五魔の軍団長
「まったくエイナリンの奴め。アクエロだけじゃなくて俺の立場も少しは考えろよな」
儂は怒りのあまり狂戦士となったエイナリンの部下達を撒いた後、アクエロ達と合流するために魔王城の下層にある練兵場を目指していた。
しかし弱った。第二王女じゃがどうすれば良いじゃろうか?
「……もういっそこのまま放っておくか?」
口に出したそれは中々に良いアイディアのように思えた。
そもそも別に王妃との約束を律儀に守る必要はないんじゃよな。第二王女も無事だったし、それを教えるだけで良いのではなかろうか?
これから先のことを考えれば王妃などよりもエイナリンとの関係にこそ気を配るべきじゃろう。
「だがなー」
あそこまでさせておいて第二王女返すのヤッパ止めた。というのは、それこそ悪魔の所業ではなかろうか。……いや、確かに儂悪魔じゃけど、そういう種族的な話ではなくね。
「……はぁ。…まぁいい。やるだけやるか」
正直無駄な労力のような気もしないでもないが、猫や犬ではないのじゃ。情に流されただけとはいえ助けた以上最後まで面倒を見るしかあるまい。
石ころを黄金に。変化は魔術の基礎にして奥義。これも修行と思えば良いか。それに今は頭の痛い者達でもその内何かに使えるかもしれんしの。
じゃがそうは言っても儂の言葉ではエイナリンが第二王女を返す可能性はかなり低いじゃろうな。ではどうするか? 考えておると目的の場所へと辿り着いた。
儂は躊躇うことなく五千にも及ぶ魔族が居並ぶ練兵場へと足を踏み入れる。すると視線の嵐が降り注ぐ雨のように儂の体をこれでもかと叩いた。若い頃なら多少動揺したかもしれん量と質じゃが、今さらこの程度で尻込みする程若くはない。
儂は自身に注がれる注目の一切を無視して真っ直ぐにアクエロへと近付いた。そして開口一番、
「というわけでアクエロ、後はお前に任せた」
そう言った。
「お待ちしておりましたリバークロス様。任せるとはエイナリンのことでよろしいでしょうか?」
アクエロは余所行きの態度で儂に対して恭しく頭を下げる。自分で言っておいて何じゃが、あれだけで良く分かったの。
「そうだ。盾の国の王妃がいただろう? その娘をエイナリンが気に入ってな。王妃に第二王女を返そうとしないから王妃の方を向かわせようと思う。ただ俺が言うとあいつのことだから素直に聞くか分からない。だからお前が行って頼んできてくれ」
「畏まりました。王妃が何時でも子供と面会できるように取り計らえばよろしいでしょうか?」
「ああ。ついでに本人が望むのならエイナリンの階層への滞在もな。分かっていると思うが身の安全は保証しろ。従者…ではなく見張りか? としてフルウを好きに使って良い。これは有益な情報をもたらした王妃に対する俺からの褒美だ。他の者にもそう言って徹底させろ。いいな?」
狭い範囲とはいえ魔王城を自由に行動させるのは多少問題じゃが、常にフルウをつけ、褒美という形をとっておけば文句も出にくいじゃろう。
その辺りのことも儂はしっかりとアクエロに言い含める。
「畏まりました。では行って参ります」
よし。これで約束は果たしたの。それにしても今思ったんじゃが、儂はアクエロに命令できて、アクエロはエイナリンに頼みごとができて、エイナリンは儂を物理的に脅せるという、気付けば何だか奇妙な三角関係が出来上がっとるの。
「……三角関係か」
口にすると少し変な気分になってくる。脳裏にボタンのシャツをはずしたエイナリンの艶やかな姿が浮かんだ。輝くような白い肌。濡れているかのような唇。そしてーー
「リバークロス様」
「ふぁい!?」
心臓が口から飛び出すかと思うたは。なんか知らんがメッチャ恥ずいんじゃが。慌てて振り返るとそこにはサイエニアスがポカンとした表情で儂を見ておった。
