6人のすれ違い
病院の帰り道、母と紗織の間には
重い空気が漂っていた。
長い沈黙の中、紗織が口を開いた。
「…部活、やめなくちゃね。みんなに迷惑かけられないもん。」
無理に笑顔を繕う紗織の目には涙が浮かんでいた。
次の日の朝、紗織は岡崎のところへ行った。
手には退部届をしっかりと握りしめて…。
職員室のドアをノックする。
それと同時に職員室のドアが開く。
「三関か。おはよう。今日はずいぶんと早い登校だな。」
ドアを開けたのは岡崎だった。
「おはようございます。岡崎先生。…あのちょっとお話があるんですけど…。」
「…そうか…。わかった。みんなには言わないでおく。治療に専念してくれ。」
岡崎も信じられないといった様子だった。
紗織が渡した退部届には紗織の涙がこぼれていた。
「失礼しました。」
こんなに悔しいことがあるのか。
6人で全国制覇しようと決めたのに。
夢ってこんなに儚いものなのか…。
「紗織、おはよう!今日からウチらが部活の中で最年長だよ!
頑張らなきゃね!」
唯の声が聞こえた。でも、紗織はもう部員じゃない…。
「唯、おはよう。そうだね…。はしゃぎすぎて怪我しないようにしなきゃね。
麻紀が一番あぶないと思うんだけど。」
みんなの前ではまだいえなかった。
すぐにわかることだけど、言えなかった。
みんなを裏切りたくない。
――放課後――
「葵、麻紀、紗織知らない??」
「美菜子たちも見てないの??」
部活が始まるころ、麻紀、美菜子、唯、葵、怜奈は
紗織のことを探していた。
紗織が部活に来ないことなんて絶対ない。
誰もがそう思っていた。
ガラガラガラ…
体育館のドアが開いたとき5人は一斉にドアに目を向けた。
みんなが紗織だと思っていたがドアの前にいたのは、
顧問の岡崎だった。
『岡崎先生、紗織は?』
岡崎は焦った。
部活をやめた…。とも言えない。
だからといって風邪をひいたとも言えない。
「三関は…部活をやめた…」
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『えっ?』
5人の中にはどうしてという言葉しかなかった。
「紗織の裏切り者…。」
麻紀がそう言った。