悪夢の前兆
――シャトルを打つ音、
靴の滑る音、
スマッシュの決まる音――
この音は紗織にとっての青春そのもの。
そして、6年間、みんなと一緒に培ってきたもの。
みんなで最後までやり遂げたかった。
誰もが思う。
何度、こう思っただろう。
神様はこんなにもひどい天罰を与えるのかと…。
―7年前 2004年 4月13日―
「今日から、新入部員6名が入部します。
先輩たちは指導をしっかりと、新入生は一日でも
はやく、技を覚えること。」
私立、桜ケ丘高校、女子バドミントン部の顧問
岡崎英希は全部員19名に呼びかけた。
『はい』
桜ケ丘高校バドミントン部は地区では
優勝の常連だった。
三関紗織をはじめ6人の新入部員は
バドミントン経験者ということもあり
すぐに入部を決めた。
「紗織、やっぱやめたほうが良かったかな…。
麻紀、ついていけないかもしれないよ…。」
「麻紀、何言ってるの!決めたでしょ。
6人で6年間しっかりやり遂げるって!」
「美菜子は相変わらずだよね~。
さからったら怖そうだよね…。」
「唯、そういうこというとまた美菜子が怒るでしょ。」
「葵、あんまりズバズバ言うとさ…ね…。」
「怜奈…」
紗織、麻紀、美菜子、唯、葵、怜奈の6人は
小学校のころから同じクラブチームに所属していて
良き親友で良きライバルであった。
いつも一緒で、誰かがいなくなるなんてこと
考えたことも、想像したこともなかった…。
そう、このときは…。