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戦後の変化

「やっぱ怖がられてるよな」


 盾の王国の王女であるマリア達と過ごした一日を振り返ってみるに、どうらやそういう結論に落ち着きそうじゃ。


 はぁ、分かってはおったが、これだけ手間暇かけて返ってくるのが畏怖ではちと悲しいのう。


「マリア様ですか?」


 両手を広げ大の字で寝ておる儂の右側、そこでは全裸のマーレリバーが儂の腕を枕にして、ベットに寝そべっていた。


 その肌は褐色ではなく白。どうも元の姿に儂が興味を持っていることを見抜かれ、闘いの時以外では元の姿を取るようにしたようじゃ。


 まぁ、儂としてはどちらのマーレリバーでも構わないんじゃが、思いで補正とでも言うのじゃろうか、通常エルフ状態のマーレリバーの方がしっくりくるの。


「ああ。俺としては仲良くしたいんだがな」

「人間なんかが好きなの?」


 儂の左腕を枕にしておるアヤルネ(全裸)が聞いてくる。


「女が好きなんだ」


 盾の王国の戦い以降、儂の魔王軍での評価はうなぎ登りじゃ。やはり長い間魔族を苦しめたエクスマキナを倒したのは大きい。儂の価値は早くも魔王の息子であることから、儂個人への実力へと大きく移行しつつある。


 つまりは評価と言う名の貯金が出来たということじゃ。


 そして儂は昔から研究や生きる為に必要な分を除いた金はさっさと使うことにしておる。じゃから権力に物言わせて盾の王国の生き残りを引き取った。


 まぁ、正直な話千人はちとやり過ぎた。しかしこれで少しでも二人の心が軽くなるなら安い……安い……いや、やっぱり千人はやり過ぎた。


「ハァ」


 思わずため息をつく。するとアヤルネが体を、否! チッパイを寄せて来おった。


「私も女。私じゃ、満足できない?」


 おお!? なんじゃ? なんじゃ? その可愛らしい台詞は。ふむ、なぜかこやつ盾の王国の戦い以降、こう言うことに積極的になったんじゃよな。今までは気分が乗ったとき以外はベットの隅で我関せずを貫いておったのに。一体どういう心境の変化なんじゃろうか?


「あら、満足されて無いのなら私はまだまだいけますけど?」


 儂の胸に顎をのせたイリイリア(やっぱり全裸)と目が合う。


「別にお前達に不満なんて無い」


 肩の辺りで切り揃えられていたイリイリアの髪はあの戦い以降少し伸びた。いや、変わったのは髪型だけではない。以前まであった鋭さが少し薄れ、フルフルラを思わす包み込むような妖艶さが強く出るようになった。何よりも明らかに魔力量が増しておる。


 それは話に聞いたフルフルラの心臓を譲り受けた影響なのか。魔術師としてとても興味深い現象なので、一回でいいのでイリイリアの体を隅々まで調べてみたいのう。今度頼んでみようか?


「あら、嘘でもそう言って貰えると嬉しいですわ」


 そう言って儂と口づけを交わすイリイリア。


 フルフルラが生きていた頃は二人して儂から少し距離を取っていたはずなんじゃが、最近ではアヤルネ同様儂にベッタリとなった。


 儂としては心の整理がつくまで暇を与えるつもりだったのじゃが、フルフルラが生きていたらきっとこうするとまで言われては何も言えん。


 盾の王国での戦い以降、それとなく皆の様子を観察してみたが、フルフルラの死の動揺は思いの外少ない。これは皆が冷たいと言うよりは純粋に慣れの問題じゃろうな。


 なにせ儂のハーレムメンバーには人間組を除けば百歳に達していない者はおらん。皆少なからず戦争の経験者であり、この戦乱の世の申し子達じゃ。死を当たり前のものとして捉えておる。


 実際儂も含めてあの場にいた誰が死んでもおかしくはなかった。そしてこれから先もそんな戦場が幾らでも儂等を待ち構えており、当たり前のように突然の別れがあるんじゃろうな。


 盛者必衰。どれだけ力を得ても何かを守り続けるのは難しい。


 しかしそれに抗ってこその魔術師であり、何よりもこれ以上儂のハーレムメンバーが死ぬような事態は避けたいものじゃな。


「ううー。ね、ネコミン。リバークロス様達、ま、またやってるよ」

「しー。寝たふり。寝たふりするのよウサミン。このままじゃ身が持たないわ」


 ベットの端でグッタリしておるウサミン(全裸)とネコミン(全裸)のヒソヒソ話が聞こえてくる。


 それにしても散々な言われようじゃな。……いや、それも仕方ないのか。何せ超越者級に至った影響で魔力量がかなり増えているのを失念したまま、以前と同じ感覚で抱いてしまったからの。おかげで女性陣に多大な迷惑をかけてしもうたわい。