「あ、……も、申し訳ありません。お考えの邪魔をしてしまったでしょうか?」
「あ、いや、大丈夫だ。すまん。少しぼうっとしていた。それで、何だ?」
「仕事で席をはずしていた軍団長達が戻ってきました。挨拶されますか?」
「そうだな、集めてくれ」
「はい。各軍団長、リバークロス様がお呼びだ。集合せよ!」
儂の返事を聞いてサイエニアスが念話を併用した良く通る声で軍団長達に呼びかける。
「ガハハ。お主が噂の麒麟児、リバークロス殿か。お初にお目にかかる。俺は巨人族のデカラウラスと言うものだ。魔王様からリバークロス殿のサポートをしてくれと頼まれてな。これでも結構長く生きておる。何か分からんことや困ったことがあれば迷わず俺に聞いてくれ」
まず初めにやって来たのは二メートル以上の長身に筋肉でふくれあがった体の人間年齢で言うところの三十代後半から四十代前半といった感じの男じゃった。ガタイの良さだけで言えば解体場で戦った魔将よりもいいの。まぁ体が大きいイコール強いというわけじゃないんじゃがな。
次にやって来たのがメガネをかけた三つ編みの女性じゃった。
「吸血鬼族のウタノリアと申します。リバークロス様の噂はかねがね。我等牙の姫君カーサアンユウ様との婚約、心よりお祝い申し上げます。リバークロス様とカーサアンユウ様の為、身命を賭す所存ですので、存分にこの身をお使い潰しください」
ふむ。魔将になりはしたものの儂は若いので侮ってくる者も必ず出てくると覚悟しておったが、この二人とは上手くやれそうじゃな。
「そうか。二魔ともよろしく頼む」
「ガハハ。任せい。任せい。」
「ハッ。必ずやお役に立って御覧にいれます」
自身の厚い胸板を叩くデカラウラスと跪いて頭を垂れるウタノリア。
サイエニアスが言った。
「リバークロス様、この二魔はどちらも六百年の時を重ねた経験豊富な魔族で、これから魔将であるリバークロス様直属の配下となります。それで軍団長統轄をデカラウラスにその補佐をウタノリアにさせるのがよろしいかと具申するのですが如何でしょうか」
軍団長は万の魔族を束ねる資格を持つもので、魔将は自分独自の兵を持っていなければ、基本的にこの軍団長に命じることで軍を動かすことができる。ちなみに軍団長は万の兵を束ねることは許されているが、マイマザーや魔将の命令なしに軍を動かすことは許されていない。これを破れば最悪死刑となる。
「おう。俺でいいのなら、やらせてもらうぜ。と言いたい所だが、あっちじゃなくていいのか?」
そう言ってデカラウラスがその太い指で指したのは、軍服に軍帽というどこかでよく見た格好の女性。彼女の紹介は必要なかった。何故なら儂は彼女を知っておるからじゃ。
「シャールアクセリーナ。やはりお前も来ていたか」
シャールアクセリーナの後ろには漆黒の鎧に身を包んだ九人の悪魔が付き従っておった。シャールアクセリーナを含めた十人全員がそこいらの魔族とは比較にもならない力を身に纏っていた。
「ハッ! もちろんであります。我々はリバークロス様の剣。どこへなりともお供いたします」
そう言って敬礼するシャールアクセリーナはシャールエルナールの妹でもあり(ただし父親は違い、年もかなり離れているらしい)元々十万の魔族を率いることを許された軍団長でもある。
シャールエルナールの長い黒髪に対してシャールアクセリーナは肩に届くかどうかのショートヘアー。着けている魔法陣入りの手袋もシャールエルナールの白とは正反対の黒。ただ身に纏う雰囲気はシャールエルナールにとても良く似た鋭さがあった。お尻の辺りではやはり悪魔の尻尾が揺れていた。
魔将就任のお祝いを各種族からもらった儂じゃが、当然同じ種族である悪魔族からも貰った。というか悪魔族が一番凄かった。上級魔族を十人と千の儂専用の部下。さらに魔王城の八十階を儂と儂の部下専用の階層へと改築したのじゃ。他にも魔法具や魔力石を大量に貰い、悪魔族の贈り物だけで一財産出来てしもうた。向こうの世界でも思うたが、本当に財というのはある所にはあるもんじゃよな。
