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第一話

どうも、スーベニアと申します!

小説家になろうに投稿三作目です。

よろしくお願い致します!

ちなみに望月さんは前作、前々作のヒロインです。

よろしければお確かめください!

 私、川崎美春!

 西武線沿いにある都立高校に通う、高校二年生!

 趣味はお菓子作りで、がり勉なこと以外はいたって普通の女の子です!

「おはよう、美春!」

「おはよう、太田!」

 この子は親友の太田海。友達が多くて、クラスのリーダー的存在。

 なんで地味な私と馬が合うのかな、と時々不思議に思うけど、良い子です。

「もう、きいて~。バイト先の先輩が遊びに行こうってしつこいの。彼氏いるって言っちゃおうかな~」

「言っちゃえ! この前もいらないって言ったのに、時計をプレゼントしてきたんでしょう?」

「そうなの~」

 太田はとってもモテる女子だ。変な男に捕まって大変そう。

「あー! 錦織君だ!」

 錦織真央君が私達のクラスである一組の教室に入ってくると、女子が露骨に色めき立つ。

「生徒会副会長」

 太田が錦織君に近づく。

「今年の文化祭、うちのクラス、コスプレ喫茶にしようと思うんだけど……」

「おお。いいんじゃない? でも悪いけど、生徒会はコスプレ費用だせないなあ」

 柔和な笑顔で申し訳なさそうに告げる錦織君に、太田は極上の笑顔で告げた。

「いいの、いいのっ。あたしの家にもコスプレの衣装何着か、あるし」

「そっか。いいね。俺もコスプレとか好きだよ」

「うんうん! いいよねー!!」

「川崎さん」

 錦織君が私に話しかけてきた。

「川崎さんもコスプレするの?」

「う~ん。まだ、役割分担していないからわからないなあ」

「絶対美春似合うって!」

 太田が肩を組んでくる。

 そして、錦織君が教室を去って行ったのを見計らっていった。

「望月さんとは違って」

 望月コウミ。

 うちのクラスの女子は細かい仲良しグループに分けたらきりがないけれど、大まかに分かれて二つのグループに分かれている。

 太田海が中心となっているリア充グループ。奥手な太田はそんなに男子と話さないけれど、私たちのグループの女子は明るい男子ともよく関わっている。

 そして、望月コウミを中心とした離れ小島グループ。望月と真鍋以外の女子は基本的に男子と話さないけれど、藤木など、大人しめの男子と関わっている。

 離れ小島グループは、真鍋美波と和気ふぶきとの三人グループが基本だが、望月コウミは塚本さんをはじめとした、一人ぼっちの女子によく話しかけているので、メンバーがはっきりと決まっているわけではない。

