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金と黒の王国2  作者: 朔夜
彼女は手探りで進む
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第10話 彼女は共に戦う①

ロゼのステータスを決めるにあたり、短編のつもりで適当に作ったステータスをどうにか整合性を持たせた結果、主人公のステータスを一部変更しました。

 4日目の朝を迎えました。

 念のため、壁のカレンダーもチェックしましたが、今日は水の日です。

 間違いなくロゼの同行可能日。


  誰かに会いに行く

  自室で過ごす

  ロゼと街に出る

  1人で街に出る


 ドアに近づいた途端、浮かび上がった選択肢はまたも変化していました。

 『ロゼを探す』を選ぶ必要があると思っていたのですが。

 これは王城内で行動する場合と、外に出る場合の差別化のために出てきたようですね。

 うっかり同行可能日を忘れたりしないためなのかもしれませんが、便利なので良しとしましょう。


 じゃあ『ロゼと街に出る』で。


 選択肢を選ぶと、ルーシェリカさんが街に出る時お馴染みの格好に着替えを始めました。 


 別に毎度同じ服を着ているのではないのですが、デザインがとても似通っているのですよ。細部は違うのですが、ほぼ色違いにしか傍目には見えないという……

 シリス孤児院院長は本職が服飾職人ではないでしょうから、卒業記念に1人につき3着くれただけでも十分ありがたい。

 悪いのは、私服を買い足していないルーシェリカさんということですね。


 パステルブルーのワンピースに丈の長い黒い上着にブーツという格好に着替え終えると、ルーシェリカさんは自室を出て、北にある兵舎に向かって進んで行きます。

 兵舎内は担当者でないと入れないようで、玄関のすぐ傍にカウンターがあり、その中で椅子に座って何やら作業中の中年女性が声をかけてきました。


「ここからは関係者以外立ち入り禁止だよ」

「分かっています。あの――」


 多分、ロゼを呼び出してほしい――と、頼むつもりだったのでしょう。

 そんなルーシェリカさんの言葉は、甲高い声に遮られました。


「あぁー。ルーってば、もう来てる!?」


 その言葉と共に、パタパタとロゼが駆け寄ってきます。

 私は、ロゼが全身鎧姿で街に行ったら目立つだろうなと勝手に考えていましたが、彼女の格好は予想とは若干異なっていました。


 確かにロゼは鎧を着ていますが、全身を覆う金属鎧ではなく、肩から腿までの硬そうな革鎧。

 革鎧の下に来ているのは体にピッタリとしたシンプルな露出の少ない服で、日々鍛えられて引き締まったラインが見て取れます。


 うん。

 ロゼの露出って、ほぼ顔だけですね。

 露出がない方が怪我も少ないですから、当然といえば当然なのですけど――ビジュアル的に映えません。


 ルーシェリカさんも、手袋くらい買って身につけた方が良いかもしれないですね。わずかでもダメージ減少するために。

 でも、<青い鳥>で売っていた手袋って何かの付与付きのせいか、高かったんですよ。

 買えなくはなかったのですけどね。賄賂代を考えると、ちょっと……


 ロゼの腰には小物が入っているらしいベルトポーチと、ホルダーにかかった見覚えのある戦鎚メイスが。

 他に武器らしいものは見えません。


 あれ?

 今、一瞬ですけど、ロゼの背中の方に何か見えたような?


「ごめんね、ルー。待った?」

「ううん。今来たところよ。おはよう、ロゼ」

「――おはよー。じゃ、しゅっぱーつ!!」


 ロゼ、朝でもテンションが高いですね。

 私がそう思った時でした。


 ピローン!

 聞き慣れた効果音と共に、天の声ナレーションが響き渡ります。


『ロゼが一時的にパーティメンバーに入ります。

 パーティによる戦闘時、モンスターにトドメを差した方がより多くの経験値を得るので注意が必要です。

 パーティメンバーのステータスは王都の外に出発時、回復アイテムの使用時などに確認可能です』


 私はアレ? と、思いました。

 アレンさんが同行した時は何も言わなかったので。


 もしかして、同行とPTメンバー入りは扱いが違うんでしょうか?

