第六話
前回のあらすじ。
二条城、北野天満宮、金閣寺、銀閣寺、清水寺、抹茶パフェ。
この六ヶ所をどのようにして回ろうか。
「うーん。困ったね……」
和気ふぶきが控えめに項垂れた。
「じゃ、じゃあ金閣寺と銀閣寺はいいよ――――」
健気に申し出てくる真鍋美波の言葉を遮って、望月は言った。
「わかった! 観光タクシーを利用しましょう!!」
人使いの荒い望月によって、私はスマホで京都の観光タクシーを検索する。
この人数だと……五時間で、30900円。
六人で割ると5150円。
ちなみに修学旅行に持って行ってもいい金額は一万円だ。
一万円から5150円引くと、残るのは……4850円。
「中学の修学旅行のお小遣いより少ないぞ!!」
私は思わず突っ込みを入れた。
「でも、足りるんじゃない? だって抹茶パフェを都路里で食べるとしても、せいぜい1500円でしょ?」
「お土産ー!!」
「え? お土産なんて、家族に800円の箱クッキーと、祖父母宅に五百円の漬物、中学時代のメンツには八百円の八つ橋セットを分け合って食べてもらって、残りの1250円は自分ために使えばいいんでない?」
「自分のために使うお金が一番高額なのね……」
しかも、うまくやりくりすれば足りるかも、と思えてくる自分が怖い。
「で、でも! 夜にジュース買ったりとか、拝観料とか、色々お金使うでしょ?」
拝観料だけで1550円はかかるのだ。足りるはずがない。
望月はちょっと考えた。
「まず、中学時代の修学旅行のお小遣いより多ければいいんだよね?」
「う、うん……」
だいたい5000円あればやりくりもできるし……。
「で、拝観料が1550円だから、3450円以内に観光タクシー代が収まればいいと?」
「え? でも、私が探した会社の観光タクシーが一番安いって……」
「よし! あと四人増やそう! そうしたら一人当たり3090円になるわ!」
望月は教室を飛び出していった。
「まさかの発想の転換!?」
私は叫ぶ。
でも……なかなか一緒に回ってくれる人なんているわけないし。
私は溜息を吐いた。
「見つかったよー」
「早っ!?」
十分も経っていないんですけど――――あれ?
見つかったメンツのうちの一人は丹羽翔平くんだった。うむうむ。喜ばしい。
だが問題は残りの三人。
丹羽龍、浜口智、錦織真央。
「望月いいいいいいい!」
どんだけ観光タクシー使いたいんだよ!
「一つの班に六人までだから、俺と、丹羽一号、二号と、浜口が同じ班ってことにして、お前らは六人の班ってことにしようか」
錦織君の手慣れた裏工作。
「観光タクシーの手配もよろしくねー」
望月の笑顔に錦織は溜息を吐く。
「それくらい自分でやれ、と言いたいところだけど、望月さんに任すのなんか不安だわ」
「まあ、生徒会副会長のお前がやったほうが、何かと都合がいいんじゃないか? 望月がやったら百パーセント教師がうるさく口出ししてくるぞ」
丹羽くんのクールな言葉に、双子の弟の翔平くんも賛同した。
「働け、副会長!」
「うるせー翔平」
なんとなく居辛そうなのは、浜口智。
「なんで望月の申し出を承諾したのよ? あんた、この班の誰とも仲良くないでしょ?」
私の言葉に、智は顔を真っ赤にした。
「お、お前にだけはわかんねーよ!」
智がそんなことを言う理由なんて、どうでもよかった。
それよりも、望月が私利私欲のために私を売るなんて……。
はあーあ。