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もしものお話

「あ、目を開けたわ」


 銀色の髪を揺らした女性が茶目っ気溢れる笑みを浮かべて儂を見ておる。


「……ここは? 儂は何を?」


 ぼんやりとした頭で問いかける。なんじゃろうか? 舌が上手く回らんのじゃが。女性は何故か質問に答えず目を見開いておるし。どうやら驚愕しておるようじゃが、はて? 一体何に驚いておるんじゃろうか?


「凄い! もう喋れるのね」


 もう? それは一体どういう意味なのじゃろうか。儂は思わず首を傾げた。すると……なんじゃ!? メッチャ動きにくいんじゃが。


 これは可笑しいと周囲を見回してみて気が付いた。目の前の女性がやけに大きいことに。いや儂が小さくなっておることに。


 なんじゃこれは? 赤子? 何故儂が赤子に………あ!! そこで思い出す。転生の秘術。魔術師として更なる高みを目指す為に生み出した儂の人生の集大成とも言うべき魔術。


 まさかガチで成功するとは!? ん? ま、まてよ。と、言うことは……。儂は恐る恐る女性にもう一度視線を向ける。

 

 メッチャ見ておる。 


 あ、あかんやってもうた。生まれたばかりの赤子が普通に質問してきたら、そりゃビビる。下手すれば化け物扱いで捨てられる可能性すらあるじゃろう。いくら儂でもこの貧弱な体で放り捨てられたら死へのカウントダウン待ったなしじゃ。


 ここは何としても誤魔化さなければ。


「凄いな君。もう喋れるんだ。きっと私の血が良かったのね」


 女性は嬉しそうに儂の頬をツンツンする。何じゃ? 意外に好意的な反応? いや油断はするべきではないの。


「ほらほら、お母さんって言ってみて。お・か・あ・さ・ん」

「お……」

「お?」


 期待に満ちた銀の瞳が儂をまじまじと見つめてくる。それに儂は…、儂は…、


「おぎゃー」

「わざとらしいわ!」


 家中に響き渡る女性のツッコミ。その邪気のない声に儂は、あ、なんか大丈夫そうじゃな。と安心するのじゃった。


 実際女性は儂が喋っても気味悪がることもなく、むしろ「君はきっととても強い勇者になるんでしょうね」と嬉しそうに笑いおった。


 どうも今世のマイマザーは儂が早熟なのは特殊なスキルが発動しているからだと思っているらしい。そして生まれた直後にスキルを発動できるのは勇者だからに違いないと結論付けておるようじゃ。


 まぁ、実際儂は勇者に転生しておるはずなので、その結論でまったく問題はない。むしろその方が色々と都合が良いので積極的にそう思わせることにする。


 溢れる好奇心を抑えきれず、何かやらかしてしまう度に「僕は勇者ですから」で通した。


 面白がられることはあっても不気味がられることはなく、こうして儂は当初の目論見通り勇者として転生することに成功したのじゃった。


 この時の儂は、これからどのような魔術(ちから)を手にできるのか、そして魔法が当たり前のこの世界はどのような文明を築いておるのか、そのことに想いを馳せて、ただただ本当の少年のように胸を踊らせておった。


 そして月日は流れーー


「クロス。おい、クロス。ちょっと待てよ」


 盾の王国から少しばかり離れた森の中に存在する村。そこが儂のこの世界での故郷じゃ。どうも元々は盾の王国の兵士に野外での戦闘や夜営の仕方を学ばす訓練所だったようなのじゃが、今世の父親であり兵を鍛える教官でもある今世のマイファーザーが、移動が面倒という理由で住み着き始め、「あ、じゃあ俺も」と部下達が続いたことで村ができたらしい。


 最初に聞いた時はそんなので良いのか盾の王国。と思ったものじゃが、今ではーー


「体を鍛えるのにはちょうど良い環境なんだよね」


 数は多くないとは言え森には魔物が潜み実戦には事欠かんし、ただ散策するだけでも自然のスケールが大きなこの世界の森は立派な修行場となる。油断すればその壮大な生命力は容易に此方を飲み込みこんでくるじゃろうて。


