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永久  作者: ちびた&ちろ
4/6

新婚旅行

涼子の希望通り、出産前に結婚式を挙げ、披露宴を開催することが決まった。


「晃さん、どっちがいいかしら?」


「う~ん、ピンクもかわいいけど、やっぱり、そっちのシンプルなやつが涼ちゃんらしいんじゃない?」


「そうかな~。どうしよう。どれも素敵で迷っちゃうわ」


ウェディングドレスを選びに来ていた。二人の両親も一緒である。


すでに、顔合わせも済ませ、結納も終わっていた。皆、酒好きで、この時には、すっかり意気投合していたのだ。


「ダメ。やっぱり自分じゃ決められないから、晃さんが決めて」


「じゃあ、とりあえず、これとこれとこれとこれを着てみて」


涼子のうれしそうな顔を見ながら、晃も幸せを感じていた。


「やっぱり、これとこれだな。どうですか?」


「うん。いんじゃないかな」


「素敵じゃない」


英雄と由紀子も気に入ったようだ。


「お義父さん、お義母さんはどうですか?」


涼子はうれしそうに尋ねた。


「晃にはもったいない花嫁だよ」


「ほんと、涼子ちゃんによく似合ってる」


自分たちの子どもは男二人の兄弟だった太一と光子にとって、初めての娘である。


「じゃあ、僕は涼ちゃんの白い方のドレスに合わせて、これにするよ」


「いんじゃない。晃さんも素敵」


「まあ、男はおまけみたいなもんだから」


太一は、職人気質で、歯に衣着せぬところがある。


とにかく、こうして二人の衣装と両親の衣装も無事に決まった。


結婚式当日。


前日の夜遅くまで二人のプロフィールを作っていた晃と涼子は、少し寝不足気味であったが、なんとかこの日を迎えることができた。


涼子は何人ものスタッフに囲まれて、順調に美しい花嫁になっていった。


晃は着替えも髪のセットもひとりでこなした。


「これじゃあ、ほんとに男はおまけだな」


あっという間に仕上がってしまった。


「さて、僕の花嫁はどんな感じかな?」


しばらく待っていると、支度の整った涼子がゆっくりと控室からできた。


「涼ちゃん、すっごくきれいだよ」


「うれしい。ありがとう」


そのまま係りの人に式場へ案内される。


いよいよ式の始まりである。


晃は先に入場し、涼子を待っている。


扉が開き、美しい涼子が英雄の腕を取って入場してきた。式場からは拍手が起こる。


ゆっくりとゆっくりと晃の元へ近づいてくる。拍手はずっと続いている。


晃の元までやってきた。


英雄と晃は握手を交わし、英雄が涼子の手を晃の手の上に乗せる。


二人は壇上へゆっくり進んだ。


あとは、神父が式を進行していく。指輪の交換をして、誓いのキスをした。


こうして、無事に結婚式は終了した。


今度は、披露宴である。晃は打ち合わせにあまり参加できなかったが、涼子と会場のスタッフのおかけで、順調に進んでいった。


晃の仕事の関係で、招待客も結構な人数になっていた。


友人たちの出し物も、盛り上がった。


晃は震える手で泣きながら両親への手紙を読む涼子を本当に愛しいと思っていた。


「涼ちゃんと一緒に幸せになります」


最後のあいさつも終わり、披露宴も無事に終了した。


晃と涼子は自宅の近くにアパートを借りることにした。二人の新生活の始まりである。


今までシンプルなライフスタイルだった晃は、どんどん増えていく生活雑貨に少し違和感があった。部屋の中に余計なものを置きたくなかったのである。


だが、かわいい涼子がすることなので、多少のことは目をつぶっていた。


「これが結婚っていうものか」


晃は誰かと夫婦になるということに漠然とした不安を感じていた。


そんな中、晃の意識は、徐々に仕事へと戻っていったのである。


「涼ちゃん、新婚旅行なんだけど、いくつか蔵元めぐりも兼ねていいかな?」


「え~、せっかくの新婚旅行も仕事なの?」


「このところ結婚式や披露宴の準備で、ずいぶん仕事が遅れてたからいいでしょ?」


「もう、仕方ないな」


涼子もこの先の生活に少しだけ不安を覚えた。


それでも、二人は、三泊四日の新婚旅行へでかけたのだった。


最初の日、早速、晃は涼子と一緒に蔵元を訪問した。涼子にとっては興味のない仕事の話しが続いている。


ホテルに戻っても、晃は先ほどの地酒の情報を整理していた。


「ねえ、晃さん」


「ん?」


晃は仕事を続けている。


「せっかくの新婚旅行なのに、私、つまんない」


「あっ、ごめん。もう少しでひと段落するから、食事にしよう」


次の日は、また、別の地域へ移動して、別のホテルに宿泊することになっていた。


「私、一人でその辺をぶらぶらしてるから、晃さんも一人で仕事へ行って」


「一緒に行かないの?」


「だって、つまんないんだもん」


「ごめん、じゃあ、ちょっと行ってくる。なるべく早く帰るから」


ホテルに戻ってきた晃は、流石に、申し訳なく思った。


「涼ちゃん、この部屋は小さい露天風呂がついてるんだ。


一緒にはいろ」


「えっ、なんか恥ずかしい」


「いいじゃん、夫婦なんだから」


「うん。


じゃあ、晃さんの着替えも用意して後から行くから、先に入って」


晃は部屋の外に備え付けられた露天風呂へ浸かっていた。


二人分の下着と浴衣やバスタオルの準備をした涼子も後から入ってきた。


「足元、少し滑るから気を付けて」


「うん。ありがとう」


涼子は身体を流し、湯船に浸かった。晃の方へは背中を向けている。


晃は、涼子の両肩へ手をかけ振り向かせた。


涼子の顔をじっつ見つめている。


「僕の嫁さんは、やっぱりきれいだ」


徐々に視線を下の方へ移していく。お湯の中で、ふたつの膨らみが揺らめいていた。


さらに、視線は下へ移る。


晃はお腹に手を当てた。


「マメたんも、ずいぶん大きくなった」


「うん。


もう、マメじゃないわよ」


「ほんとだね。


明日は、予定を変更して、一緒に観光しよう」


「ほんと?


うれしい。


ごめんなさい。私、わがままで」


「僕の方こそ、仕事ばっかりでごめん」


残りの二日間は、晃にとっても、涼子にとっても、思い出深い楽しい新婚旅行となった。

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