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これからどれくらいになるかわかりませんが、よろしくお願いします。m(__)m
同日20:42感想で指摘頂いいた点を改稿しました。
「……ごめんね。私好きな人ができちゃったの」
そう俺の前を歩く女が言ってきた。
彼女は、数ヶ月前に付き合い始めた子だ。
「だから、別れよ?」
さもそれが当たり前のように言い出した彼女に、俺は必死に引きとめようとしたが。
「え……、嘘だろ?」
やっとの思いで出た言葉は、あまりにも意味のないものだった。
そして、その言葉を出したのと同時にどこから出てきたのか、チャラそうな男と、腕を組んでスタスタと歩き始めた。
「ま、待ってくれ、待ってくれよ。紗綾!」
追いかけ様と足を踏み出したが、上手く動かず縺れてコケてしまった。
そんな俺など居ないかのように、彼女達の楽しそうな笑い声だけが響いていた。
「紗綾、紗綾、紗綾ぁぁぁぁ! ……あ、あれ?」
気がついたら俺はベッドに横たわり右手を天井に向けて突き上げていた。
「ゆ、夢? ……なんて後味の悪い夢だ……」
俺の名前は神崎 悟。
私立に通う今年で17になる高校2年だ。
夢に出てきたのは、数ヶ月前に付き合い始め、2日前に別れた彼女「藤咲 紗綾」だ。
別れた理由は未だによく分かってないが、取り敢えず振られたという事は事実であり、俺自身がどうしようにもない程未練タラタラであるという事は確かなのだ。
「はぁ……。初めての彼女だったのに浮気されてるなんてあんまりだよな」
そんな事をぶつくさ言いながら朝の用意を洗面所でしていると、後ろからドタバタと走ってくる音が聞こえてきた。
その足音は勢いそのままに洗面所に入ってくると、俺を無理やり洗面台から引き剥がすと自分の用意をはじめやがった。
「こら綾羽! 俺が使ってたのになんで無理やり場所を奪うんだ!」
「うっさい! バカ兄! こっちは時間がかかるんだから譲りなさいよ!」
「俺だってする事があるんだから無理矢理奪うな!」
「何よ! 可愛い妹がお願いしてるんだから聞きなさいよ!」
先程から言い合いをしているのは俺の不詳の妹である、神崎 綾羽だ。
俺とは2歳差の今年中学3年になる。
ちなみに、俺とは似ても似つかぬ美少女顔でツインテールをトレードマークにしている。
家庭内では親父が甘やかした所為で、かなり我が儘で自由奔放に育っているが、外面が良い所為で学校の内外にファンクラブができている程だ。
「それに、お兄こないだ振られたんでしょ? セットする意味ないじゃん」
妹の言葉と言う名の暴力にさらされた俺は、その場に倒れこんでしまった。
「うぅ……、俺のどこに問題があるんだよ!?」
「知るか! 未練タラタラで鬱陶しい!」
な、なんで朝から俺は妹に精神攻撃されてるんだ?
もう、兄ちゃんのライフは0だよ。止めてあげて!