 特にネコミンには悪いことをした。気持ち良くしてやろうと思い、軽い気持ちで魔力を流したら血の泡吹いて失神するんじゃもん。いやーあのときはマジでビビったわい。


「イヌミン早く帰ってこないかな。そしたら負担減るのに」

「この間帰ったばかりじゃん。さすがにまだ先でしょ」


 盾の王国の戦いが終わり魔王城に帰還した儂は皆に休暇を与えた。それに有角鬼族の者達は必要ないと辞退し、ウサミン達獣人組はイヌミンを除いて意気揚々と帰還、そしてボコボコになって戻ってきた。


 聞けば帰ってくるなら一人ずつにして、残りの二人は儂に張り付いておれと獣人の王に折檻されたらしい。


 ウサミン達が儂のことを監視しておるのは分かってはおったが、どうやら獣人の王はそのことを隠す気がないようじゃ。


 そのお陰で、もし今からウサミン達を遠ざけようものなら何かやましいことがあると取られかねない。つまり獣人を敵に回したくなければウサミン達は近くにおいて置けと言う無言のメッセージなんじゃろうな。


 儂としては別にウサミン達を遠ざけるつもりはないので構わんのじゃが、マリア達の為に盾の王国の人間を可能な範囲で助けると決めた以上、獣人の王の動きには常に気を付けておかねばならんじゃろうな。


 例え王が相手でもマリア達を守るつもりではいるが、出来ればあの獣人の王を敵に回したくはない。超越者級に至った儂じゃが心の底からそう思う。


 そしてそんな王の娘はといえばーー


「腰がー。後、お股がいたいよー」


 あられもない姿で自身の体を擦っておった。


「私なんか全身が痛いんだけどー」


 その横ではネコミンがやはりあられもない姿で震えておる。


 やれやれ。そんなにキツイならウサミン達も無理して儂の相手をしなくてよいのじゃが、獣人の性なのか、ボスである儂とは絶対に寝ると言って譲らん。


 何というか、ウサミン達は一見さっぱりしているように見えて群れの順列的なものを意外なほど気にするんじゃよな。


 そのせいか儂が誰を抱いたか、その回数までも事細かに覚えていて、たまに儂をドン引きさせる発言を普通にしてくる。


 そんなウサミン達じゃが、盾の王国の戦い以降行動の変化が見られる有角鬼族の者達とは違い、見ての通りの通常運転じゃ。しかし人間との関わりが増えていく中、ウサミン達がどういう反応をするのか、これからはもう少し気を付けて観察しておいた方がいいじゃろうな。


 そうじゃ。行動の変化と言えばーー


「そういえばサイエニアスは今日も修行か?」

「そう。私も後で行く。リバークロス様も行こう」


 サイエニアスは盾の王国の戦いで自分の未熟さを痛感したとかいって、暇さえあれば修行に明け暮れておる。マーロナライアもそれに付き合う形でここにはおらん。


 フルフルラが死んだ時、サイエニアスは重症を負ってフルフルラの魔法で隠されておったそうじゃ。それは仕方のないことだと思うのじゃが、本人的には弱い自分が許せないらしい。


