表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金と黒の王国2  作者: 朔夜
彼女は手探りで進む
6/47

第6話  彼女は世界を知る

他の作品で軽いスランプになったので、頭の切り替えに読み直したら思いつきました。

世界設定を。

今回、説明文ばっかりです。

書き終えた数時間後に予約掲載しているので、誤字修正が甘いかもしれません。

 生まれたばかりの世界は、混沌に満ちていた。


 長い間、混沌でしかなかった世界は、混沌が意思を持つことによって真に世界と化す。

 意思を持った混沌は、世界に唯一の存在で在る孤独に耐えきれず、あらゆるものを創造し始めた。

 その瞬間から、混沌は世界を彩るもの全ての母に、創造神となったのだ。


 最初に、混沌は自分の身を削って六の神を生みだした。


 光と昼、生命を司る女神、シェライラ。

 闇と夜、死を司る神、カーティス。

 火と暁、再生を司る神、メンティ。

 水と曙、破壊を司る女神、ガイルティア。

 風と黄昏、天空を司る神、バステ。

 大地と朝、豊穣を司る女神、フレメイア。


 この最初に生み出された神達は六大神と称され、母なる混沌に変わって世界に秩序をもたらした。

 彼等の持つ現象によって、世界は急速に形を成していく。


 ガイルティアにより海や川が、フレメイアにより大地が、メンティにより太陽が、バステにより月と星と雲が、シェライラにより多くの動植物が生まれて、カーティスによって死の終焉がもたらされた。

 彼等は今もなお、協力して新たな現象や存在を生み出し続けている。


 六大神が秩序をもたらす中、混沌も次々に様々な現象と存在を生み出していった。

 生み出されるモノは、必ずしも世界に良いモノではない時もあったため、混沌は生けとし生けるものに忌避されることも多々あった。

 恐れられ、憎まれることに疲れた混沌は六大神に世界を任せ、長い眠りにつく。


 混沌が嘆きによって眠りについたことに怒った六大神は、彼らよりも後に存在した下位の神、世界のほんの一部の善良な生命体を集め、バステと協力したガイルティアの降らせた大雨による大洪水で世界を包み込んだ。

 その大洪水によって水没し、津波によって流され、破壊され、混沌を忌避する生命体達の作った国や街はことどとく滅びた。


 その後、神々は新たに世界を作り直し、一度世界が滅んだ理由を知るわずかな生き残り達は、最高神として混沌を崇めた。

 そして、神々の望んだように。

 以後、長く深き眠りについたままの、全ての母たる混沌を崇めないモノ達は現れなくなった――


 



 夢だと勘違いしていた私に、闇の神カーティス様が夢枕に立って知らせてくれた現状はきつすぎました。


 敵は『無慈悲にして無垢なる混沌(byカーティス)』こと、この世界の創造神。

 元の世界の帰還するために挑戦するのは、この世界のアカシックレコードにほんの少しでも載っていない未来。

 なにこの難易度。

 ハードモードどころか、アンノウンじゃないですか。


 その過酷過ぎる現状に、起きてからずっと私は悩み続けていました。


 ふと気付くと、メイド服を着て部屋の中央に佇んでいましたよ。

 どうやら、憑依している私の存在を知らないルーシェリカさんは、さっさとベッドから出て身支度をして、朝食を取り終えていたようです。


 この世界が夢ではないのなら、まず私に必要なのは情報です。

 世界のことを知らなければ、ルーシェリカさんにとって幸せであり、創造神の望みに叶うような未来は掴めないと延々と悩んで気がつきました。


 あと。

 やはり私が考えたように、運命の選択をする一瞬前には時間が止まっているようです。

 私の感覚では数時間悩み続けていたと思ったのですが、部屋の窓から見える空の様子はまだ早朝。


 図書館に行けたのなら一番なのですが、昨日出て来た選択肢にはそれはありませんでした。

 なので、私をこの状況に追いやった創造神作成と思しき用語図鑑を読む他は、重要人物の話を聞きながら私の知識をフルに活用させて、何となくこうかなと想像することしか出来ないでしょう。


 教えてくれたカーティス様には頼れません。

 私の魂のみでの直接の接触行為が長引くと、この世界の人間に近づいてしまうといった釘を刺されています。

 元の世界に帰還したい私にとっては、危険な行動。


 業腹ですが、元凶作成の用語図鑑を読むのは避けられません。

 こういったモノをアイテム風味に存在させているということは、この世界のことをより私に理解させたいという意味合いでしょうし。


 なので、机に近づいて『図鑑を見る』を選びました。

 その後『用語図鑑』を選択します。


 最初のページに神話らしきものが載っていました。

 雰囲気のあるかっこいい、文字っぽい筆記体のようなものが書かれています。日本語訳付きで。


 神話を本気で取ると、混沌こと創造神はとっても寂しん坊で打たれ弱い存在に思えますね。

 ですが、そんなわけありません。

 文章をそのまま採用すると、混沌は全ての母なのです。

 生きるものの心を、元凶である悪意すら生み出したのは混沌自身なのですから。

 打たれ弱い存在なら、カーティス様だって『無慈悲にして無垢』なんて物騒な形容詞つけて呼んだりしないでしょう。


 ノアの箱舟によく似た現象が神話に載っています。

 六大神が現在も存在している以上、神官は事実確認も出来るので、これは創作ではなく本当にこの世界で起こった事柄なのでしょう。

 カーティス様は六大神達が創造神のフォローに回っていることを否定しませんでしたから、元凶は多分、混沌ですね。


 私はそう判断すると、パラパラと用語図鑑を読み進めました。

 まずは舞台であるこの国のことを知らないといけませんね。


 国名は、レイニドール王国でしたっけ?

