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第七話

 修学旅行一日目。

 東京駅から新幹線で京都駅まで行く。

 だが、それまでの二時間ちょっとは暇だ――――と思っていたのだが。

 新幹線の座席はクラス内なら自由なので、みんな友達同士で座っている。

 望月と塚本が隣同士。その隣では、真鍋と和気が隣同士。その後ろに凪野未来と私。

「これ、カップケーキ焼いたんだけど、食べる?」

 凪野未来が手作りお菓子を振る舞うと、女子達は我先にと取り合う。

 私も一つ貰った。

「何これ!? 超おいしい!」

「えへへー。ありがとー」

 凪野はのんびりと喜んだ。

「何これ? 誰が作ったの?」

 そばを通りかかった丹羽翔平くんが、話しかけてくる。

「あたしだよー。食べるー?」凪野は翔平くんにカップケーキを一つ渡した。

「お、サンキュー。……うまいな」

「お菓子作り好きだからねー」

 これは、凪野と翔平くんの距離が近づくパターン!?

「しょっ翔平くんは、甘いもの好きなの!?」

「なに慌てているんだ? 川崎。……好きだけど?」

「私もよくお菓子作りするんだよねー。よかったら作ってこようか?」

「いや、別にいい。面倒だろ」

 ガビーン! 面倒ですか、そうですか。

「あー! わ、私も甘いもの好きなんだよねー」

 望月がわざとらしく微笑む。

「あっそ」

 私は素っ気なく言った。

「私、川崎さんにおいしいお菓子を作って欲しいな。ついでに丹羽くんも頂きましょうよ」

「ついでならもらうかな」

 あれ、もしかして面倒って、翔平くんが面倒ってわけじゃなくて、私を気遣って言ったのかな。

 私はちょっと元気になった。

「彼ってコミュニケーションとり方が異常にシンプルね」

 和気が控えめに微笑む。

「男子ってストレートだもんね」

 真鍋はにこにこしていた。

 塚本はずっと望月と喋っていたけれど、私達の会話には入ってこなかった。

 何を話していたのか耳を澄ますと、乙一とか加納智子とか宮下奈都とか重松清とか、わけのわからない人たちの名前が出てきた。

 なんの話をしているか尋ねてみると、「透明感のある話を書く作家」の話をしていたらしい。

 三十分後にはプロレタリア文学の話を、次に白樺派、そして次にイギリス文学、さらに「超心理学(超能力)の本は真面目に書けば書くほどすぐ絶版になるから、出会った時に買わないとね」とか、よく本の話題だけでそんなに話が続くな、と思った。

 ちなみに、真鍋と和気の話はもっと普通っぽかった。

 どんな服が好きだとか、理想のデートとか、パンケーキが美味しいお店とか、「たまにショッキングピンクのメッセンジャーの男が原宿を歩いているよね」とか。

 音楽の話も、洋楽レディーガガなどやJ-POP(YUIとか)、バンド(神聖かまってちゃんなど)、いたって普通の趣味だった。

 私と凪野はお菓子作りの話をずっとしていた。最初は無塩バターを使っていたけれど、だんだんお小遣いで買うのが面倒臭くなって、家の普通のバターを使うようになったとか、あるあるネタが多かった。

 京都駅に到着すると、今度はバスで奈良まで行った。そして奈良の様々なお寺を訪れた。

 薬師寺が一番楽しかった。

 そして宿に着いたらちょっとだけ自由時間だった。

 私は几帳面なタチなのですぐに荷物整理を始めた。望月も、お風呂の準備や、翌日の洋服を出したりしている。

 他の人たちはみんな、のんびりと構えていて、結局、直前になって慌てて入浴準備を開始した。

 私たちの班は一組の一班なので、夕食よりも入浴が先なのだった。

 さて、次回に続く。

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