運命
あれから、紗織は病院に運ばれた。
救急車の中でもはっきりとした意識はなく、
岡崎がしっかり声をかけているのがうっすらとわかった。
意識が戻り、精密検査を受け、
病室を出ると岡崎と母の姿があった。
岡崎は紗織の姿を確認すると、母に頭を下げ
病院を後にした。
「紗織。大丈夫なの?どこか痛いところはない?」
階段から落ちた時、足を打撲したみたいだが、
骨折や脳に異常があったわけではなく、その日はすぐに
家に帰ることができた。
「紗織、紗織はどこだ!」
「…お父さん…。私はここにいるけど…?」
紗織の父は小学校の教師をしていて、
子供の接し方はうまい。
が、非常に涙もろく多少、めんどくさいと
生徒からも、また家族からも思われているだろう。
「お父さん。心配しすぎよ。この紗織が病気なわけがないでしょ。」
母は専業主婦で紗織のことはもちろん、下宿している兄の悠希の
ことも毎日気にかけている。
紗織は自分の家族を誇りに思っていた。
何かが優れてるわけでもないけれど、それでも紗織にとって誇りの家族だった。
――紗織が倒れてから1週間後――
紗織と母は精密検査の結果を聞くため、
病院を訪れていた。
何も異常などあるはずない。
そう思い込んでいだ紗織の前に大きな壁が立ちはだかった。
「…先生、嘘ですよね?」
「紗織さんは脊髄小脳変性症です。」
紗織はその場に崩れ落ちた。
聞いたこともない病名に恐怖と不安が
滝のように押し寄せてきた…。