ちなみに色狂いと呼ばれるようになった儂に気を利かせたのかは知らんが十人の上級悪魔は全員女だった。
儂は彼女等をワルキューレにちなんでアクキューレ部隊と名付け、儂に与えられた千の悪魔の管理を任せることにした。
サイエニアスを筆頭としたハーレムメンバーが儂を守る盾とするなら、シャールアクセリーナを初めとしたアクキューレのメンバーは儂の矛。まだまだ周囲から与えられただけの力とはいえ、魔将を名乗るに相応しいだけの力が着実に儂の手元に揃いつつあった。
儂はデカラウラスの問いに答える。
「シャールアクセリーナ達アクキューレ部隊は俺専用の特殊部として動いて貰うつもりだ。通常部隊を纏める長は別に居た方が良いだろう?」
「それはいいが、いざという時の指揮権はどちらにするんだ? そこを決めておかないと面倒なことになるぞ?」
「ん? そうだな」
言いたいことは分かるんじゃが、まだシャールアクセリーナとの付き合いも浅いのに、今日あったばかりのデカラウラスとどちらに指揮を任せた方が良いかなんて判断できるはずがないんじゃよな。……ふむ。こういうときは当人に聞くに限るの。
「……シャールアクセリーナ。デカラウラスを知っているか?」
「ハッ。存じております」
「評価は?」
本人の前で聞くのもあれじゃが、性格的にシャールアクセリーナはあまりそういうことを気にしなさそうじゃ。
「ハッ。とても優秀な男かと思います」
思った通り、嘘が一切無い実直な言葉がすぐに返ってきた。
「そうか。なら俺の命令がないときはデカラウラスの下につける。いいな」
「ハッ! 問題ありません」
「ガハハ。俺としては嬉しいが良いのか? リバークロス殿も悪魔族。やはり同じ悪魔を上に立たせておきたいのでは?」
「誰が軍団長をまとめようが俺が頭ということに代わりはない。それに俺達は魔王様の下に集った同じ魔族だ。重要なのは魔王様の命令を遂行することであって誰が上に立つかではない。それともお前には魔王様の期待に応える以上に腐心する何かでもあるのか?」
ひたすらにマイマザーをヨイショしてみた儂の言葉にデカラウラスは一瞬だけ呆気にとられたような顔をして、次に腹を抱えて笑い出した。
「ガハハ。これは一本取られた。流石はあの魔王様の子だ。その年で大したものじゃ。てっきり色と力に溺れた若造かと思えば、これは重畳。重畳」
大笑いをしながら儂の肩を叩くデカラウラス。うーむ。敬意を持たれているのかいないのか、いまいち分からんのう。だがまぁ逆の立場なら自分の十分の一も生きていないような小僧の命令で戦場に出るなんて、不満を通り越して不安過ぎる。それでもこうして好意的に接してくれておるのじゃから、それだけでも良しとするかの。
何よりつまらんことで部下と衝突しても良いことなどないしの。出来るなら仲良くやりたいものじゃ。
場を見計らって、サイエニアスがまとめに入る。
「軍団長統括デカラウラス。軍団長補佐ウタノリア。そしてリバークロス様直属特殊部隊アクキューレ隊長シャールアクセリーナ。この三魔が魔将リバークロス様を支える大きな三柱となってくれるでしょう」
サイエニアスの話の最中、儂のハーレムメンバーであり有角鬼族のマーロナライアが眠そうなアヤルネを連れてやって来た。マーロナライアは儂に頭を下げるとアヤルネを抱えたままサイエニアスの後ろにつく。
儂は気になったことを聞いた。
「軍団長は五魔だろ? 後の二魔はどうした」
「他の二魔も優秀ですが、若くまだまだ発展途上の身です。……二魔とも早く来い」
どうも一番遠くにいたせいで駆けつけるのが遅れようじゃな。残りの軍団長である二魔がようやくやって来た。