 他にも儂が天将を前に女達を助ける為に取った行動が、どうも有角鬼族の者達には不評なようじゃ。


 誰も直接は言わんが、遠回しに次はあのようことはしないでくれと釘を刺されてしもうた。逆にウサミン達獣人には好評でもの凄く感謝された。


 まぁ、どちらの意見も一応は聞いてはおくが、その通りにするかはその時自分で決める。なんせこれほどの女達をむざむざ失いたくは無いからの。


「あっ!?」

「んっ!」


 儂が手を動かし下半身をまさぐると、マーレリバーとアヤルネが小さく声を上げた。イリイリヤが妖しく笑って儂の体を舐め始める。


 儂はアヤルネの唇を存分に貪った後、答えた。


「悪いが今日は気分じゃない。また今度な」

「……分かった我慢する」


 少しだけ頬を膨らませてアヤルネが儂の肩に額をコツンとぶつけてくる。可愛かったので更に頑張って手を動かしたらもっと可愛くなった。


「イリイリア。例の件どうなった?」


 問いつつ、マーレリバーの方の手も頑張って動かす働き者な儂。


「あっ!? んっ、り、リバークロス様……そ、そこは……」


 真っ赤な顔で必死に声を押し殺そうとするマーレリバー。イリイリアはそんな可愛いマーレリバーの頭を撫でながら儂の質問に答える。


「実際に行ったことがある者達の話を聞きましたが、予想通り周囲にこれといった問題はありません。リバークロス様のご注文通り戦略的な価値が極めて低い土地とのこです」

「そうか。ならある程度町が形になれば盾の連中をそこへ移す。建国の宣言は……そうだな、とりあえず二年後くらいを予定する」

「分かりました」

「れ、例の…ハァハァ…ま、魔人国ですか?」


 瞳に涙を浮かべたマーレリバーが会話に入ってきた。


「ああ。魔族に忠誠を誓った三種族を迎え入れる国だ。上手くいけば天族の権威を地に落として、連中の連携を乱せるかもしれない」

「そんなことしなくとも皆殺しにすればいい」


 先ほどまでは可愛らしく鳴いておったのに、もうすっかりいつもの無表情に戻ったアヤルネが物騒なことを言う。いや、物騒と言うよりはこれが基本的な魔族の考え方なんじゃがな。


 しかしそれでは儂が困るんじゃよ。


「創られし三種族を舐めるべきじゃない。ドーワーフの製造能力を初めとした連中の力は侮れない。何よりも直接戦うだけが戦争じゃないのさ」


 そもそも上級魔族ほど三種族の力を軽視する者が多いが、儂は戦いに限らず縁の下の力持ち的な存在を侮るべきではないと考えておる。


 戦争は最強の一人が居れば勝てるほど単純ではないのじゃ。


 実際一人で世界を滅ぼせる者を保有する国家があったとしても、その者が敵と戦っている内に国民が先に死に絶えてしまえば、国としてそれはどうしようもない敗北じゃろう。


 思い出すのは誰も彼も死に絶えたような世界。あの世界を回避し、なおかつ魔族を勝利に導くのが目的ならば儂とマイマザーの利益は完全に一致する。邪魔は……されんはずじゃ。


 というか魔王であるマイマザーに邪魔をされると凄く困る。なんせ調子に乗って千人も助けてしもうたからの。魔人国を建国して自活させない限り、いずれ面倒事が起こるのは目に見えておる。


 ああ、そう考えるとやっぱり千人はやり過ぎたのう。百人くらいでも十分感謝されたじゃろうに。…………いや、マリア達に生きる目的と場所を作るという意味でも魔人国の建国はどのみち必要。


 覚悟を決めろ儂。これだけの力を得たんじゃ。国の一つくらい好きな女の為におっ建ててやろうではないか。


「とはいえ、住める場所が出来ても盾の連中を向こうに送れるのは情報を漏らさないよう魔法具の完成を待ってからになるな。クラヌイを中心とした闇妖精達に動いてもらっているが、そっちはどうなってる?」

「アクエロさんの担当なので詳しくは。ですが数が数ですから、やはりどんなに早くても一年近く掛かようですわ」

「そうか。後でアクエロにも言うが、急がす必要はない。二年後くらいを建国の目処にしたが別に数年遅れようが全然構わん。それよりも質を優先した仕事を頼むとクラヌイに会ったら言っておいてくれ」

「リバークロス様の仰せのとおりに」


 ちなみにアクエロはここにはいない。あの戦いで傷を負ったエイナリンに貸し出しておる。


 天界最強の男が持つ呪法具による傷の治りはやはり遅く、本人は大丈夫と言っておったが、儂が無理矢理アクエロを護衛につけたのじゃ。


 なんせエイナリンにとって魔王城ここは必ずしも安住の地とは言えんからの。エイナリンが弱っていることを良いことに馬鹿な行動に出る魔族がいないとは言えん。


「……それから天族の動きは? 何か新しい情報は入っているか?」

「今のところは大人しいままのようです。向こうはアイギスとエクスマキナ、今まで天族に常勝を約束していた兵器を一度に破壊された訳ですから、当面はこのまま動かないのではないかと」

「確かにな。だがこちらの損失も大きかった。盾の王国の戦いで魔将を失ったのもそうだが、敵陣深く攻め込んだ母さん達の損耗も酷かった。特にエクスマキナの特別個体とやらを一体倒したのは良いが、魔将第一位を討たれたのは大きい」

