第九話
二日目。
観光タクシーを利用した望月の判断は正しかった。
タクシーの運転手はかなり有能な人だった。
まず二条城に行くと、「時間が無いので二の丸だけ回ります」とおっしゃる。
ちょっと残念だった気もするが、二の丸に関するうんちくをべらべら喋る。
その話を聞く為だけでも観光タクシーに乗る価値はあるだろう。
その後、北野天満宮に行った。運転手は車で待機していた。
今日は毎月一回の縁日の日だったようでかなり人が混んでいた。でも、なんとか短時間で参拝を済ませる。
そして金閣寺に行くと、そこでもまた運転手のうんちくを聞く。
やはり金閣寺は豪華ですごい。見ていてほれぼれする。
その後、某和食ファミリーレストランで昼食をとる。
それから銀閣寺に行くと、金閣寺とどうしても比べてしまって、正直期待外れだった。
でも世界的に芸術として評価されているのは銀閣寺らしい。
最後に清水寺まで行って、運転手と別れた。その頃には不思議な絆ができていて、名残惜しかった。
清水寺を軽く見て回って、最後に近くにあった有名茶屋で抹茶パフェを食べた。死ぬほど美味しかった。抹茶が濃くて驚いた。
でも集合場所に行って、宿に帰った後に、夕食でしゃぶしゃぶが出てきて、抹茶パフェをたらふく食べたことを後悔した。
この手の後悔は大変贅沢である。
***
「あー、楽しかった」
私は溜息を吐く。
同じ班のみんなは売店にお菓子を買いに行っているので、今この部屋には私と塚本メアリしかいない。
「観光タクシーを使うためにイケメン三人を仲間に入れた時はどうなることかと思ったけど」
たはは、と私は乾いた笑いを浮かべる。
「真鍋さんが……」
塚本が珍しく声を発した。
「中学時代、身体が弱くて修学旅行に行けなかったんだって。私も行かなかったけど。だから、楽しんでほしかったんじゃない?」
中学の分まで。
なるほど。そういうことか。
まあ、じゃあ私もちょっとは貢献できたかな?
「望月って時々ものすごく自分勝手にも見えるけど、本人なりに優しいよね」
「川崎さんが言えたことじゃないと思う」
塚本は無愛想に言ったが、彼女は他の人に対してもそうだし私は気にしなかった。
明日はどんなことがあるのかな。
三日目に続く。