第五話.よくあるパターン
盗賊団との戦いから一日。街道を進んだ先で、景色が大きく変わった。巨大な森。普通の森ではない。
空に届くほどの巨木が並び、神秘的な光が差し込んでいる。リリアが微笑む。
「見えてきました」
「ここが――」
悠真は森の奥を見る。木々の間に見えるのは、白い建物。
巨大な木と一体化するように作られた都市。
「エルフ王国、エルディアです」
門にはエルフの兵士が並んでいた。
その瞬間。兵士たちの表情が変わる。
「リリア様!?」
「第一王女様だ!」
兵士たちは慌てて跪く。
「ご無事で何よりです!」
リリアは少し照れながら言った。
「この方が助けてくれました」
兵士たちの視線が悠真に向く。
「人間……?」
「ですがかなり強そうだ」
そのまま二人は王城へ案内された。
王城。巨大な木の内部をくり抜いた神殿のような場所だった。玉座には一人の男が座っている。銀色の長髪。
鋭い目。圧倒的な存在感。
エルフ王。
「父上」
リリアが頭を下げる。王は静かに言った。
「リリア、無事でよかった」
そして視線が悠真へ向く。
その瞬間。空気が重くなった。
「お前が娘を助けた人間か」
「神代悠真だ」
悠真は普通に答える。王は立ち上がった。
「ほう」
「面白い目をしている」
そして笑った。
「強いな?」
悠真は肩をすくめる。
「そこそこ」
その瞬間。王の目が光った。
「よし」
「戦おう」
リリアが慌てる。
「父上!?」
「いきなりですか!?」
王は豪快に笑う。
「強い者を見ると戦いたくなる」
「だがその前に」
王は手を叩いた。
すると扉が開く。中に入ってきたのは鎧を着たエルフたち。「王国騎士団だ」
隊長が前に出る。
「王の前で戦う価値があるか、試させてもらう」騎士たちはざっと二十人。全員、明らかに強い。リリアが不安そうに言う。
「悠真さん……」
悠真は槍を肩に担いだ。
「問題ない」
そして騎士団を見る。
「まとめて来い」
騎士団がざわつく。
「人間が随分と強気だ」
「だが後悔するぞ」
隊長が剣を抜いた。
「模擬戦開始!!」
次の瞬間二十人の騎士が一斉に動いた。
悠真は静かに槍を構える。そして小さく言った。
「神域解放」
空気が震える。
騎士団の顔色が変わった。
「この気配……!?」
悠真が一歩踏み出す。
「――星穿」
瞬間。銀の閃光が走った。
悠真の槍が閃く。
ズドドドドド!!
目にも止まらない突き。エルフ騎士たちが次々と吹き飛ばされる。
「速すぎる!」
「見えない!」
騎士たちは必死に防御するが、悠真のスピードには追いつけない。ドンッ!バキッ!次々と倒れていく。
観戦しているエルフたちも驚いていた。
「騎士団が……」
「人間一人に……?」
数分後。訓練場には倒れた騎士たちが並んでいた。
立っているのはたった一人。銀の鎧を着たエルフ。
長い青髪を後ろで結んでいる。騎士団団長。
「……なるほど」
団長は剣を構える。
「確かに強い」
悠真は槍を肩に担いだ。
「お前だけか」
「ええ」
団長は静かに言った。
「エルフ王国騎士団団長」
「アルヴェイン」
「あなたの相手を務めます」
次の瞬間。ドン!!地面が割れる。
団長が一瞬で距離を詰めた。
「速っ」
悠真が槍で受ける。
キィィン!!
剣と槍がぶつかる。凄まじい衝撃。周囲の騎士たちが息を飲む。
「団長が押してる!」
「いや……互角だ!」
アルヴェインが連続で剣を振るう。
ザン!
ザン!
ザン!
悠真はすべて槍で弾く。
「いいな」
悠真は少し笑った。
「やっとまともな相手だ」
その瞬間。玉座の前で見ていた男が震えていた。
エルフ王だ。
「……いい」
王は立ち上がる。
「いいぞ」
目が完全に戦闘狂のそれだった。
「もう我慢できん」
リリアが叫ぶ。
「父上!?」
王は剣を抜いた。巨大な大剣。
「アルヴェイン!」
団長が驚く。
「王!?」
王は豪快に笑う。
「二人でやるぞ!」
観客が騒然とする。
「王まで!?」
「模擬戦じゃないのか!?」
王は悠真を見て言った。
「人間」
「お前、面白い」
そして剣を構える。
「だから特別だ」
「騎士団長と王、二人で相手してやる」
アルヴェインも構える。
「申し訳ありませんが」
「王命です」
悠真は槍をくるりと回した。
そしてニヤッと笑う。
「むしろありがたい」
槍を構える。
ゼノグレイスが微かに光る。
「ちょうど試したかった」
空気が震える。悠真は静かに言った。
「神域解放」
風が巻き起こる。
王が笑う。
「はははは!!」
「最高だ!!」
「来い人間!!」
王と騎士団長が同時に動いた。
そして悠真も踏み込む。
三人の戦いが、今始まった。