 そんな魔術師としてもそして好奇心溢れる子供? としても大変素晴らしい環境下で、儂は幼少の頃から鍛錬に励んでおった。


 今は崖登りを堪能し、そこから新たな故郷を見下ろしておる。遠目にはうっすらと盾の王国が見えた。


「おおー。世界に満ちる魔力のなんと濃いことか。この世界のなんと美しいことか」


 眼下に広がるどこまでも深い緑の海。魔力に満ちた空気がとても美味い。なんだかとても開放的な気分になるの。


「な、何、独り言を……ハァハァ…言ってるんだよ。ハァハァ。お、俺を無視するなよな」


 そう言って儂の上って来た道から姿を表したのは銀色の髪の少年……ではなく、幼馴染みの少女ギンガ・アイタス。


 女のくせに男のような言葉使いや格好をしているのはギンガの両親の教育方針じゃ。

 なんでもこんな時代に勇者として生まれた以上、女としての甘さは不要と男のように育てておるらしい。


 厳しいような気もするのじゃが、一理ないこともない上に他人の家の教育方針なので、よほど酷くならない限りは一先ず静観することにしたんじゃが、教育の成果が出てきておるのか、こやつ年々逞しくなっていくんじゃよな。


 儂の隣に腰を下ろして共に故郷を見下ろすギンガ。しばらく黙っておるとギンガがふと思い出したように言った。


「そういえば十歳になったら俺達教会に預けられるんだよな」

「そのようだね」


 この世界で勇者と呼ばれる存在は上級魔族という強力無比な存在に対抗できる貴重な戦力。そしてそれを管理するのが教会と呼ばれる組織なのじゃ。


 儂とギンガは先日村を訪れた聖女によって正式に勇者と認定された。幼子が勇者と認定された場合、十歳になると教会に預けられ様々な教育を受けることになっているらしい。


 儂としては最先端の教育を受けられるなら何処だろうが喜んでいくつもりじゃが、まだ幼いギンガは少しだけ寂しそうじゃった。


「俺さ、実は聖女ってのに少し憧れ抱いてたんだけど、なんかイメージと違った」


 胸に生じた気持ちを誤魔化そうとするかのように、わざと明るい声を出すギンガ。儂はそれに乗ることにした。


「中々ヤンチャな子だったよね」


 儂等が勇者がどうか調べに来た聖女は儂等と同い年の、つまりは子供じゃった。連れてきたのはやけにムキムキの僧侶でどうやら聖女の父親らしい。


 一応力さえあるのなら聖女に年類は関係ないとされているらしいのじゃが、やはり齢を重ねて経験を積んでいる聖女と子供の聖女とでは発言力が違う。それは認定された時の対応の早さ(必要な援助の申請など)にも繋がり、それは危険が溢れるこの世界では中々重要なことなのじゃ。にも関わらず子供の聖女が送られてきたというのはーー


「信憑性が薄いと思われたんだろうね」

「俺達は練習台かよ」


 勇者が自分の身内から出ればその家族は教会から様々な援助を受けられるようになる。これは世界を救う為に戦いを強いることへのせめてもの恩返しということらしいのじゃが、その援助を目的として勇者を自称する者や純粋に優秀な子供を勇者と勘違いしてしまう親などが毎年少なくない数出て、聖女はいつも人手不足らしい。


「仕方ないよ。小さな村に同時に勇者が二人。そりゃ、田舎者が少し優秀な自分の子供を勇者だと勘違いしたと思われても仕方ないさ」

「田舎って、ここは魔族との戦いの最前線だぜ?」


 魔族との戦争が小康状態に入っておよそ百年。天族達が済む天領第0等区に最も近い第一等区の国とは違い、盾の王国があるのは魔族領に最も近い第四等区。その中でも魔族領と天族領を分ける境界線上に位置するという、平穏とは程遠い立地ぶり。


