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もう恋なんてしないなんて  作者: リューク
恋なんてしない!
3/3

 綾部さんの思わぬ爆弾発言でクラス中の恨みを一身に受けた俺は、憂鬱な気分で居たのは言うまでもない。

 ただ、全く嬉しくないのかと言うと、そんなことは無く、あれだけの美人を連れて歩けるのは正直言うと、ちょっとだけ、ちょっとだけだが嬉しいのだ。


「さて、神崎君。中休みだから案内を頼む」


 授業終了のチャイムと同時に隣に座る綾部さんが嬉しそうに話しかけてきた。

 どこにそんな喜ぶ要素があるのか分からないが、この笑顔を向けられては断る方が無理と言うものだ。


「それじゃ時間があまり無いんで、まずはこの北校舎と食堂を案内します」

「うむ、それで頼む」


 

 それから俺は、彼女を連れて北校舎を案内してまわった。


「北校舎は基本的に通常教室が固まっています。1年生は3階、俺達2年は2階、3年生は1階になっています。職員室は基本的に食堂のある特別棟にありますからそっちはまた昼休みか放課後にでも案内します」


 そう言って説明しながら歩いていると、彼女は興味深そうに周りを見回していた。

 どこにそんな興味を引くような場所があるのか俺には理解できないが、まぁ喜んでいるのは顔を見ればわかる。

 そのまま北校舎を抜けて歩く事5分で特別棟に到着した。


「で、ここが特別棟です。通称『呼び出し棟』と呼ばれています」

「呼び出し棟? なんでそう呼ばれているんだ?」

「さっきも少し言ったと思うんですが、ここは職員室が集中しています。国語~体育・美術までの教員準備室があるので、呼び出されるとしたらここになるんです。なので、通称呼び出し棟となったんですよ」

「あぁ、なるほど。合点がいった。……ところで一つ良いか?」


 そう言った彼女は少し不愉快そうな顔で俺の方を見ていた。

 あれ? 俺なんかおかしなこと言ったかな?


「なぜ神崎君は私に敬語で話しているのだ? 私は同い年なんだから普通に話しかけて欲しいぞ」


 俺の顔を覗き込みながら彼女は文句を言ってきが、うん、美人がこう、可愛い仕草をすると何とも言えない思いが胸に来る。

 思わずドキッとしかけてしまったじゃないか。


「え、あ、その、ごめんなさい。じゃなかった。ごめん、つい緊張しちゃって敬語になっていたよ。……これで良いかな?」

「うむ、そっちの方がさっきより幾分も良い」


 彼女はそう言ってまた満足そうに笑っていた。

 その笑顔にまた見惚れてしまいそうになる自分を抑えて、次の場所を俺は案内し始めた。


「じゃ、じゃあ、次は食堂に行こう」

「うむ、よろしく頼む」


 そんなこんなで俺の学校紹介中休み編は終了した。

 もちろんクラスに戻った次の休み時間ほど大変なものは無かったと言っておこう。

 ただ、この大変な事も昼休みの事件に比べれば大したことも無かったのだろう。




「神崎君、お昼を一緒にとってくれないか?」

「は、え、えぇ? なんで?」


 俺の慌てぶりが予想外だったのか、心外だったのか、彼女は少し不機嫌な顔をしながら理由を話し始めた。


「な、なんでは無いのではないか? 昼休みも案内してくれるのであろう? なら一緒にお昼をとった方が、都合が良いでは無いか」

「あ、あぁ、確かにそうですね。……わかった。行こう」

「うむ、それでこそ神崎君だ」


 どこからその笑顔と俺にへの信頼感は出てくるのだろうか?

 こっちとしては、正直クラス全体の特に男子の視線が非常に痛い。


 その後、お昼をとった俺と綾部さんはまずは、南校舎を回り、理科室や家庭科室等の特別教室を見て回ってから部活棟へと出向いた。


「ここが部活棟。男女それぞれ一棟ずつあるが、基本的には同じ系統の部活で隣り合わせになって使っているのが現状かな?」

「剣道部はあるのだろうか?」

「剣道? 一応あったと思うけど見に行く?」


 俺が案内しようとしたその時、綾部さんが急に俺の手を掴んで制止してきた。


「え、あ、その、ど、どうしたの?」

「いや、剣道は良いのだ。確認しただけだから……」


 そういうと彼女は急にシュンとして下を向いて去っていった。

 俺は何か悪い事をしたのだろうか? どこか胸の中に引っかかる思いを引きずりながら教室へと帰って行った。



 その後は特に話す事なく放課後に入り、俺は家へと帰って行った。

 何があったのか、何が彼女の心に引っかかってしまったのか、全く分からないまま悶々と過ごしていると、バタバタと走る妹の足音が聞こえてきた。


「お兄! これ預かってきたから渡すね。じゃ!」


 彼女はそう言って一通の手紙を俺の方に放り投げると、勢いよくドアを閉めて行った。

 どこでこんな乱暴な妹になったのか、小さい時は「にーにー」と言って後ろをついてきていたのに……などと昔に浸る前に彼女が放り投げた手紙を確認しようと手に取った。


 妹が持ってきた手紙の装丁は物凄く可愛らしいものであった。

 およそ男が使う感じでもなく、女の子でも特にフリフリなどを着ていそうなイメージのザ・女の子が使って良そうな封筒である。

 裏書を見てみると、名前も住所も何もなく、表に「神崎 悟 さんへ」とだけ可愛らしい文字で書かれていた。

 まさか今時ラブレターでも送られたのだろうか? と訝しみながら開けると、そこにはまた可愛い縁取りのされた紙が1枚入っていた。

 

「お久しぶりです。悟さん。私は綾羽ちゃんの同級生の未来(みく)です。覚えておられますでしょうか? 小さい頃姉と私の二人でよく一緒に遊んでいただいていたのですが、引っ越してしまいましたので、もう覚えてらっしゃらないかもしれませんね。実は先日父の転勤によってまたこの街に戻ってまいりました。もし良かったら今度綾羽ちゃんと悟さんとお会いしたいと思っております。それで、良かったらですが、アドレスと番号を手紙の端に書いておりますので、ご返事いただけると嬉しいです。では、お待ちしております」


 あぁ~そう言えば小学3年か4年の頃まで近所に住んでいた子だな。

 苗字は……、忘れてしまったな。

 ただ、小さい可愛らしい子で妹の綾羽とは正反対のお嬢様の様な大人しい子だったのを覚えている。

 うん、顔も結構あやふやだし、今度綾羽に写真持ってないか聞いてみようかな……。


 まぁそれよりも連絡してあげないと可哀想だから、まずは連絡しよう。

 えっと、「悟です。お久しぶり。妹から手紙を受け取りました。また都合の良い日を教えてくれたらこっちで日程調整するからよろしくね」っとこれで送信しておけば良いだろう。


 未来ちゃんか……どんな子になったんだろう?ちょっと楽しみだな。


 恋とかどうとかよりもどっちかって言うと兄としての目線が強いからな……。

 嫌がられない様に気を付けなければ。


今後もご後援よろしくお願いします。ァィ(。・Д・)ゞ

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