 確か、人物図鑑でエドガー様の情報を読んた際、そう載っていたような気がします。家名もそうでしたし。

 他にも昨日の行動で国名らしいものは出てきましたが、ミーミルはセリガン公爵の所属国ですし、イネスタは何となく違う気がするんですよね。


『レイニドール王国。

 建国から306年。政治体制は国王を頂点とした、専制君主制。

 国土は大陸の北部に位置しているが、豊かな河川と平野に恵まれており、農業が盛ん。他国への輸出品は主に穀物。四季はあるが、夏は短く、冬が長い。

 王侯貴族は色素が薄いものが多く、金髪や銀髪が主。

 平民は茶髪や黒髪が多い。

 国土は北を海、南から東をミーミル帝国、西をイネスタ王国に囲まれている』


 なるほど。

 私の勝手なイメージですけど、国全体が北海道みたいな感じの気候でしょうか?

 北海道のように海に囲まれていませんし、この国に山がたくさんあるかどうか、分かりませんけど。

 残念なことに、私はヨーロッパの方の気候にはあまり詳しくないので、たとえで使えません。



『現国王はブライアン2世で、王妃は3名。第1王妃には友好のため、イネスタ王国から前国王第3王女(現在は王妹)アンジェラを迎えている。

 現国王の姉妹は友好などの関係強化のために他国や自国の貴族に嫁いでおり、本人達は王位継承権を所持していない。ただし、その子供には与えられている。

 長男であるため、王兄は存在していないが王弟は2名。両者ともに王位継承権は放棄していないが、現在臣籍に入っている。

 ブライアン2世の実子は現在のところ、6名』


 ふむふむ。

 叔父2名と従兄弟姉妹達も、ご主人様にとってライバルなようです。


 レイニドールでは女性の王族にも王位継承権は与えられていますが、結婚した後、本人の王位継承権を剥奪されるもよう。

 だとすると、レディ・マクスリールはお子さんが居ない限り、現時点での王位継承レースには無関係ってことですね。

 この点は、要確認です。人物図鑑のベネット(レディ・マクスリールの名前)の欄を読まなくては。

 これでお子さんが居なかったら、レディ・マクスリール御本人に対して無用に警戒しなくていいってことになります。


 エドガー様は王太子ではありませんし、ご主人様も違うでしょう。

 既に王太子だったら、王にならなくてはいけないから兄上に退場してもらう――なんて発言はしないハズです。

 王太子の地位にあったとしたら支持率も貴族民衆両方とも、さすがにもっと高いでしょうから。

 なので、王太子はそもそも決まっていないか、王弟のどちらかが任命されていると予想。


 んん? ちょっと待って。

 王妃様って3人なんですか?


 私が出会った王子王女は4人とも揃って顔似てませんでしたから、てっきりもっと居ると思っていたんですが。4人の内、誰かが国王様似なのでしょうかね?

 ……エドガー様の外見が父親譲りだったら、何かの拍子にちょっと国王様を拝見することがあった場合、目にするのが怖い気がします。

 より歳をとっている分、悪役っぽさがグレードUPしていそうで。


 他にも王国の歴史とか表で載っていましたが、今のところルーシェリカさんに関わりそうなものではないですね。

 じゃあ、この辺でいったん他の、日常に関係がありそうな用語を見てみましょうか。


 まずは、戦闘系の用語チェックですね。

 ルーシェリカさんの使命には、モンスター討伐とお金が切り離せないのです。


『レベルとステータス。

 肉体と精神の錬度を数値化したモノ。主にモンスターを倒すことにより、死亡したモンスターの魂に含まれていた神気を吸収し、己の中に溜めていくことによって、より強く向上する』


 ふむ。

 神気=経験値ということですね。

 先程の神話的に、この世界の存在や現象は全部神が創り出したモノらしいので、個体差はあれど体内か魂の中にはあるということなのでしょう。

 『主にモンスター』っていう記載が気になります。

 おそらく。

 明文化されてはいませんが、モンスターではない他の生物を殺害した場合でも、経験値もとい神気が得られるということでしょう。

 例えば、盗賊や自分に敵対する人間などでも。

 

 私の考えが合っているとしたら、この世界の凶悪殺人鬼とかは普通に高レベルになりませんか?