 実際に盾の王国や儂の故郷がある森を抜けて天族領内に侵入しようとする魔物や魔族は少なくない。最近では盾の王国の要請でそれらの相手はマイファーザー達が対応するようになっておる。お陰で小さな村が徐々に発展してもうすぐ町になりそうなほどじゃ。


「まぁ、魔物が出たらギンガは下がっていてよ」

「何だよ。自分の方が強いって言いたいのか?」

「それは勿論」

  

 だって儂三百歳で、元現代最強の魔術師で、今は勇者。いかに同じ勇者とは言えリアル幼女に負けるほど弱くはない。


 つまり儂の方が強いのはごく当たり前のことなのじゃが、儂の事情を知らんギンガからすれば自分が侮られているような不快感を覚えるのじゃろうな。怖い顔でこちらを睨んでおる。


 ホッホッホ。対抗心も成長するための大切な要素。精々強く成長することじゃな。


 儂が笑いかけると、ギンガは頬を膨らませてそっぽを向いた。


「ふん。待ってろよ。直ぐに追い付いてやる」

「楽しみにしているよ」


 彼我の力量差を理解して、それでも腐らずに努力しようとする。こういう真っ直ぐなのはこの幼馴染みの良いところじゃな。儂も出来るだけ修行を手伝ってやることにするかの。


 そうして少々変わり者の両親と教え甲斐のある幼馴染(でし)みと一緒に儂は新たな人生を存分に謳歌するのじゃった。


 しかしある日、事件が起こった。


「魔物の大群だぁー!!」


 十歳の誕生日も間近と言うところで村が突如魔物の大群に襲われたのじゃ。


「いい? あなた達はここに隠れていなさい」


 マイマザーがいつになく厳しい声音で儂とギンガに命じた。その身を冒険者時代の甲冑に身を包んだマイマザーは、一児の母とは思えんほど覇気に満ち満ちておった。


 これならきっと大丈夫。そう思いたかったのじゃが……多い。既に十にも及ぶスキルを発現しておる儂には村に向かってくる魔物の数が大まかに分かった。


 …………無理じゃ。今のこの村の戦力で対抗できる数ではない。この時儂は覚悟を決めた。


「待って母さん。ここは僕に任せて」


 出来れば手足が伸びきるまでは無駄に目立つつもりはなかったんじゃが、どうやらそんなことを気にしている場合でもないようじゃ。


「何を言ってるのかな? クロス君」


 マイマザーが怒りすら感じさせる厳しい目で儂を睨んでくる。儂はその視線を正面から受け止めた。


「僕が魔物を倒すよ」

「確かに君は年のわりには強いよ。このままいけば勇者順列第一位にもなれるかもしれない。でもね、今の君はどうしようもなく子供なんだよ。そのことを自覚しなさい」

「そうだぞクロス。森で魔物を倒すのとは訳が違うんだ」

「魔物を倒す?」


 マイマザーが怪訝な顔をするが今は説明をしている時間が惜しい。儂は今まで隠していた本当の魔力を解き放った。


 現代で修練に修練を重ね獲得した魔力の練り方と、勇者という人類最高の肉体。さらに望むスキルを獲得できるという勇者ならではの特異性。それらの力を自分の中で統合させた結果獲得できる常識外れの魔力(ちから)


 幼い体から放たれるその『力』に、その場に居る誰もが息を呑んだ


「う、嘘!? なにこの魔力。……うわー。お母さん自信なくすわー。メッチャショックだわー。格好つけて守ろうとした息子の方が強いなんて親の面目丸潰れですわ、はい」


 武器を放り投げて鬱モードに入ったマイマザーが部屋の隅で膝を抱える。儂は何やらブツブツ言っておるマイマザーの姿に、後のフォローが大変そうだなと少し挫けそうになるが、今はそんな場合ではないと切り替える。


「本気なんだな?」


 マイファーザーはあまり動じた様子はない。ひょっとすれば薄々儂の力に気付いていたのかもしれんの。まぁいくら遊びを装っていたとは言え、あれだけ日常的に鍛練を行っていれば悟られても仕方ないが。