 アレンさんは一人でも大丈夫か見ると言って、戦闘に入っても近くで本当にただ見てるだけでしたしね。


 私が考え込んでいるうちに2人はさっさと王城から出ていたので、まずは『神殿に向かう』を選びます。

 最大HPMPアップでスキルポイントのゲットぉ~。


 次は冒険者ギルドに向かいました。

 まず、進むのは当然ながら『討伐モンスターの掲示板』です。

 もちろん、ランクDかCを探しますよ。

 まだレベルは一桁ですからね。


 カットバニィ討伐自体は技能に恵まれていることもあって、1人でも楽勝だと思ったのですけど、BOSS戦あって死にかけましたし。

 ……やっぱりランクCはまだ早いかもしれません。


 あ、発見。

 何なに。


『急募!

 討伐依頼ランクD

 討伐希望数10体

 それ以上は1体ごとに追加報酬あり

 カットバニィの異常繁殖の影響により、森から街道の方へマンドラコラが集団で移動した形跡があるという情報が入りました。

 流通の混乱が予想されますので、殲滅を目標としています』


 マンドラコラって、あれですね?

 引っこ抜かれると叫んで周囲に多大な被害をもたらすという、ファンタジー要素溢れる植物系モンスター。犬を犠牲にして収穫するのが正しい方法だったような。

 耳栓って、売ってました?


 カットバニィの時より希望数が少ないのは、おそらくマンドラコラの方がレベルが高いからと見ました。

 ロゼも居ますし、多分、大丈夫でしょう。

 べりっと引っぺがします。


 アイテム依頼の方も忘れずにチェックです。

 ジェラールというあても出来ましたし、期限が長いモノを探してみますか。


 『フズシギ草、10枚』、『イエヴの花、5本』、『金色蜜リンゴ、2個』――これくらいです。


 1番早い『フズシギ草』でも期限が3週間先になっています。

 1番期間が長くて報酬が高いのは『金色蜜リンゴ』でした。30万ギラーって、相当珍しいものってことでしょうね。

 手元にあるアイテムは依頼に入っていませんし、取れる場所すら予測がついていないので、今回受けるのは止めておきます。


 『受付に向かう』を選ぶと、ルーシェリカさんは掲示板から離れました。

 ロゼは冒険者ギルドに入ったことがなかったらしく、興味深そうにキョロキョロして――何故か、アレンさんらしき人に話しかけられています。


 うぅ、そっちの方に行きたいですね。

 何話しているのか気になります。


 しかし、すでに選択肢を選んでしまった後。

 私の心に反し、ルーシェリカさんは受付に直進。

 手続きが終わって、椅子に座っているロゼの傍に向かう頃には――アレンさんの姿はありませんでした。


 見かけない顔だから気になったのでしょうか?

 ルーシェリカさんは気にならなかったらしく、ロゼに尋ねなかったので真相は分からないままです。


 次に、<青い鳥>へ買い物に行きました。


 お弁当を2つと、対マンドラコラ用に耳栓を購入します。

 正確に言うなら耳栓ではなく、『イヤーマフ』ですが。

 まんまアレです。冬場に使うような、もこもこした厚手の布製のイヤーマフ。 

 値段は1個100ギラー。

 回復薬(小)より安い。

 効力は音波攻撃50%OFF――ないよりはマシですね。早速装備しました。

 

 ロゼの装備は見れましたが、当然ながらRPGゲームとは違って剥いだり出来ませんでした。

 盾装備になっていたのは驚きましたね。

 何処に持っているんだろうという意味で。よく見ると背中に小型の盾を背負っていたので納得。


 イヤーマフの装備は出来ましたけど、ロゼもルーシェリカさんも首のところで引っ掛けている状態ですよ。

 今は過ごしやすい季節――気温や日差し的に春っぽい――ですし、寒くないからでしょう。


 今回も、手袋(5000ギラー)の購入は見送りました。

 適性距離を保って先制攻撃すれば、ノーダメージで戦闘終了可能ですからね。もう少し溜めてからということで。


 準備が終わったので『王都を出る』を突っつくと、新しく選択肢が出てきました。


  近くの森へ向かう

  ヴィア草原に向かう

  レイニドール街道に向かう


 マンドラコラが移動したのは街道ですから、『レイニドール街道に向かう』で。


「ルー。あたしが守ってあげるから、ちゃんと援護してね?」


 選択肢を突っつくと、ロゼの声と共に彼女のステータスが正面に浮かび上がってきました。


  ロゼッタ・アール・クエレ(17)

