アイテいる
電車でもバスでも
そこそこの人混みの中
時折ポツンと
ひとつ空いている席がある
そんな時
「ラッキー」と思うのは
きっと僕だけではないだろう
その日も電車で
僕は例のごとく
ひとつの空席を見つけた
部活帰りで疲れてたから
友達に座らないかと提案した
「は?おまえ、床にでも座んの?」
頓狂な声で返す友達
空いてる席があるだろ?
「どこが空いてんだよ、目ェ大丈夫かー?」
戯けて笑う友達に呆れ
仕方なく僕は一人で席に向かう
「おい、待てって!」
慌てて友達が僕の肩を掴む
「なぁ……どの席?」
変な質問をする
いつになく真面目くさった顔
コイツがこんな顔するんだ
ちょっと意外に思って素直に空いた席を指差す
「んじゃ、もうちょっとだけ待ってろよ」
僕の手を押さえて言う
それじゃ座られちゃうじゃないか
「いーんだよ、黙って見とけって」
案の定
次の駅でサラリーマンがそこに座った
僕は少し癪になって友達を軽く睨んだ
車内も次第に混んできて
降りる駅が近くなる頃には
そのサラリーマンは人混みで見えなくなっていた
次は降車駅だ
座れなかった疲れを余計に感じる
不意に人混みがざわめいた
慌てる男の人の声
小さな悲鳴を上げる女子高生
異常を乗せて
電車は駅に滑り込んだ
僕らはホームに降りた
すれ違いにバタバタと駆けていく駅員たち
振り返ると
あのサラリーマンが介抱されている
彼は青白い顔をして泡を吹いていた
「やっぱなー」
全てを知った顔でそれを眺める友達
思わず僕は訳を問い詰めた
「あの席さ、先客がいたんだよ。ほら、いわゆる霊ってヤツがさ。その上にアイツが座っちまったから怒ったってわけ。ま、そんなに危ないもんじゃないから大丈夫だろ」
途中から耳に入らなかった
止められなかったら僕が彼だったのだ
それ以来
僕はそういう席には座らない
見えない相手が脳裏をちらつくから
ほら
またひとつあいている
たまにこういうことを考えてしまう、私の悪い癖(笑)
私自身は零感なのですけれど
少しでも楽しんで頂ければ幸いです