「今ではリバークロス様が第三位」


 アヤルネがどこか誇らしげに言う。イリイリアも頷いた。


「流石がはリバークロス様です。私もリバークロス様の奴隷(モノ)として誇らしいですわ。ねえ? 貴方もそうでしょう? マーレリバーさん」

「はい。凄いと思います」


 美女三人からの誉め殺し。おやおや、ここは天国かの? 儂は堪らずイリイリアを抱き締め、そのまま互いの位置を変える。


 儂が寝ておった所にイリイリアが収まり、イリイリアの上に覆い被さった儂は、処女雪を思わすその体を存分に味わった。


「あっ!? んっ! ……そ、それとお探しの勇者ですが」

「見つかったか?」

「い、いえ、天領第一等区内に居る所までは掴んだのですが、アイギスを破壊したとはいえ潜入は簡単でなく、また勇者の、んっ!? あ、ああ!? ……ハァハァ……しゅ、周辺は天族が守護してますので、これ以上の調査は犠牲が前提となります。それでもよろしいでしょうか?」

「いや、それならいい。あまり天族を警戒させたくない。引き続き無理の無い範囲でのみ情報を集めておいてくれ。……どのみち必ずあいつは俺の前にやって来るだろうからな」


 それよりも問題はーー


「マーレリバー。ギンガの様子はどうだ?」

「相変わらずです」

「やはり心は簡単には変わらないか」

「ギンガは私と違って仲間思いですから」


 自嘲気味に微笑むマーレリバー。儂はそんなマーレリバーの頬を優しく撫でた。


「お前がどんな女でも、俺はお前が好きだぞ」

「リバークロス様。……ありがとうございます」


 マーレリバーの笑みが輝くと儂も嬉しい。やれやれ、分かってはおったが完全に情が移っておるの。まぁ、あれだけ現実と変わらない『可能性』に触れた後では仕方あるまい。お陰で剣術などの技量も一気に上がったし、強力な力を得た代償として受け入れるかの。


 そこで儂とマーレリバーの話を聞いていたアヤルネがムスッとした表情で言った。


「生意気な人間。もう殺そう」

「……アヤルネ」


 儂は物騒なことをいうアヤルネのあそこを、ああして、こうした。


「んっ!? り、リバークロス……様。それ、……やだ」

「ギンガには手を出すな。これは厳命だ。いいな?」


 身をよじり、なんとか自分の体を守ろうとするアヤルネに儂はさらにああして、こうした。


 アヤルネの小さな体が大きく跳ねる。ベットの端ではーー


「トラウマが、トラウマが蘇るよウサミン」

「ネ、ネコミン大丈夫? 気をしっかり。見ちゃダメ。あれ見ちゃダメな奴だから。悪魔の所業だから」


 などと、ウサミンとネコミンが何やらはしゃいでおる。それにしても悪魔の所業って、ウサミンは何を当たり前のことを言っておるんじゃろうか?


 アヤルネの頬を一粒の涙が伝った。


「わかった。わかったから。……ごめんなさい」

「分かればいい」


 儂はアヤルネのあそこをああして、更にはえ? そ、そんなところまで? をしていたアレを引き抜いた。


「魔人国が出来ればギンガはそこに置いておきますか?」


 儂とアヤルネの行為を見ていたマーレリバーが頬を赤く染めながら聞いてくる。


 正直なところ、それは儂も悩んだ。魔族とあまり関わりの無いところで息子と一緒に余生を過ごさせる。それも良いように思ったのだが、あれほど才能に溢れた親子が残りの人生を大人しく過ごすなんてあるじゃろうか?


 恐らくはどんな選択をしようがそこには相応の危険がつきまとう。ならばーー


「いや、ギンガは態度を改めさせた後、俺の眷属として働いて貰う」

「では…」

「ああ。体だけではなく、ギンガの精神も完全に魔族へと引き入れる」


 正直それがギンガのためになるかは分からん。しかし謝りはせんぞ。せいぜい悪魔に目をつけられた己の不幸を嘆け、勇者ギンガよ。


 儂は複雑な思いを打ち消すかのように強く、激しく、五人の美女を夜通し抱いた。


「き、綺麗なお花畑が見えるよウサミン……ガクリ」

「ネ、ネコミーン」


 訂正。儂は夜通し三人の美女を抱いた。

 

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