  レベル5

  称号 レイニドール王国騎士団見習い

  HP 158/158 MP ――

  状態・健康

  属性・水

  所持金 ???ギラー


  戦闘スキル 戦鎚A

        格闘A(MAX)

        盾B

        先制攻撃C

        範囲攻撃C

        怪力B

        頑強C

  一般スキル 騎士C

  スキルポイント 残り10P


  装備 バトルメイス

     ラウンドシールド

     ヘビーレザーメイル

     鉄板入り軍用ブーツ

     イヤーマフ

  所持品 ベルトポーチ


 おお~。5レベルですか。

 ロゼにMPがないのは、加護持ちじゃないからでしょう。

 それにしても、ロゼはHPが多いですね。

 ルーシェリカさんとレベルは2しか違わないのに、70以上差があるなんて。


 0ギラーではないので財布は持っているようですが、?マーク。財布の中に幾ら入っているのかは秘密ということでしょうか。


 あれ?

 同じ孤児院出身なのに名字が違いますね。

 名前的に、貴族のようですが――疑問に思ったので、称号を突っつきましょう。


『レイニドール王国騎士団に所属している少女。

 主人公と共にシリス孤児院で育ったが、約3年前に人材発掘目的で視察に来たクエレ伯爵に、表向き養女として迎えられる。

 実はクエレ伯爵の娘。お手つきメイドだった母親が妊娠発覚後逃亡したが、ロゼの幼少期に病死。シリス孤児院で育ったものの、その容姿がクエレ伯爵の実母そっくりだったため、庶子と認められてロゼッタと改名。引き取られたという経緯がある』


 なるほど、なるほど。

 だから『騎士』ですか。


 少しおかしいと思ってたんですよね。

 騎士は周囲の目にも明らかな功績があって、国王や王族から叙勲されない限り、普通は貴族階級の家を継げない人間がなるものです。

 いくら才能があるとはいえ、実績のないただの平民にはなれません。なれるとしたら兵士ですね。

 微妙に気になっていたことが解決して、すっきりです。


「ロゼはマンドラコラと戦ったことはあるの?」

「ないよ。動物系モンスターとか、野盗の討伐とかならしたことあるけど。血を吸われるのと叫び声に気をつけた方がいいっていうのなら、先輩達から聞いてる」


 いつ現れるとも分からない街道に出たからでしょう。

 そう言って、ロゼはしっかりとイヤーマフを装着しました。

 ルーシェリカさんも頷いて、装着します。ちょっと暑いですね。

 

 街道を歩き始めて、どれくらい経ったことでしょうか?

 ルーシェリカさんの少し手前を歩いていたロゼが、腰のホルダーから戦鎚メイスを素早く引き抜きました。


「……ルー。東の方にある2本目の木の根元」


 ロゼに言われた方向にルーシェリカさんが目を向けると、ちょっと不自然な植物を発見しました。

 

 こちらから5メートルほど先にある木の根元に、大根の葉っぱのような葉が数メートルに渡って密集してゆらゆらと風に揺れているのですが、その一部にリスと茶色の羽根の小鳥が巻きついています。

 少しの間観察していたのですが、リスも小鳥も硬直しているようで、動き出す素振りがまったくありません。

 

 この世界のマンドラコラって、ロゼいわく吸血モンスターでしたよね?

 アレは怪しいです。


 実物を知りませんし、土の中で動いていない状態では何体居るのかちょっと分からない。

 ……範囲効果のある闇魔法をぶつけてみますか。

 とりあえず、MPに優しいランクD魔法の<奪光>で。


「ロゼ、魔法を使うからいつでも飛び出せるようにしていて」

「りょ~かい!」


 ロゼが走りだせるようにするためでしょう。

 戦鎚メイスと盾を持って、体勢を低くします。


「<――慈悲深き、カーティスに乞い願う――>」

   