「恨んで上等。妬んでなんぼ。我輩こそアンデット族の王子。カクカクカクロウ、ここに見参」
現れたのは王冠に豪華なマントを羽織った骨じゃった。ふむ。スケルトンか。魔力の感じからすると儂と殆ど年齢は変わらんの。
「リバークロスだ。よろしく頼む」
「カラカラ。カラカラ。噂は良く聞いていますよ。あの伝説の堕天使を従え、シャールエルナール様やエルディオン様という途方もない強者と戦いその実力を認められる。そしてついには支配者の儀で魔将第十一位を撃破。実力でその座を奪う。同年代でここまでの偉業を見せられれば、さすがの我輩も妬めな……な、な、な……。ああ。羨ましい」
スケルトンもといカクカクカクロウはいきなり膝をついたかと思えば、地面を思いっきり叩き出した。
「何故、何故、賞賛されるのが我輩ではないのか? 我輩だってこの年で『肉纏い』を使える天才なのに。我輩スゲー奴でさらに我慢強くて骨のある奴なのに。むしろ骨しかないのに。ああ、何故? 何故なのだ?」
ドン。ドン。ドンと何度も何度も地面を殴打するカクカクカクロウ。……何か少し面倒そうなのが来たの。正直あまり関わりたくないのじゃが、立場上そう言うわけにもいかんよな。
「『肉纏い』? それって確か、俺達悪魔のいうところの角や翼と似たようなものだったか」
ひとまず会話のキャッチボールを試みる儂。さあ反応はいかに?
「カラカラ。カラカラ。その通り。見よ我輩達アンデット族が本気。あ~。this is the 『肉纏~い』」
ボディービルダーがやるようなポージングをとったカクカクカクロウの全身の骨から肉が溢れてくる。というかいきなりして見せるんかい。案外ノリの良いやつじゃな。それにしてもカラカラというあの笑い声、骨と骨をぶつけただけでよくあんな音が出せるの。
そんなどうでも良いことに儂が感心しておると、その間にカクカクカクロウの全身に肉が行き渡り、種族スケルトンが種族美男子へとクラスチェンジしおった。ちなみに王冠とマントしか身につけていなかったので当然のようにマッパである。
「どうだ? 我輩凄かろう?」
「……まぁまぁかな」
儂はある一点を凝視しながら余裕のコメントをするが内心では冷や汗ものじゃった。ふう。危ない。危ない。前世の体だったら完敗じゃったな。マイマザー、そしてマイファーザー。素敵な体をありがとう。不肖リバークロス、一生付いて行きます。
「最後は俺だな」
心の中でマイファーザーとマイマザーに感謝を述べておると、最後の軍団長が儂の下へとやって来た。デカラウラスと同じくらいの高身長。ガタイも同じくらい良く、厳つい顔の坊主頭の男じゃった。
視た感じこやつも儂等と同じくらい若いの。となるとーー
「俺は巨人族が王の子、ケンタロウス。リバークロス。お前の噂は俺の耳にも届いている。お前のような男と共に戦えることを光栄に思う。互いに切磋琢磨し共に異種族から魔族を守ろう」
そう言って手を伸ばしてくるケンタロウス。何じゃ? 握手かの? どっかの猥褻スケルトンと比べるとやけに好青年な若者じゃな。そしてやはり王の子か。まぁ儂が言うことではないがその年で軍団長になっておるんじゃから予想はついたがの。
「ああ。よろしくな」
儂は伸ばされた手を取った。ガシリとした手応え。殴り合うと中々手強そうじゃな。
「それからハッキリさせておきたい。俺は親の決めたこととは関係なくエグリナラシアに惚れている。エグリナラシアがお前を好いているのは良く知っているし、お前達の邪魔を決してしないと約束しよう。だから俺がエグリナラシアと付き合うのを認めてはくれないか?」
「ん?」
はて? こやつ唐突に何を言っておるのじゃろうか? エグリナラシア? 何故ここでマイシスターであり、儂のエンジェルさんが出てくるのじゃろうか?