「何してるのあんた達~? さっさと用意しないと遅刻するわよ~」
少し離れたリビングから母の声が聞こえる。
朝っぱらから暴れている俺達に対して相変わらずのんびりした口調で注意をしてくる。
我が家は4人家族、父と母と俺と妹で暮らしている。
父は現在海外に弟子たちを鍛えに海外道場に単身赴任中で家には母と妹と3人で居るのだが、まぁその話はまた今度にしよう。
母はのんびりしているが、あれでも警察の捜査一課で刑事をしていたくらいの凄腕だったらしい。
まぁそのお陰で俺の秘蔵のコレクションが何度となく白日の下に晒されてきたのだ。
「やっべ、もう後少ししかないな、綾羽口ゆすぐだけだから先にさせてくれ」
「えぇ、口ゆすぐだけだよ」
綾羽はいやいやだが俺に場所を譲ってくれたので、すぐに口をゆすいでリビングへ行くと、すでに朝食の用意ができていた。
「いただきます!」
「はい、おあがり」
これがいつもの朝の挨拶風景だ。
ちなみにこのお婆さんみたいな言い回しをなぜか母はずっと続けている。
昔理由を聞くと、ずっと祖母も曾祖母もそう言っていたからとだけ教えてくれた。
「お母さん、私も頂戴」
俺から遅れる事5分ほどして綾羽がやって来た。
先程までのボサボサの髪から一転して、今の彼女の髪は両サイドに二つに纏まり、サラサラの状態になっていた。
特に最近は校則違反にならない程度に化粧もしており、ほんのり顔色が良くなっている。
まぁ元の素材が良いからと思うのは、どこか兄バカが入っているのかもしれない。
そんなこんなで、慌ただしい朝を過ごしていると玄関のインターホンが鳴った。
来訪者を確認するために母がインターホンに出ると、そこから威勢の良い声が聞こえてきた。
「おはようございます! 悟居ますか?」
「おはよう安谷君、ちょっとだけ玄関に入って待っててくれる? まだご飯食べてるから」
「わかりました! お邪魔します」
この威勢の良い奴は「安谷 俊樹」所謂幼馴染と言う奴だ。
俺としてはこんな暑苦しい男よりも見目麗しい美少女が幼馴染だったら良いのだが、まぁ彼の目的は俺と言うよりも妹で、朝だけでも姿を見ようと毎朝俺と登校する為に誘いに来ている。
「すまん、俊樹あと少しだけ待ってくれ。カバン取ってくる」
「おう! そろそろ時間だから早くな」
そう言って俺を見送るかと思うと、すぐに彼は俺から視線を外して真直ぐ廊下を見ていた。
そう、妹の綾羽を見ていたのだ。
小さい頃から俺と綾羽と俊樹の三人で遊んでいたので、気心は知れているが最近は俊樹が積極的にアプローチしている。
もちろん綾羽もその思いは知っているだろうが、特に何も感じさせないいつも通りの挨拶だけをして去っていった。
「俊樹、行くぞ!」
「……え、あ、あぁでは、お邪魔しました!」
そう言って俊樹は直角に腰を折って母にお辞儀をすると俺の後を追ってきた。
俺たちが通っているのは、成風高校という私立校だ。
建学の理念は「威風堂々、正々堂々世界の風に成れ」というもので、風に成れから取って成風らしい。
まぁそんな校風なので、基本的に男女交際には厳しく度々校則を破れば停学にもなる。
ちなみにバイトやバイクの免許保持等は申請を出せばできるので、そう言った面では緩い学校とも言えるだろう。
「おい、悟。あれ見てみろよ」
「ん?何かあったのか?」
俺が俊樹に促された方向を見ると、そこには腰まで伸ばした黒髪と眼鼻の整った凛々しい顔に、モデルの様にスラリとした長身の女性が成風高校の制服を着て立っていた。
「あんな美人うちに居たか?」
「いや、あれほどの美人なら多分学校中の噂になるだろうから、転入生じゃないか?」
俺たちがコソコソと彼女を見ながら話していると、美人がこちらに気づいたのか見てきた。
そして、見るだけではなく俺たちの方に向かって歩いてきて、目の前で立ち止まると話しかけてきた。
「すまない、私は今日からこちらで共に学ぶ綾部 紫と言う。申し訳ないのだが職員室はどちらだろう?」
「へ、え、あ、しょ、職員室なら案内しますよ?」
急な事で緊張したのか、素っ頓狂な声が出てしまい慌てて口を手で覆ってしまった。
その動作が面白かったのか、彼女は俺から視線を外して肩を震わせながら応えてきた。
「ぷ、くぅくくく、よ、よろしく頼む」
「こ、こっちです」
そう言って俺は恥ずかしさで赤面しそうなのを必死にこらえながら彼女を先導した。
今後の更新をお待ちください。
これからもご後援よろしくお願いします。m(__)m