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もう恋なんてしないなんて  作者: リューク
恋なんてしない!
2/3

「失礼しました」


 綾部 紫を職員室に連れて行った俺は、彼女と別れて教室へと向かった。

 もちろんだが、彼女を連れて歩いている間、周囲の視線は彼女に集中していた。


 並んで歩いて見て分かったのだが、彼女の身長は約160㎝後半で髪からはシャンプーなのか花の様ないい香りがした。

 そして何よりも目を引いたのが、意外に胸が大きかったこと(少なくとも元カノよりも数段は上)が分かった。

 また、話してみると意外と笑い上戸のようで、俺のくだらない話にも笑いを堪えていたほどだ。



 そんなどうでも良い分析をしながら教室に入ると、クラスの男どもが俺の所に寄ってきて質問攻めにしてきた。

 やれ、彼氏は居そうかとか、やれ、どんな臭いがしたかとか、スタイルはどれくらいありそうかとか、それはもうクラスの女子を無視した完全なエロ親父トークと言って良い内容だった。

 そんな俺たちのやり取りに、1人の女子が入ってきた。

 

「なぁなぁ、あの子の名前なんていうん? 聞いたんやろ?」


 この関西弁で話しているのは、「坂井(さかい) (ゆい)」中学卒業まで関西で育っており、高校2年になっても未だに関西弁が抜けない奴だ。

 ちなみに学校の男子からは「ガッカリ美少女」と言われるくらい見た目だけは良く、ショートカットに揃えたサラサラの茶色がかった髪にパッチリと開いた二重の目に背が低いながらもすらっとした体つき(胸が足りないとも言うが)で人気があるのだ。

 しかし、それは見た目だけで中身は完全にエロ親父で、こうして俺達男子の会話に何の抵抗も無く入ってくるのが良い証拠だ。


「名前は確か、綾部紫って言ってたな。話し方はどこか毅然とした武士みたいな話し方してたぞ」

「武士? ござるって言ってたんか?」

「いや、流石にござるはないだろ。ござるは」


 俺たちがそんなたわいもない会話をしていると少し奥に一人の女子が見えた。

 その女子はセミロングの黒髪をポニーテールにした子で、俺の元カノの藤咲紗綾だ。

 

 振られた翌日は流石に気まずく、クラスの奴らも流石に俺たちの空気を察してか、昨日は誰もからかいには来なかった。


 もちろん今日も、綾部の事は聞きに来ているが、藤咲との事を口にしようとした奴は居ない。

 恐らくみんな俺たちの関係が終わった事を知ったのだろう。


「こら、チャイムはもう鳴っているぞ、全員席に座れ」


 俺たちが綾部の事で話をしていると、いつの間にか担任が教室に来ていた。

 彼は手を叩きながら早く座る様に促し、全員が座ったのを確認してから話し始めた。


「さて、知っている者も居ると思うが、このクラスに転校生が入ることになったので紹介する。さぁ、入って来なさい」


 担任が促すと、閉じられていた教室の扉が開いて、綾部紫が入ってきた。

 入ってきたのと同時に、クラスの全男子と坂井から歓声が挙がった。


「静かにしろ! 全くそろそろ高校生の自覚を持ってくれよ。っと話が脱線しそうだったな。本日よりうちのクラスに入ることになった綾部紫さんだ。お父さんのお仕事の都合で我が校に転入する事になった。みんな仲良くするように」


 そう言って担任が紹介すると、綾部がお辞儀をしてから自己紹介を始めた。


「先程先生から紹介にあずかった綾部紫だ。何分こちらの地理や学校の雰囲気には不慣れなので、失礼があったら申し訳ない。これからよろしくお願いしする」


 うん、わかってはいたが、みんなどう反応して良いのか迷っている感じだ。

 微妙な空気が流れたが、このままでは不味いと思った俺は、とりあえず拍手をする事にした。

 そして、俺の拍手を皮切りにこれ幸いとみんなが拍手をし始め、どうにかその場は収まった。


「で、席だが……ちょうど神崎の隣が空いてるな、そこに座ってくれ」


 そう言われた瞬間、クラス中の男子の視線がまるで仇を見る様な目で俺を見てきた。

 いや、君たちさっき微妙な空気になってたじゃん? 別にこれくらい仕方ないだろ?

 などと心の中で叫んでいたが、もちろん誰にも伝わらず、綾部紫の方は朝少し話した事のある俺を見つけて安堵の表情をしていた。



 そして、休み時間、分かっては居たが、俺の席の近くは満員御礼どころか、俺を除外しようと男たちの背中から出る無言の圧力によって席から追い立てられた。

 もちろん、綾部は質問攻めにされている。


「どこから引っ越してきたの?」

「福岡だ」

「趣味はなにかある?」

「剣道と書道だ」

「彼氏は居るの?」

「生まれてこの方居らん」

「モデルとかやっているの?」

「そんな浮ついた事はしたくない」


 と、質問内容は多岐にわたっていた(返す内容が男前すぎるのはどうかと思うが)。

 そして、そんな男子の注目を集めれば、ひがむ女子も居る。

 特にクラスの中でも比較的ヤンチャな女子たちはコソコソと何やら耳打ちしあっており、少し不穏な感じもするが、今のところ何かした訳では無いので、放って置くのが良いだろう。

 そんな綾部の周りを囲む輪の中に一人の男が入ってきた。

 彼の名前は「鹿島(かしま) 亮輔(りょうすけ)」この辺りの土地の名士の息子で顔立ちも良いので、女子からの人気も高い。

 もちろんご多分に漏れず、女癖も悪い。


「紫さん良かったら、僕が学校を案内してあげようか?」

「いや、結構だ。神崎君に頼んでいるのでな」

 

 流石綾部さん威風堂々と断ったかと思ったら、思わぬ爆弾発言を落としてきた。

 この一言に周囲の視線は綾部さんから俺に憎悪と怨嗟と呪詛の籠った視線が投げかけられてきた。

 

「朝言っていたでは無いか、『困った事があったら助けますよ』って。だから学校案内をよろしく頼む」

「え、あの、確かに言いましたけど……」


 それをこの状況で言うか! どんだけ俺の周りに敵を作れば気が済むんだこの人は!

 と彼女には関係のない所で俺の怒りがあるものの、流石に八つ当たりと言う物なので、頷いて肯定するしかなかった。


「では決まりだな。今日の中休みと昼休みに頼むぞ」


 そう言って彼女は太陽と見まがうばかりの満面の笑みを向けてきた。

 いやいやいやいや、その顔は卑怯ですって、そんな笑顔を向けられたら恋をしないと決めた俺の覚悟が緩んじゃいますって。

 などと益体も無い事を考えながら俺は、周囲の恨みの籠った視線を避けるべくトイレへと逃げ込むのだった。


うん、武人系の美人は良いですな。

今後もご後援よろしくお願いします。ァィ(。・Д・)ゞ

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