 太田は最初、望月の友だちである真鍋や和気に話しかけたりして、私達のグループに入れようとしたけれども、なぜか彼女らは望月の傍を離れようとはしない。

 太田はいつも「望月さんに睨まれた」とか言っているし、望月は授業中質問ばっかりしていて目立ちたがり屋だけど、なんで友だちがいるのだろう。

「望月さんって大して可愛くもないのに、さっき副会長と喋っていたんだけど」

 太田は望月の話をするときだけ、別人みたいに表情がきつくなる。

 ちなみに望月は清純派美少女で、でも制服の着こなしや言動は真面目なので、顔は可愛いけど雰囲気や性格はは可愛くないの典型だ。

 でも彼女、私達には普通にいい人なんだよなー。にこにこしているし、重い荷物を持つの手伝ってくれたし。

「あ! 川崎さーん!」

 望月が私に話しかけてくる。

「ええとね、さっき急に錦織君が今日生徒会の用事が入っちゃったから、放課後の待ち合わせの時間、三十分遅らせてって」

「あ……うん。わかった、ありがとう」

「待ち合わせ?」

 太田は訝しむような顔をする。

「うん。錦織君に呼び出しくらっているんだー」

「そう。行ってらっしゃい」

 太田は話を聞いているのだかよくわからないぼーっとした声で告げた。

 望月は別に生徒会執行部というわけではないのだが、生徒会のメンバーとそれなりに仲が良い。

 生徒会は三年の会長以外全員二年生男子で、モテモテの錦織君以外の男子は、わりと男子同士でつるんでいる。

 女子の望月が仲良さげに話していることをよく思わない人も多いのだが、本人は気づいているのだか。

「よう! 美春!」

「智!」

 同じクラスの幼馴染、浜口智が声を掛けてくる。

「どうした? 浮かない顔をして」

「う~ん。錦織君に呼び出しをくらっているんだけど、なんでだろうって考えていただけ」

「あー! 部活の後のスポドリうめー!!」

「話聞きなさいよ!」

 こんなお調子者の智だけど、サッカー部のゴールキーパーで、「サッカーコートの守護神」なんでどっかのパクリみたいな二つ名がある。

 守護神と言うのはゴールキーパーだからってだけじゃなく、正義感の強い性格からも由来するのだけど。

 でも勉強はできないし、なんでこんな奴がモテているのかがわからない。まあ、良い奴だけど……イケメンだけど……。

「ていうか錦織と仲が良いのか?」

 いきなり話を戻す智。なんだ。聞く気はあるわけね。

「ううん。たまに話しかけられるくらい」

「ふうん……」

 智は珍しく、何かを考える仕草をした。

「なあ。昼休み、裏庭に来い」

「え、なん」

 なんで、と訊こうとして。

「待ってるから」

 智の真剣な表情に、私は何も言えなくなった。

「う、うん……」

 そう答えた瞬間、周囲がざわざわと騒がしくなる。

「『竜王』だ!」

「『静かなる竜王』が来たぞー!!」

 『静かなる竜王』こと、丹羽龍くん。

 成績優秀、スポーツ万能、何をやらせても完璧な男の子。

 加えてその美しさと言ったら。

 圧倒的なカリスマ性を誇る少年だが、本人はクールでつるむタイプではなく、孤高の存在となっている。

 でも、今日の丹羽くんはいつもと違った。

 きつめの端正な顔をこちらに向けて、私のほうへと近づいてくる。

「あ、おはよう。丹羽くん!」

 丹羽くんとはそこそこよく喋る友達なので、私はいつも通り挨拶をした。

「お前は今日も元気だな」

「まあ、それだけが取り柄ですから」

 たはは、と頭を掻くと、珍しく丹羽くんも相好を崩した。

「なあ、一つ、言いたいことがあるんだが」

「なあに?」

 笑顔で首を傾げると、丹羽くんは思ってもみなかった言葉を口にした。

「ずっとお前の傍にいたい。俺と付き合ってくれないか?」

 その瞬間、周囲がこれ以上ないくらいざわついた。

「えええ~!!!」

 私は驚いて頭が混乱する。こんな……みんなの前で……!