 ……RPGゲームのシステムを現実風味の世界にあてはめてみた場合、違うと言い切れない感じですね。兵士とか騎士とか、モンスター以外の実戦経験あるでしょうし、その分レベルが上がるでしょう。


『スキル。

 身につけた技術の錬度。

 ステータスに影響をもたらし、関連性のある行動には補正が入る。

 ただし上限には個人差があり、最低ランクはD(訓練すれば誰でも身につく)で最高ランクはS(天から与えられた才能を磨き抜いた)である。

 技術の無いものはスキルとして適応されない。

 大きく二つ――生活の中で自然と会得した職業などに関連があるものと、戦闘に影響をもたらすものに分けられる』


『スキルポイント。 

 全ての生きとし生ける存在は、生まれた時にその魂に見合った量を染まった属性の神から与えられ、また己のレベルを上げることによっても得ることが出来る。

 スキルポイントを消費することによって、スキルランクを向上することが出来る。スキルポイントを消費しなくても、一定時間技術を磨くことでもスキルランクはあげることが可能』


 スキルは全くポイント振らなくても、ひたすら修練を繰り返せばいつか上がる――という感じなんですね。

 振った方が早く上がるでしょうけど。

 そういえば、ルーシェリカさんのスキルには何個か『MAX』ついていました。小さい頃から相当努力したんでしょう。

 

 スキルで思い出しましたが、魔法の件です。

 発動させて行使するのはルーシェリカさんですが、ルーシェリカさんの無意識に働きかけて発動指示を出すのは私ですし。どんなものがあるか、効果を知っておかないと。

 パラパラとページをめくっていって、闇魔法をチェック!


『闇魔法<招夢>

 単体対象に強烈な眠気をもたらす。スキルランクDから扱える』


『闇魔法<奪光>

 一定時間、対象範囲に闇の霧を出現させ、視界を奪う。スキルランクDから扱える』


『闇魔法<暗視>

 一定時間、単体対象に闇の中でも日中と同じような視界をもたらす。スキルランクDから扱える』


『闇魔法<影縛>

 一定時間、単体対象の影に干渉し、その場に拘束して自由を奪う。スキルランクCから扱える』


 むむ。

 他にも現時点――ランクCで扱えるものは全部読みましたが、闇魔法のほとんどが攻撃というより異常状態付与形態のもよう。

 ランクB以上は確認してませんが、パッと見る分には即死魔法に当たりそうなものはなさそうです。死はカーティス様ご自身の管轄なので、人間では扱えないということでしょうかね?

 闇魔法は生け捕りにしたい場合――制圧とかに向いてそう。敵が使ってきたとしたら、もの凄く厄介ですが。


 私が思った通り、魔法はランクがかなり重要なようですよ。


 ランクDとランクCの魔法は、ことごとくランクB以上で範囲拡大化可能、ランクAで威力増大可能って書いてありますから。範囲拡大したり威力増大する分、消費MPは増加するようですけど。

 多分、Bランクまで至ることが出来る人間は少ないのでしょう。

 きっとこの世間一般では、魔法スキルがB以上だと本職魔法使いとして扱われているでしょうね。

 あ。

 重要人物に魔導師がいますから、呼び方としてはそっちの方が正しいのでしょうか?


 ルーシェリカさんの闇魔法スキルにはMAXがついていませんから、まだ上がります。

 私、ますます闇魔法スキルをランクBにしたくなってきましたよ。戦術の幅が広がりますもの。


 あと、ついでみたいに名前が5文字以上の人は必ず加護持ちって書いてありました。

 王侯貴族である人達が短いのに、平民であるルーシェリカさんの方が長いのはこんな理由があったんですね。

 神官や魔導師なんかはしきたりで本名を名乗らないようですが、参考にはなります。


 ……これにより、ルーファスの持っていると予測出来るスペックが高まりました。

 ルーシェリカさんの仕事任せている関係上、同行してくれなさそうですけど。ちぇー。


 そうだ!

 重要人物――ジェラール(押しの強い笑顔の薬師)辺り、交友を深めれば、戦闘に同行してくれるようになるかもしれません。

 何故ジェラールかというと、魔法のスキルを持っていると分かる重要人物は、他には導師シュダァ(宮廷魔導師)、セルマ(シュダァの弟子)、グレーテルさん(商人)ですが、この人達に対してのルーシェリカさんの態度、硬かったんですよね。

 魔導師師弟組は今まで個人的に話をしていない感じで、グレーテルさんの方は会話的に初対面でした。


 ジェラールに対しては、ルーシェリカさん、ご主人様の風評を考慮していたのか口調は丁寧でしたが、結構気安い雰囲気だったのですよ。

 会話的にも、お互いに知人という感じでした。

 

 彼が持っている魔法スキルが仮に回復系統だったとしても、1人で戦うより安全です。

 そうでなくても、仲良くなって損はないでしょう。

 薬師だけに薬の材料とかに詳しいでしょうし、職務上王宮務めの人間へ影響ある人物ですから。


 決めました。

 カットバニィの件が終わったら、ジェラールに会いに行きましょう。

読んで下さってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