第一話.森であった少女
木々の間から差し込む光が、地面をまだらに照らしている。
「……ここが異世界か」
神代悠真は槍を肩に担ぎながら森の中を歩いていた。
手に持つのは、黒と銀の装飾が施された槍――
神槍ゼノグレイス。
ゲームの中では何度も振るった武器だが、こうして現実で持つと不思議な感覚だった。
「まずは状況確認だな」
そう呟いたその時――
「きゃああああ!!」
遠くから悲鳴が聞こえた。悠真は足を止める。
「……人?」
次の瞬間、迷わず走り出した。枝をかき分け、声のした方向へ向かう。そして森を抜けた先で見たのは――
「グルルル……」
三匹の狼型モンスター。
鋭い牙を剥き、今にも飛びかかろうとしている。
その前に立っていたのは、一人の少女だった。
金色の髪。白いローブ。どう見ても戦い慣れていない。
少女は震えながら後ずさる。
「た、助けて……」
狼が跳んだ。
その瞬間――
「遅い」
銀の閃光が走った。
ズバッ!!
狼の体が真っ二つになる。
「え……?」
少女が目を見開く。悠真は槍を軽く回し、構えた。
「次」
残りの狼が唸り声をあげる。
だが悠真にとっては、ゲームで何百回も倒してきた程度の相手だ。一匹が飛びかかる。悠真は体を少しずらし――
突く。ドンッ!!槍の一撃が胸を貫いた。
最後の一匹は恐怖で逃げ出そうとする。
「逃がすか」
ヒュン――
槍が一直線に突き出される。
ドスッ。
静寂が戻った。
悠真は槍を軽く振って血を払う。
「ふぅ」
そして少女の方を見た。
「大丈夫か?」
少女はまだ呆然としていた。
「あ……えっと……」
しばらくして、慌てて頭を下げる。
「た、助けてくれてありがとうございます!」
「気にしなくていい」
悠真は周囲を見回す。
「それより、なんでこんな森に?」
少女は少し恥ずかしそうに言った。
「薬草を取りに来たんです……でもモンスターが出て……」
なるほど、と悠真は頷く。
「近くに街は?」
「はい!この森を抜けた先にアルディアの街があります」
「じゃあそこまで行けば安全か」
悠真は槍を肩に担ぐ。
そして言った。
「街まで護衛する」
「え?」
「またモンスターが出るかもしれないだろ」
少女の顔がぱっと明るくなる。
「ほ、本当ですか!?」
「ああ」
少女は深く頭を下げた。
「ありがとうございます!私、リリアっていいます!」
悠真は少しだけ笑った。
「神代悠真だ」
そして二人は並んで歩き始めた。
だが悠真はまだ知らなかった。
この出会いがこの世界での冒険の始まりになることを。