「勿論。父さん達はサポートをお願い。数が多いから打ちもらしが結構出ると思うんだ。群からはぐれたのを狩って欲しい」

「ほ、本気なのか!?」


 ギンガが不安そうに儂の服の袖を引っ張る。ホッホッホ。普段は男勝りのこやつもこう言うところは年相応で可愛いのう。


「安心して。『俺』は負けない」


 ギンガの頭を一度優しくなで、儂は意識を切り替える。


 そうして戦いが始まった。魔物の数も質も当初想定してた以上で、こちらにも少なくない損害が出た。儂もスキルを新たに五つ発現させなければ危なかった。自惚れではなく儂が居なければ故郷の村は滅んでおったじゃろう。


 当然まだ十になるかどうかの子供がそんな大活躍をすれば噂にならんはずがない。幼い体で無理をした反動で儂が一ヶ月にも及ぶ昏睡から目覚めた時、目の前には青い髪と瞳のエルフがおった。


「誰?」


 胸の発育は今ひとつじゃが、なかなかの美人さんじゃ。窓から入る陽の光が幻想的な演出を青いエルフへと施していた。儂は思わずその美しさに見とれた。


 エルフが手元の本から顔を上げる。視線が合う。思わず心臓が跳ねた。


「マーレ・エルシア。それが私の名前」


 そしてここから儂の人生は大きく動き出す。まず教会に行く前に盾の王国の王に呼び出された。そして教会での教育を終えればギンガ共々盾の王国の重鎮とし迎え入れる準備があると言われたのじゃが、二つ返事で了承したギンガとは違い、世界を見て回りたいと思っておった儂は考えておきますとだけ答えた。


 実際は考えるつもりもなく将来は自由に生きるつもりだったのじゃが、さすがは王。儂のそんな思惑を察したのか、何と権力を使って無理矢理儂を第一王女マリア・シュバルツの婚約者にしおった。


 どうも王はここ最近の魔族の動きに不審を覚えておるようで、近々大規模な戦いが起こるのではと警戒しておるようじゃ。


 実際各地で魔族の動きが活発化しているという報告も上がっておるとのことらしい。

 

 そんな情勢下なのじゃから、まだ十にもなっていない年齢で十を超えるスキルを発動し、子供ではあり得ない戦闘技術を駆使して魔物の大群を退けた儂を娘を使ってでも引き留めようとするのは分からんでもない。……ないのじゃが、第一王女は儂と同い年、つまりは幼女じゃ。


「ハッ、ないわ~!」


 という気持ちをソフトに伝えたのじゃが、当の第一王女が何故か乗り気で。


「貴方が教育を終えて戻ってくるときには、私は立派なレディーになってるもん。その時にもう一度考えてよね!」


 などと十歳にしては中々ませたことを言ってきおった。いや、意味分かって言っておるんじゃろうか? なんだか面倒になった儂は、


「考えておくけど、僕子供だから忘れちゃうかもしれない」


 とか適当なことを言って逃げた。そしたら次の日には儂が第一王女と婚約したことは国中に告知されておった。おのれ権力者。と歯がみしつつも、王になってハーレムを作るのも楽しいかもしれないなと、ちょっぴり迷いつつも儂はギンガと共に教会へと赴いた。