分からん。分からんから聞いてみよう。
「なんでここで姉さんが出てくるんだ?」
「知らないのか? 俺はエグリナラシアの婚約者だ」
「コンニャクシャ? おいしそうな食べ物だな。どんな味がするんだ?」
「いや、コンニャクではなく婚約だ。お前にもカーサアンユウがいるだろう。それと同じだ」
ああ、なるほどの。その婚約か。てっきりコンニャクかと。じゃが確かに不思議はないのう。そうか。そうか。マイシスターと婚約か。ハハ。最高のジョークじゃな、それ。ハハ。ハハ。ハ…………ブチコロシテヤロウカ?
「はっ!? いやいや。す、少し待て」
危うく魔王の血に飲まれかけた儂は慌ててケンタロウスとか言うクソガ……小僧から距離を取る。そんな儂に小僧はーー
「お前の噂は聞いている。女に目がなく独占欲が強いと。そんなお前が俺の存在を快く思わないのは理解できる。しかし俺は本気なんだ。本気で彼女に、エグリナラシアに惚れた。頼む。お前達の都合を優先してくれて構わないので俺にも彼女と付き合うチャンスをくれ」
坊主頭をこれでもかと下げて頼み込んで来た。なるほどのう。どうやら遊びでなく真剣なようじゃな。どうも儂の噂のせいで妙な勘違いをしておるようじゃが、儂は元々マイシスターとそんな関係になるつもりは毛頭ないのじゃから、ここで儂が口を出すのもお門違いじゃろう。
よし。大人になるんじゃ儂。伊達に三百年も生きていないと言うところ見せてやるんじゃ。姉に恋人ができる? 頑張るんじゃ儂。 良いことではないか。キレるんじゃないぞ儂。やはりマイシスターにも青春を謳歌して欲しいからの。理性を、理性を保つんじゃ儂。
深呼吸。深呼吸を繰り返えすんじゃ。ヒ、ヒ、フー。ヒ、ヒ、フー。ん? そう言えば……。
「一つ聞くが、確か巨人族と言うのは体の大きさを自由に変化できるんだったな」
「そうだ。上限はあるがその範囲内なら自由自在だ。こんな風にな」
小僧の肘から上が胴体ほども大きくなった。ほう。ほう。なるほどのう。
「それは体のどの部分でも出来るのか?」
「可能だ」
「ほ、ほう。ほう。なるほどのう」
つまりあれかの? わ、儂の、儂の、可愛いマイシスターに。わ、儂のエンジェルに。伸縮自在のあれをああしてこうして、それで、それで、あまつさえ、あ、あんな、あんなことを?
「この外道がぁーー!!」
俺はケンタロウスとか言うクソガキの股間を蹴り上げた。部下とは仲良く? ハッ! 知ったことではないな。
「お、おお!? おい、ウタノリアよ。会ったばかりの上司がいきなりうちの種族の王子の股間を蹴り上げたんだが。この場合俺はどうすれば良いのだろうか?」
「見て見ぬふりをすれば良いのです」
おろおろと狼狽したデカラウラスの問いに、ウタノリアがメガネを指で押し上げながら冷たく答える。なにやら周囲は大騒ぎだがそれこそ俺の知ったことではない。
俺は股間を蹴られながらも少し顔をしかめる程度の反応しか見せないケンタロウスを射殺さんばかりに睨み付けた。そして宣言する。
「全世界のシスコンを代表してケンタロウス、貴様を粛清する」
そうして俺は軍団長であり、巨人族の王子でもある男へと殴りかかるのだった。