第十七話.一撃
王立学院の訓練場。多くの学生が円を作って見守っていた。中央には二人。剣術科首席アレス。そして王推薦の転入生――悠真。アレスが地面を蹴る。
ドン!!
一瞬で距離を詰める。
「はああ!!」
鋭い斬撃。普通の学生なら反応すらできない速度。
だが悠真は小さく呟いた。
「……時間加速」
世界がゆっくりになる。アレスの動きがはっきり見える。
悠真は一歩横へ動いた。斬撃が空を切る。
「なっ!?」
アレスが驚く。だがすぐに次の攻撃へ移る。
ザン!!
連続斬撃。剣術科首席の実力。周囲の学生が息を飲む。
「速い……!」
「さすが首席……!」
だが悠真は冷静だった。
(悪くない)
(でも――)
槍を軽く構える。
そして言う。
「これで終わり」
時間加速がさらに強くなる。アレスが剣を振り上げる。
その瞬間。悠真が一歩踏み込む。
ドン!!
凄まじい踏み込み。ゼノグレイスが振られる。
ガキィン――!!甲高い音が響いた。一瞬の静寂。
次の瞬間。
パキン……
アレスの剣が真っ二つに折れた。学生たちが凍りつく。
「……え?」
「今……」
「剣が……」
アレスも固まっていた。手には折れた剣。悠真は槍を肩に担ぐ。
「勝負ありだな」
訓練場がざわめく。
「嘘だろ……」
「首席の剣を一撃で……」
リリアが小さく笑う。
「やっぱりです」
アレスはしばらく黙っていた。そしてゆっくり頭を下げた。
「……負けだ」
学生たちが驚く。
「アレス様!?」
アレスは悠真を見る。
その目には悔しさと興味があった。
「あなたは強い」
そして聞く。
「その槍……」
「ただの武器ではないな」
悠真は少し笑う。
「まぁな」
その時。後ろから声がした。
「騒がしいと思ったら」
学生たちが振り向く。
教師だった。
「入学初日から模擬戦とは元気だな」
だが教師の目は悠真を見ていた。
「……面白い」
学院の空気が少し変わる。
誰もが理解した。この転入生はただ者ではない。




