ変わるのはいつものこと。一郎も慣れっこだ。
「銅25枚です」
この世界の服の相場が分からない一郎。大体で答えてみた。
「こちらの素敵なコートはおいくらかしら?」
「…銅50枚です」
素敵な、と言われ倍の値段を付けた一郎。
「えー!2倍もするの?」
「素敵なコートですから」
ふふん、と鼻を鳴らす一郎。
「うーん、少し高いわね。この上着もう少しお安くならないかしら」
しっかり値引き交渉をするミーア。たくましい。
「そ、それでは銅20枚でいかがでしょう?」
あっさり値引きに応じる店員一郎。
「それなら買うわ!」
「ありがとうございました~」
ぺこりとお辞儀をする一郎。
「…?」
ミーアが動かない。
「やっぱりこっちの素敵なコートにするわ」
「は、はぁ…」
キョトンとする一郎。
「おいくらかしら?」
「え~と、倍の値段だったかな?」
適当に答えた値段をもう忘れる一郎。
「そうよ!倍の値段よ!!」
勢い付くミーア。
「つまり銅40枚かしら!?」
「あっ!!」
流石の一郎も気付いた。ど偉い値引きっぷりだ!
「お客さまには困りましたな~」
困ったふりをする一郎。
「分かりました。銅40枚でどうぞ!」
ドヤ顔のミーア。実にたくましい。
「じゃあ、上着は返品します。それとさっき渡した銅20枚で合わせて銅40枚ね」
「は、はぁ…」
「この素敵なコートは頂いていくわ」
「あ、ありがとうございました……?」
ミーアの勢いに押され、素敵なコートを大安売りしてしまった店員一郎。
「…………」
再び固まるミーア。
「…?」
不思議がる一郎。
「一郎。あなたお店屋さんには向いてないわ」
と、ミーアがポツリ呟く。
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