 ルーシェリカさんは詠唱を始めました。

 彼女の正面に、カーティス神殿の祈祷所の床にあったものと同じ、魔法陣が浮かび上がります。

 魔法陣は黒に近い紫の光で出来ていて、見た目も綺麗。


「<――我が敵の視界を塞ぐ霧を、此処に!――>」


 詠唱の完成と共に、魔法陣が真っ二つに崩れて――密集している葉っぱ全体を包み込むようにして、真っ黒な霧が発生しました。

 次の瞬間、何と言っているのか形容しがたい何重もの叫び声が響き渡り、びりびりと身体の表面が震えます。


 ビンゴのようです。


 攻撃されたことで、外敵が居ると判断したのでしょう。

 もぞりと土の中から次々と出て来た6体のマンドラコラは、叫び声が上がった瞬間から素晴らしいスタートダッシュを決めたロゼに突進され、その半数が戦鎚メイスの一閃でその場から吹っ飛びました。

 吹っ飛んだ3体のマンドラコラは、そのまま地面に倒れて崩れて消えていきます。


 あれ? 思っていたより弱い? 


 土の外に出たマンドラコラ。

 その見かけは、一言で表現すると巨大四つ股大根でした。

 通常の大根の倍程度の大きさで、まるで子供が描いたような細い目と、豊かな葉っぱ部分を支えられるとは思えない細くて白い手足があります。


 ロゼにばかり任せておくわけにはいかないので、ナイフをじゃんじゃん投げましょう。


 ルーシェリカさんが投げナイフを2本取り出し、素早く連続で同じ標的に投げつけます。

 若干の時間差があって刺さったナイフに、叫び声が上がり、狙い定めた一体が倒れて崩れました。


 こちらの速攻がようやく終了したことにより、行動出来るようになったのでしょう。

 残った2体のマンドラコラは、近くに居るロゼに向けてその葉っぱ部分を鞭のように振るいますが、なんなく盾によって防がれて。


 ルーシェリカさんの投げた連続ナイフ投擲攻撃と、ロゼの振るった戦鎚メイスの一撃に。

 あっけなく倒れ、崩れて消えていきました。


 残ったのは、葉っぱ部分と砕けた白い身、そして細い根っこがいくつか。

 ロゼと一緒にせっせと拾い集めます。


『ルーシェリカ達はマンドラコラ6体との戦闘に勝利した。

 ルーシェリカは経験値を16、ロゼは経験値を28手に入れた。

 マンドラコラの葉を6束手にいれた。

 マンドラコラのカケラを6個手に入れた。

 マンドラコラの根を2個手に入れた』


 ロゼって、マンドラコラを4体倒しましたよね?

 ということは、一体につき経験値は7。

 2体のルーシェリカさんは14のはず――余った2は、魔法で貢献した分でしょうか?


 まあ、くれるというのならあった方がいいです。

 さてさて。叫び声のダメージはどれくらい通ったのでしょうかね。

 早速チェックですよ。

今回はステータスのメイキング方法。

作者がメモを無くしたりしたら困るので載せます。見なくてもお話には影響ありません。


戦闘に関連あるスキル取得にあたりDは5P、Cは15P、Bは30P、Aは50P、Sは80P必要。

HPやMPに影響するスキルの取得に、Dは5P、Cは15P、Bは50P、Aは100P、Sは200P必要。

武器スキルや特殊スキル(連続攻撃、怪力など)は数年間、ほぼ毎日普通に鍛錬した場合、Cまで自動取得可能です。


HPとMPの算出方法。

武器や盾のスキルがある場合、HPにDが+1、Cが+3、Bが+5、Aが+7、Sが+9加算されていきます。

初期HPは、ダイス2個振って足した数+10。

MPには魔法スキルが必要。

Dで+5、Cで+15、Bで+30、Aで+50、Sで+80です。これはHPが上がる特殊技能も同じく。

例・ルーシェリカ

HP=初期+短剣+鞭+格闘=20+16+16+4=56

MP=闇魔法=5+15=20


HPとMPはレベルUPすると、最大値の2割上昇します(少数点以下は四捨五入)

祝福を受けている場合、更にその分レベルUPごと加算。


一般人が最初に与えられるスキルポイントは150P、加護持ちは200Pで属性魔法Cを自動取得します。

初期ステータスは主人公で強い運命の持ち主とはいえ、加護持ちの例から200Pも多かったので、少し改悪変更。

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