悪夢の訪れ
――1年後――
「ナイスー」
「どんまーい」
放課後の体育館に部員の声が響きわたる。
紗織たちが入部して1年と2カ月。
3年生の引退試合が迫っていた。
大半の部員は附属の高校でも続けるのだが
中学ではひとまず終了。
地区大会では優勝をおさめた3年生も
管内を勝ち進み、ようやく全国大会まで駒を進めた。
顧問の岡崎の指導にも日々熱が入っていく。
紗織たち2年生をはじめ1年生も
3年生のために練習に励んだ。
「今日は体育館練の前に30分の走りこみ、休むなよー。」
『はい』
「怜奈ぁ。無理だよー。30分も走ったら麻紀倒れる…。」
「怜奈も…。」
「怜奈、麻紀、甘ったれんなよ!3年生引退したら
次は私たちが引っ張って行くの!」
「美菜子、もう始まってるから早く…」
この6人は一番のしっかり者、紗織の一声で行動することが多い。
無論、次の部長は紗織で決定だろう。
15分を過ぎたくらい、紗織は自分の足に異変を感じた。
足が重たく、前へ出すのがやっと。
今まで、こんなことはなかった。
ひねったわけでもないし…。
そう思いながら階段を降りようとすると、
足に激痛がはしった。
――ガタッ。ダッ、ダダダダダダダダ――
「三関、おい三関…」
岡崎の声は次第に紗織の頭の中で薄れていった。
唯や葵、美菜子たちも周りにいる。
でも、声は聞こえなかった。
紗織になにが起きたのか。
それは紗織自身にもわからなかった。
意識が遠のくなかで感じたこと…
紗織の中でただことではない何かが
起きているんだということ。
それは麻紀、美菜子、唯、葵、怜奈5人が
同時に頭の中をよぎっていた。