 そこで教師役の一人である筋肉僧侶とその子供のやんちゃ聖女、そして賢者として魔法を教えに来たマーレと再会する。


 他にも友との出会いがあった。


「君が『天子』クロス・シャインか」


 子供ながらに凄腕の剣技を持って魔物を屠り、『剣聖』とか呼ばれておるらしい同い年の少年クロード・エイノン。


 『天子』クロス・シャイン。『黒き支配者』ギンガ・アイタス。『剣聖』クロード・エイノン。


 後に絶望の時代にあって天が人々を守るために遣わした特別な勇者、三天勇と呼ばれる儂等はこうして出合い、聖女キリカと共に五年間同じ釜の飯を食った。


 そこでシスタークラリネットに何度となく怒鳴られながらも様々な武勇伝を残した儂らは、やがて教会での教育を終え、盾の王国に戻ることに。


 戻るのは故郷が盾の王国の近くにある儂とギンガとマーレ。そして何故かついてくる剣聖クロードと聖女キリカ。


 見違えるように綺麗になった第一王女を交え、故郷に戻った儂らは存分に語り合い、それから十年以上も同じ時を過ごすことになる。


 その間に色々なことがあった。


 すっかりと女らしい体つきになりどうやら儂に惚れておるらしいギンガをこれ幸いと抱いたら、どうもギンガに惚れていたらしいクロードとマジバトルに発展したり。


 父親の影響で筋肉大好き女に成長したキリカが自慢の腹筋を見せつけてくる度にクロードと一緒にお触りしていたら、二人してギンガにボコボコにされたり。


 天界が誇る三大兵器。その一つであるアイギスを破ろうと画策する魔族の陰謀を突き止め、名の知れた上級魔族と死闘を繰り広げ、ついには撃破。天族ですら成し得なかった偉業は瞬く間に各国へと広がっていき、その結果三天勇と称えられることになったり。


 そしてある意味一番驚いた出来事。なんと前の世界での弟子が儂の魔術を真似てこの世界まで付いて来おったのじゃ。


 弟子との再会は、儂らに続き早熟な勇者が現れたので少し見てやって欲しいと教会のお偉いさんに頼まれたのが切っ掛けじゃった。


 始めは儂もクロードも面倒臭がって断っておったのじゃが、ギンガとマーレが勝手に了承。儂とクロードは付き添いの形で渋々ついていったのじゃがーー


「マイスター。会いたかった。会いたかったよぉおお!」


 突然少女に泣きながら抱きつかれる儂を、ギンガもクロードもそれはそれは生暖かい瞳で見ておった。マーレは逆に物凄く冷たい目で見ておったの。


 そんなこんなで再会を果たした儂と弟子(今世ではカエラと言うらしい)は互いの近況をそれこそ夜通し話し合った。


 そして一先ず教会での教育期間が終われば儂のパーティーに友達もろとも迎え入れるという約束を半ば強制的にさせられ、修行の終わりと共にカエラとは一旦別れた。


 やたらと活発になりつつある魔族の動きが気にはなるが、他は概ね順風満帆。名声が広がり各地に恋人もできた。もっと強い権力を望む貴族の女。自分の居場所に悩む半人半魔の商人。人に絶望した元暗殺者。


 誰もが皆、勇者としての儂に下心で近付いてきた。儂としてはそういう分かりやすい関係の方が好みだったのじゃが、ギンガには浮気するならもっとましな奴としろよと叩かれるはめに。

 

 マーレは呆れてため息を付くだけ。実はマーレとは何回か良い雰囲気になったこともあったのじゃが、その度に魔法の修行に専念したいのでと断られ続けておる。


 パーティーも大きくなり既にギルドと呼ばれる規模になった。三天勇が率いるギルド。各国がこぞってギルドの支援を申し出た。


 このままギルドを大きくして俺達が人類を勝利に導こう。


 ある飲みの席でクロードがらしくもなく大真面目な顔でそんなことを言いおった。


 ギルドの皆はそれぞれが笑顔で肯定的な返事を返した。誰もが将来は明るいと、どこか楽観していた。魔族が何かして来ても俺達がなんとかしてやるという自惚れと紙一重の自信があった。天族もいる。この異種族間戦争の果てに勝っているのが自分達であることを、この時誰もが疑っていなかった。


 そんな時じゃ。儂等が運命の日を迎えたのは。


 ある日、突如として魔王軍が百年にも及ぶ長い沈黙を破り、その牙を剥き出しにしたのじゃ。その結果訪れる最悪の結果。


 盾の王国の崩壊。


 そしてここから始まる本当の異種族間戦争。世界は星の覇者を求め血と戦火に飲み込まれていくことになる。


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