希望、
以前書いたものをやや改編した作品です
つなまよ作にしては(?)可愛らしい雰囲気か……?!
巧拙はともかく自分の趣味を全開にできましたw
彼女の足元には、彼女とそっくり同じ形の
深い深い闇が蟠っていた。
真っ黒いケープ付きのワンピース。
スカートの下に仕込まれたパニエで作られた
不自然なシルエットが歩調に合わせて もさもさと揺れる。
彼女はその闇の中に『希望』を飼っていた。
彼女は新月の夜になる度にそっと出掛けていった。
ワンピースの代わりに
真っ黒いドレスシャツとパンツを身に付け
希望、を裾に忍ばせて出掛けていった。
眠りこけた市場を抜けたその先にある
広場に面したフラットの一室が彼女の今日の目的地。
彼女は音もなく階段を昇り
一つの部屋にするりと滑り込んだ。
重く湿った少女の枕元に向かって
ゆらめく黒のフリルが夜闇を塗りつぶす。
「…ん……ゥん?」
幽かな気配を感じたのか、少女は小さく身じろぎをした。
「はじめまして、王子です。
あなたの失恋を、奪いに来ました。」
応えるつもりがあるのかないのか
彼女はぽつりぽつりと切れ切れに呟く。
それからいきなり少女に接吻をした。
そのまま、数瞬。
つぅ、と唾液を糸引かせて彼女は身を起こす。
再び深い眠りにおちたのか、少女はもう何の反応もしない。
「うん。甘いよ、とっても。君も気に入ると、思う。」
満足げに囁いて真っ黒い裾を持ち上げると
夜闇よりも尚暗い闇が滑りいで、すぐさま少女を覆った。
まっくらな寝室で、希望、は魚のように身をくねらせて
楽しそうにあたりを泳ぎ回る。
少女の胸のあたりに沈みこんだかと思うと、浮かび上がり
なんどもなんども沈むたびに、もとから深い闇が昏く……。
そして闇が何もかもを呑み込んだ。
「満足、した?」
彼女の呼びかけに、希望、は名残惜しげに
もう一度あたりを泳ぎ回ってから、裾の中に飛び込んだ。
そして彼女は、踵を返して夜の街へ溶けるように消えて行った。
裾に希望、と名付けられた黒い闇を忍ばせて。
やわらかな朝の光に目を覚ました少女は、自分の頬が微笑みを形作っていることに気付いて目を見張った。昨夜までの寂しさが、ほんの僅かな名残だけを遺して消えている。
「私ったら不思議ね。昨日はあんなに泣いたのに。」
窓の外では、レースの隙間に闇を潜ませた影が
もさもさと揺れるように、新しい涙の匂いを辿ってゆく。
ちなみに、つなまよはクラシカルロリータの徒ですが、最近ゴシックロリータにも手を出そうとしております。まっくろのお洋服だいすき。。。