 頬が熱くなる感覚。

 丹羽くんは素敵な男子だし、好きだけど……。

 でも、これだけははっきりしている。

「返事はいつでもいいから」

 そう言って去っていく丹羽くんを「ちょっと待って!」と引き留めた。

「ごめんなさいぃいいいいぃい!」

 思いっきり頭を下げる。

 周囲の人たち、唖然。丹羽くん、口をあんぐりと空けている。

 しばしの沈黙の末にようやく丹羽くんは口を開いた。

「どうして?」

「丹羽くんのことは友達としては好きなんだけど、恋人にすると……私なんかとは釣り合わないから」

「そんなこと考える必要ない!」

「あと単純にタイプじゃないんです……」

 理由としては確実に後者の方が大きい。

 だってクールで孤高で完璧な人なんて、友達だったら尊敬できて一緒に居て楽しいけど、恋人だったら疲れる。

 後ろのほうの席で本を読みながら、望月さんがくっくっく、と笑っていた。

「そうか……。友達として、よろしくな」

 憂いの込もった瞳で丹羽くんは笑った。

「うん。ごめんね」

 そう返すと、丹羽くんはもう一度笑って、去って行った。

***

「ここかな? あ、居た! 智ー!!」

 昼休みに裏庭に行くと、智はすでにもう葉っぱで生い茂った木の下に佇んでいた。

「話って何?」

 いつも通りのテンションで笑いかけるが、智は黙って俯いていた。

 しかし、意を決したような男らしい表情で、私に向かって叫ぶ。

「俺はお前が好きだ!!」

 ……。

 …………。

「……へ?」

 思わず間の抜けた声を出す。

「今まで、そんな素振り全くなかったのに……」

「いや、ずっと前から好きだった。笑った顔も怒った顔も、ずっと見てきた」

 智は真っ直ぐ私を見つめる。

「お前をずっと見ていた」

「気持ちを伝えてくれてありがとう……」

 私にはそれしか言えなかった。

「だめだ。ちゃんと返事をしろ」

「あ、ごめん……」

 智は固まる。そして呟く。

「……それが、返事か?」

「うん。智とは付き合えない。でも大切だったよ。ずっと家族みたいに」

 智は悔しそうに顔を歪めるが、これ以上優しいことは言えないし、言いたくない。不誠実だからだ。

「まあ、そうだろうなとは思ってたよ」

 智は溜息を吐く。しかし、やがて太陽のような笑顔で告げた。

「でも、お前がピンチのときは必ず駆けつけるから、安心しろ。家族みたいに頼りにしてろよな」

 やっぱり智のそういう嫌味の無い性格が、私は好きだ。

 なんで振ったか……。

 それは智に恋愛感情が無いことも大きいが、一番は幼馴染と付き合うというのはちょっと気まずいからだ。普通に考えて嫌だろ。

***

「丹羽と浜口を振ったんだって?」

 放課後。生徒会の仕事を終えて合流した錦織君が尋ねてきた。

「ええと……」

 言っていいのかな。

 困っていると錦織君が苦笑いを浮かべた。

「めっちゃ噂になっているよ」

「そう……」

「あの二人もねー。もうちょっと上手に告ればいいのに」

「ううん。告り方が悪かったんじゃなくて……」

「あの二人が好みじゃなかったのか。あっはっは」

 錦織君は愉快そうに笑った。――そうかと思ったら急に真剣な顔つきになる。

「俺じゃダメかな?」

「いや、一番嫌いなタイプの男です。すいません、ごめんなさい。無理です、生理的に」

 ……。

 錦織君は目を丸くする。

「え? 俺、何か気に障るようなこと、した?」

「錦織君は男友達としては最高です。男嫌いだけど、女である私には優しいし、色々助けてくれるし、話も面白いし」

 そこで間を置いて、私はまた口を開いた。

「生徒会副会長で、仕事ぶりも真面目、人当たりがよく男女ともに好かれていて、黒髪でチャラさはないけどおしゃれなイケメン、勉強も運動もバイトもそつなくこなす……が表の顔よね?」

「いや、嘘偽りはないけど」

「そう。その姿に嘘偽りはない。でも、計算してその理想の男像を作り上げているんでしょ?」

「え」

「計算して人に優しくする人は嫌いじゃないの。だって賢いと思うし、それでもちゃんと優しいもの。

 でもね、女の子の気持ちに答えられないのに、どんどん惚れさせて、ばっさばっさ振ることに快感を覚えるのはどうなわけ?」

「……」

「笹塚ちゃんって性格の良い美人、振ったでしょ? 仲良いと思っていたけど、あんな優しい笹塚ちゃんでさえ、自分の駒のように扱って」

「ちゃんと誠実に断っているつもりだよ!」

「計算で惚れさせているくせに『笹塚なら俺よりいい男見つけられると思う』って優しく振るのは一番立ち悪いわよ! 笹塚ちゃん、あんたのこと庇ってそのこと誰にも話さないのよ!」

 錦織君は口をあんぐりと開けた。

「他にも、高校入ってから今までで二人の女の子と付き合っていたけど、二人とも『彼女がいるのに彼女以外の女の子に優しくするから無理』って理由で振られているわけでしょ! 嫌よ! そんな男!」

 錦織君は男としてめっちゃ傷ついた顔をした。

 私はそんな彼にとどめを刺す。

「ごめんなさい」

***

 錦織君が去った後、望月が後ろから話しかけてきた。

「いいの? 川崎さんが悪者になっちゃうかもしれないよ?」

「錦織君は誰にも言わないよ。女たらしだけど、人としては良い奴だもん」

「でも、こっそり今日の告白劇を観ている人がいるよ」

「どうせ野次馬でしょ。好きに噂すればいいよ」

 私の言葉に望月は黙り込む。しかし、彼女はお喋りな性質なので、また口を開いた。

「……でも、ありがとね。笹塚ちゃんの代わりにお礼を言うね。彼女は劣等感を覚えちゃうくらい素晴らしい子だけど、妬む気も起きないくらい、嫌味の無い性格の子だから」

「うん」

「うちの学校、純情な子が多いからみんな気づいていないけど、錦織君は一回女の子の痛みを知ればいいと思っていたの。私も友達としては大好きだけどね」

「うん」

「彼はどんどんいい男の子になるよ」

「そうだね」

 私たちは笑い合った。

 ちょっと前に私の友だちの笹塚が、『コウミは錦織君のことどう思っているのかな?』と悩んでいたが、望月は田宮とかいうオタク男子が好きだったらしい。

 そして、夏休みに入る前に振られたらしい。よく知らないけど。

 田宮がこんな美少女振るとか、よっぽど望月の性格が悪いんだろうな、と思っていたけれど、望月は意外と良い子かもしれない。

「私、川崎さんみたいな人、好きだよ」

「え? ありがと?」

 なにこれ、本日四回目の告白?

「あ、レズじゃないよ?」

「う、うん」

「でもね」

 望月は無邪気に笑った。

「何か困ったことがあったら教えてね?」

***

 翌日。

 学校に行くと、私の席の机と椅子が無かった。

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